2010年12月31日金曜日

海外での生活「3つのウソ」


(某国にて)

「最近、新卒の人と面接すると、皆、海外にいきたくないっていうんだよね。こういう若い人達を見ていると、日本の先行きが心配になってくるよ。」(友人談)

日本の一時帰国中に、ランチをすると、友人がこのように話していた。

なぜ?海外での生活に大きな誤解がある?

というわけで、今年最後のブログエントリーは、海外での生活「3つのウソ」。

1.海外での生活のウソ1:中国・上海の生活はキビシイ・ツマラナイ?

今年の夏に中国で1ヶ月間インターン。給料は0。1日3000円(!)くらいの生活費の支給。

しかし、ナント、会社から思いのほか、なかなか良い住宅を支給された。



「学生」で「無給」の私にこの部屋。

上海に住む日本人の友人(日系事業会社)によると、これはフツウらしい。

日本では決してムリな生活。

2.海外での生活のウソ2:ポーランド・元社会主義の貧しい国でつまらない?

ドイツに住んでいたとき、ドイツ人の友達に「ポーランドに行くよ」というと、

「なぜ、ドイツ国内で楽しまない?ドイツからポーランドにいくと、貧しい国なので、自動車を盗まれる。だから、ドイツのレンタカーでポーランドに行くことはできない。つまんないよ。ベルリンにいきなよ」

とドイツ人に言われた。

ホントにみるべき場所はない?



(ライオンが屋敷のなかに!)

(次はオオカミ!)

3.海外での生活のウソ3:ヨーロッパの田舎町で仕事するなんて嫌だよ

この夏、ドイツの田舎町でインターンをした。

あまりに田舎で、私などは、「この田舎町に来た日本人は、歴史上、私一人で、自分が村にやってきたことが『黄色い人間がやってきた』という見出しで、村の新聞に載ったのでは?」と思うほどだった。

村には本当に何もない。

しかし、結果的に、最高の経験のひとつになった。

電車代と宿泊費だけで、ヨーロッパ中を土日にまわった。

映画「天使と悪魔」に出てきたシーンをながめ、小説「冷静と情熱の間に」に出てきたシーンをたずねたり、いきたかったオペラ劇場を訪ねたりできた。




一度しかない人生。日本では決して出来ない経験を、海外で、比較的安価に、比較的簡単に出来る世の中になった。色々な経験をすることで視野が広がり、人生が豊かになったと感じており、留学に感謝している。

2010年12月22日水曜日

新たな合格法

前回作成したスタンフォードMBAに合格するための方法を記載した文章(何があなたにとって一番大切ですかを記載するにあたっての考え方)が、今日現在で、概ね受験者の7~8割に行き渡りました。

そこで、もう少し基礎的な内容のリーダーシップのエッセイを書く方法をまとめた文章を作成しました。

この文章は、

1.リーダーシップのエッセイ及びインタビューの考え方(インタビューでリーダーシップに関する問いはほぼ必ず質問されます)
2.エッセイ全般の書き方

を中心に、誰でもわかるように分かりやすく、短く、実践的に、簡単に、まとめたものです。

具体的には、

・リーダーシップを論ずる際に、触れるべきポイント
・エッセイ全般について、どのように書くと、印象に残る面白いエッセイが書けるのか

を掲載したものです。

「何があなたにとって一番大切ですか」を書くための文章、又は、
「リーダーシップのエッセイの書き方」を掲載した文章

が欲しい方は、

stanfordmba.guide@gmail.com

までメールをお願い致します。

2010年10月16日土曜日

ヴィノド・コスラへのピッチ

「そうだ、YI。今日ヴィノド・コスラと話したけど、君のビジネスに興味があるそうだよ。一緒にピッチをするぞ」

マーク・レスリーと昼食を食べていたところ、突然、驚くことを言い出した。

「ありがとうございます」
と言って何でもない不利をして笑ったが、心中は穏やかではなかった。

「まだ用意出来てないですよ」
という気持ちと、興奮の気持ちだった。

ヴィノド・コスラは、このブログでも以前紹介したとおり、ジョン・ドアーと並んで、シリコンバレーで最強のベンチャーキャピタリスト。グーグルやジュニパーネットワークスをはじめ、大成功した案件には、大抵彼が絡んでいる。個人資産は、1500億円を超える。

ヴェリタスソフトウェアのファウンダーで、GSBの教授のマークレスリーから、「今学期中にヴィノド・コスラとレイレーン(オラクル元CEOで現在はHPのボード)にピッチをさせてあげる」と言われていたのだが、余りにも唐突だった。

すぐに、チームメートに電話して、「今日徹夜で付き合ってくれ」と頼み、夜通しでビジネスプランをリバイズした。

徹夜明けで、朝ミーティングを2つこなして、昼に、コスラがバックしている会社Gevo(すべてのプラスチックをバイオプラスチックにすることを目指す会社)のCEOと昼食をした。

彼は、「コスラは、似ている技術で、ラボにある技術と君の技術のどこが違うかを聞いてくると思うよ。」と教えてくれた。彼は、カーギルなど業界で20年の経験があってから起業し、他方、私には、全く業界の経験がない。「大丈夫かな」と不安になった。ピッチの日まで一週間ぐらいだろうか。がんばらなくては。

2010年10月14日木曜日

ベンチャーキャピタルでのインターン

ドイツでのインターンが終わり、クライナーパーキンスのヤン(以前のブログを参照)と話したところ、「約束通り、結果を出したから好きなものをあげよう」と言われた。

「パートナーのポジションか、自分のスタートアップへの投資か、ポートフォリオでのポジションを下さい」とズケズケとお願いしたところ、「それでこそ起業家だ」と笑われた。

こちらから正式に依頼をしたあと、ファームで正式に検討するそうだ。彼は、推薦で、ドアを開けてくれる役目なのだろう。

「どれを貰おう」、と悩んでいるところに、シリコンバレーのナノテクにフォーカスしたベンチャーキャピタルから、

「学期中に、ちょっと働いてみない」

と声がかかった。

学生とスタートアップのCEOの両方をしながら、さらにVCでインターンをすることは時間の面で厳しい。しかし、自分がベンチャーキャピタルに向いているか見るチャンスなので、引き受けることにした。

私のインターン先のVCは、技術の評価に徹底的にフォーカスしたファーム。上司の一人は、70歳の技術者出身者。もう一人は、アントレ出身者。彼は、会社を2つ売って、1つIPOし、アプライドマテリアルのコーポレートベンチャーを立ち上げた経歴の持ち主。

今日は、その彼とロサンジェルスの太陽電池カンファレンスに日帰り出張。

巨大なビル二つにぎっしりつまった企業を回っていく。

3分の1くらいが、中国企業。中には、「英語は喋れない。」と中国語で話しかけてくる企業もあった。

「御社の強みは?」と聞くと、少し考えてから「特にありません」と返事が返ってくる。「世界を変える」というような技術にも、とりたててユニークな技術にも出会えなかったのが印象的だった。ヨーロッパで、フィードインタリフ制度のサポートがあるので、一時期、中国の太陽電池生産量は、毎年160%の上昇を経験した(ちなみに、ビジネススクールでは、毎年10%の市場シェア上昇と聞くと、「少し魅力的かも」という話になるので、その16倍)。アメリカでは、平均して40%くらいの上昇だろう。需要は政府の政策ゆえ。ユニークな技術や強みがなければ、政府のサポートが弱まった後、多くの企業が潰れるのではないか。

今をときめくHareon SolarとLDKのCEOとも話せた。やはりどんどん生産量を拡大するそうだ。

太陽電池のコストは、生産量が2倍になると大体80%になると言われている(サンパワーの創業者のスタンフォード大、スワンソン教授の予言が今までは当たっている)。平均40%の生産量拡大が続くとすると、コスト面で、石炭に勝つのは6年後だろう。「世界を変える」ユニークな技術があらわれなければ、政府の後押しがそれまで続くかどうかという点が焦点になりそうだ。

私自身は、スタンフォードのPHDの学生達と、フォトンのエネルギーを最適化することを検討しはじめた。太陽電池の効率が20%弱にとどまっている理由のひとつは、バンドギャップに満たないフォトンは電子を加速できず、バンドギャップを超えるフォトンのエネルギーが、超えた部分について無駄になることによる。この課題を解決するひとつの方法は、マルティジャンクションとよばれる手法だが、「そうではなく、フォトンのエネルギーの方を最適化した方が、コストも安く、生産ラインも修正しなくて良いのでは」と話したところ、何人かのPHDの学生が興味を持ってくれた。友達のベルラボの科学者からは、「物理の基本だね。良い物質があるかだけど、聞いたことないね」と言われた。

2010年9月22日水曜日

中国の電気自動車

「昔、日本に行って、戻ってきたインテルの部下が言った言葉を忘れない。

『何かが違う』

と」(インテル元CEO、アンディグローブ)


上海空港に降り立った瞬間、むっとした臭気が、あがってきた。
「この臭いは酷いな。1ヶ月が限界だ。」

上海のプライベートエクイティでの1ヶ月のインターン。
電気自動車のビジネスのビジネスディベロップメントが、主な担当だ。

仕事をしてみて、
「何かが違う。」
と感じた。

中国が、クリーン革命に勝って、覇権を取るかもしれないと感じた。

ドイツの10週間のインターンのときには、全くこれを感じなかった。

なぜ、中国では、これを感じたのか。

以下の理由だ。

スタンフォードビジネススクールのミッションは、「10年後、20年後、あるいは数十年後に、世界を変えるリーダーを育てること」だ。

学校では、そのメソッドを徹底的に教え込まれる。といっても、驚く程、シンプルだ。

例えば、以下の点に着目しなさいというようなことを教わる。


  • 10倍の技術
  • 法制度の大きな変化
  • ディストリビューションのイノベーション(デルやアマゾンが例)
このことを、アンディ・グローブは、ストラテジック・インフレクションポイントと呼んだことは、このブログや、日経BPのウェブサイトで、ご紹介したとおりだ。

さて、クリーンテックの実現には、以下が必要だといわれている。


  • 法制度のサポート
  • 従来技術より安いコスト
  • 投資(アップフロントが高いから)
中国では、これらの点に、ストラテジックインフレクションポイントが到来していると感じた(3点目の投資を除く)。

例えば、中国の電気自動車チェリーを例にとって考えてみる。チェリーの電気自動車は、走行距離や最高速度という点では、世界レベルの電気自動車に引けをとらないと思う。

・法制度という意味では、補助金が電気自動車一台について、最大で150万円程度出る。
・コストという意味では、ローコストの国の中国の電気自動車チェリーは、補助金前で、約160万円。補助金によって、10万円まで価格が下がりうる。繰り返しになるが、チェリーの電気自動車の性能は決して低くないようにみえる。300万円・400万円の電気自動車を買えない消費者も、今までの車よりも良い性能(元値が160万)で、10万円の電気自動車なら買うのではないだろうか。
・投資という意味では、政府が無料で工場を出したりする。

さて、ストラテジック・インフレクションと一口にいっても、何通りかある。例えば、自分が作り出す場合と、他人が作り出す場合と、自分と他人の相互作用が作り出す場合がある。 それぞれの場合に適用した仕組みがないと、覇者になるどころか、敗者となるという。

中国のクリーンテックの場合、自分と他人との相互作用により、ストラテジックインフレクションが起きている(第三のケース)。他のプレーヤー・状況が物凄い速度で動くので、先が読めない。

このようなケースでは、中央が全て決めるのではなく、下層機関に、状況に応じて、なるべく柔軟に対応してもらうのが良しとされる。下層機関のほうが、情報が早く届くからだ。

中国には、そのような仕組みがあるのだ。一見中央集権にみえるが、中央集権が方向を決めた後、カネの配分の権限の大部分は、地方政府に権限がある。

地方政府の市長を説得すると、それだけで、かなりの便益がもらえたりする、というのが私の印象だ。 補助金、無料の工場、税金優遇、などなど。

インターン先の企業は、中国政府から列車の運営の権益を獲得した実績があるなど、中国政府との仕事の仕方を良く知っていた。民間の立場から、中国政府にどのように働きかけ、どのように(賄賂なしで)サポートを実現するのかということを学べ、とても有意義だった。


さて、アンディグローブが、日本に来たとき、日本人がとても礼儀正しくて驚いたというようなことを言っている。

私は、中国で、アンディグローブの日本への印象と同じ印象を持った。

今の中国人(私が会った人達)は、とても礼儀正しいと思う。

例えば、私の個人のパソコンが壊れたときには、同僚が、黙って自分のパソコンを私に使うように薦めた。私が承諾するまで、あとにひかなかった。そして、彼女は、他の同僚と、パソコンを共有して使っていた。

それだけでなく、例えば、電車で、高齢者の方や赤ん坊を抱えている女性がいると、中国人の誰かが、ほぼ確実に、席を譲る。

これは、日本では、見られることが久しくなった風景と考えるのは、私だけではないと思う。

2010年7月9日金曜日

Stanford MBA:新しいアイディア

ジェルとは違うビジネスのアイディアを思いついた。(ジェルのビジネスについては、こちらをご参照ください)

スタンフォードMBAにきて、最初に訪れた変化は、頭に常に新しいビジネスアイディアが浮かぶこと。日本にいて、エッセイを書いているときに、「新しいビジネスのアイディアをエッセイに書きたい」と思ったが、何も思いつかなかった。

そこで、当時、色々リサーチしたところ、Stanford iTunesで「どうやって新しいビジネスのアイディアを思いついたんですか」と聞かれた起業家が、「友達とビールを毎日飲んでいるうちに」と応えていたのをみつけた。このときには、何を言っているのか、全く理解できなかったが、留学して、意味がわかるようになった。シリコンバレーでは、人と話しをする度に、なぜか、どんどん新しいビジネスのアイディアが、浮かび、発展していくのだ。これはビールを飲んでいても、お寿司を食べていても同じ。

今回思いついたアイディアは、今までビールを飲んで、お寿司を食べて、友達と(ふざけて)話してきた内容を集大成したものになりそうだ。

以下の人が必要になりそうだ。

①ネットで大量の情報を通信することに長けたプログラマー
②セレブリティーに精通している人(セレブリティーな人と上手く話せる、など)

②について、考えていたのだが、クラスメートのポール・デネブに御願いしてみよう。ポールは、エルメスやシャネルと並ぶ、ファッション業界の星、ランバン(LANVIN)の元CEOだ。彼が、スタンフォードビジネススクールに留学するためにランバンを辞めたときには、こちらの記事にあるとおり、ニュースになった。また、こちらにあるように、結構、ニュースに出ている。


(写真左がポール。真ん中は、親友の世界有数のデザイナーで、数100億円の株式を持つと言われて
いる。)

ニュースにも出ており、ファッションショーで、数々の有名人に会っている彼なら、全く問題なさそうだ。

ビジネススクールでも、一緒に、ヘルスケア業界に関するビジネスプランを書いた。そのビジネスは、現在、別のクラスメートが起業の準備をしている。当時は、ポールが誰かも良く知らなかったので、パソコンを打つのが遅い彼が、(私に代わりにパソコンを打たせたいこともあり)「Y.I.、ミーティングの回数が足りない。もっと会おうよ」と言ってきても、「別々に仕事をして最後に会おうよ」と断ったりしていた。最後は仲良くなって、彼の自宅で、お互いにキャリアについて話したり、アマルフィの話をしたり、ファッションショーに来るセレブリティーがどんな人か、といった話をした。

ポールには、ファッション業界のプライベートエクイティや企業から、いくつも「CEOになって欲しい」という話が来ており、また、自分で、最強のデザイナーと組んで起業したいという希望もあるようだ。これだけの人をフルタイムで、ファッション以外の会社に入ってもらうのは厳しい。コミットメントの多いアドバイザーということで頼んでみよう。あとは、引き受けてくれることを願うばかり。アイディアの詳細は、実際にビジネスが具体化するか、または、やらないと決めたら、ブログで御紹介したいと思う。

2010年7月6日火曜日

チェコ、ドボルザークホールでの演奏

はじめてのチェコ。とても暑かった。

チェコフィルハーモニー交響楽団のホームページから、マーラー交響曲第1番のチケットを購入。5列目でかなり良い席だ。

「チェコフィルが生で聴ける!」と喜んだ。

ところが、様子がおかしい。出演者が若すぎる。。。

「本当にチェコフィルなのかな?!」
チケットをよく見ると、Schleswig Holstein Festival Orchestraと書いてある。私は、(チェコフィルハーモニーのホームページで購入したので)Schleswig Holstein Festival Orchestraとは、チェコフィルハーモニーが夏の音楽祭に、精鋭で弾くのだと、よく調べもせずに勝手に思い込んでいたのだが、どうやら、違ったようだ。



どうやらこのオーケストラは、バーンスタインが、「世界各国から最高の若者だけを集めたオーケストラをつくろう」というビジョンのもとに設立した26歳以下限定のオーケストラらしい。

世界各地でオーディションを受けた若者達による演奏。演奏者の顔を見ても、ヨーロッパの人だけではなく、アジアの人や黒人の方の顔も見えた。「そういえば、自分もMBAのエッセイに、『子供だけを世界各地から集めて、オーケストラを作りたい。世界が一つで、皆が、国は違っても、舞台のうえで、心を一つに共有できることを示したい』と書いたな」と思う。

このオーケストラ、人気があるようだ。まず、お客さんの顔を見てみると、セレブリティーな人がおおい。皆ちゃんとした立派なスーツを着ているし、年配の人が多い。いかにもプロの演奏会を聴き慣れているという雰囲気。

そして、ドボルザークホールは満席になった。

実際に演奏を聴いて、感動した。

演奏後は、「ブラボー」という声が何度も何度も会場にこだまし、観客が立ち上がって拍手していた。

演奏者は、(金銭、社会・組織のしがらみ、仕事という拘束がないことも、もしかしたらあるのか)「最高の音楽をつくりたい」という一心で演奏しているのが伝わってきた。一人一人が本当に真剣な表情だった。

指揮者は、熟年のプロのクリストフ・エッシェンバッハだ。


(注:同じ指揮者による別のオーケストラによる同じ曲の演奏)

「これでもか」という程分かりやすい指揮。そして、良い席だったので、指揮者の表情まで見えた。

面白かったのは、指揮が、「こういう風に弾け」という感じではなく、「こういう風に弾いて良いんだよ」と見えたこと。リハーサルのときに、弾き方は大体合意してあるはず。しかし、それでも、「本当にそのように弾いてよいのか」、少しは躊躇してしまうのが、人間だと思う。指揮の振り方で、「こういう風に弾いて良いんだよ」と事前に合図をもらうと、オーケストラが思い切って、(楽譜と指揮とアンサンブルという制限の中で)自由に音を出せるような気がした。指揮者の棒とオーケストラの全員の気持ちが一つになって、指揮者の解釈するマーラー(私には愛や人生を表現しているように見え、聴こえた)を表現しているのが見えて感動した。

「チェコフィルハーモニーの音楽を聴くよりも良かったな。」
マーラーの交響曲一番が頭になり続けた。

東京地検特捜部

東京地検特捜部の部長に、司法修習生のときにお世話になった検事が就任されました。人望の厚い、素晴らしい方で、「取調べのときには、被疑者を感動させなければならない」「被疑者の人生の重荷と自分の人生の重荷を感じながら取調べをしなければならない」という趣旨をベースにして、取調べの仕方について、色々とアドバイスをして下さり、とても勉強になったのをよく覚えています。とても懐かしいです。

http://www.youtube.com/watch?v=twpxcu8pAYI&feature=newsweather

MBA合格ハンドブック:3日間で47人希望

3日くらい前に、2回前の投稿で、「何があなたにとって一番大事ですか」というエッセイを書くための短い文章を欲しい人を募集しました。
まだ3日くらいしか経っていないのにかかわらず、今のところ、47人の希望者の方から「文章希望」との御趣旨のメールを頂きました(すみません、ちょっと忙しいので、まだ返信できません。時間が出来ましたら、まとめて返信致します)。
こういうときに、なかなかメールを送れない方も、いらっしゃると思います。
このような方が、不利にならないように、一応、現在の希望者数についてのデータを掲載致しました。

Stanford MBAの上記のエッセイの書き方のガイドとなる文章が欲しい方は、宛先は以下になります:
Stanfordmba.guide(アット)gmail.com

2010年7月3日土曜日

スタンフォードMBA:ヨーロッパでクライナーパーキンスと働く

ドイツの巨大企業シーメンス。

その元チーフオペレーティングオフィサー(最高執行責任者)のヤン・フォン・ドックムから電話がかかってきた。

「君のレジュメとプロジェクトを見たのだが、夏をドイツで過ごさないか。」

と誘われた。ヤンは、クライナーパーキンスのオペレーティングパートナー。彼がボードに座っているポートフォリオの会社がドイツにあるのだ。

クライナーパーキンスは、このブログでも紹介したように、世界有数のベンチャーキャピタル。日本人に有名なパートナーとしては、アルゴア、パウエル元長官、オラクル元CEOなどが並ぶ。

ヤンから、「ドイツで結果を出したら、君にクライナーパーキンスに入って欲しい。」と言われた。

シリコンバレーのベンチャーキャピタルにも色々ある。アソシエイトやプリンシプルがいる組織であれば、ビジネススクールを出たての学生でも入れる。しかし、クライナーは、フラットな組織で全員が対等。会社をIPOしたこともない私の経歴で、クライナーの本体に入れる可能性は、限りなく0%に近い。

しかし、ある日のこと、夢にドイツの森の風景が出てきた。それで真剣に検討をはじめた。そのことを、ファイナンス系の友達に言うと「それ、人にいわない方が良いよ。そういうことでDecision Makingする人だと思われるから」と言われた。

アインシュタインは、「直感は、神が人間に与えた才能だ」というようなことを言ったと記憶している。また、このブログで紹介したVinod Khoslaをはじめ、ベンチャーキャピタルによっては、「直感で投資の有無を決定する。だから、ビジネスプランを読むよりは、起業家と夕食を一緒にすることで投資を決定する」と豪語するベンチャーキャピタルもいる。とはいえ、スタンフォードビジネススクールの教科書で、ベンチャーキャピタリストにも使われている
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳)
にそって、一応分析してみよう。そう、ベンチャーが成功するかは、以下の3つの要素にかかるといわれている。

①マネジメント (CEOとして成功した経験がある人か、リーダーシップがあるか、などなど)
②技術 (良く言われるのが既存の技術の10倍の性能があるか、すぐに実現するか、などなど)
③マーケット (良く言われるのが1000億円のマーケットがあり、技術がNice to haveでなく、Must Haveかどうか。お客さんが早く動くか、などなど)

①は、インタビューを受けて、「良い人だな」と感じた。それ以上は、ドイツとカリフォルニアという地理の差があり、会えないので、分からなかった。②は、ホームページに20倍の技術と書いてあった。③は、再生エネルギーをベースにしたガスのマーケットで、ドイツはフィードインタリフ制度があるので、マーケットは、優に1000億円を超えているはず。

そして、「ヨーロッパで、しかも、クライナーのポートフォリオで働いてみることが出来る!」というユニークな経験に魅かれ、夏をドイツで過ごすことに決めた。



というわけで、今は、ドイツの小さな町にいる。

毎日学びがある。
例えば、ある日のこと。とても変な車にのっている人が会社に来たので、「変わった人だな」と思いながら、一緒に昼ご飯を食べて、今まで過ごした国の食べ物の話などをして談笑していたところ、後から
「彼はGEのCTOだったんだよ。今はうちの会社のCTOだよ」
と言われてショックを受けた。
GEは、私の今いる会社の業界で、リーダー。
学校で耳に蛸が出来るほど聞いた「スタートアップは物凄い人材をマネジメントに入れることで成功する」という話を思い出し、感銘を受けた。

日常生活面では、ヨーロッパのほかの地域へのアクセスが素晴らしい。

今から2時間後から、チェコのプラハに小旅行。チェコは、ドイツやウィーンに近く、ユニークな文化を持っているために、ドボルザーク、スメタナ、ヤナーチェクといった素晴らしい作曲家が生まれた。今は、以下の演奏を聴きながら楽しみにしている。


「そうだStanford MBAに留学しよう」--どうしたら「何が人生で一番大切なのか」が分かるのか

Stanford MBAに留学することを検討している皆様。





エッセイを書き始めると、「う~ん、難しいぞ」と感じてしまうと思います。

特に難しいのが、このブログで何度か御紹介した「何があなたにとって一番大事ですか」というエッセイ。

このエッセイが書けないと、合格は難しいと言われています。

ところが、このエッセイについて、ちゃんと指導をしてくれる予備校は少ないのです。

  • 良いコンサル:アプリカントが考えていることを、うまく聞き出す。
  • 悪いコンサル:アプリカントのエッセイの英語を直す、

つまり、アプリカント自身が、「人生で一番大切なことは何か」をわかっていないと、良いコンサルであっても、指導は出来ないのです。

市販の受験マニュアルに至っては、このエッセイに少しでも役に立つ情報を解説している文献は存在しないという状況。

そこで、日本人の合格者を増やすために、このエッセイの書き方を解説した短い文章を、作成しました。

欲しい方は、以下までメールを下さいませ。

Stanfordmba.guide(アットマーク)gmail.com
(このメールアドレスは、1ヶ月に一度くらいしか見ない予定ですので、希望者の方はお早めに。また、このメールアドレス宛に合格法やキャンパスビジット希望の質問等を頂いても返信できません)

なお、合格者の殆どの方が著者のブログを読ん でいるという今日この頃。このガイドを見ないと合格は厳しい、というくらいのインパクトはあるのではないかと考えて います。

具体的には、以下を解説しています。
  • 実際の良い例を見て、「なぜそれが良いのか。どこを真似るべきなのか」を解説します。
  • 30分間のサーベイに回答するだけで、「何が人生で一番大切なのか」が分かります。(なお、著名な心理学の手法を用いているため、その結論は、合格の土俵にあがるのに十分な具体性があり、かつ、殆どのすべての方にとって正確なものです)
  • それを深めて、どのように良いエッセイにするのか、具体的な考え方を解説します。(どういう図を描くと考えやすいのか、どういう種類の経験を振り返るべきなのか、それに関してどのような分析を、どのように考えてしたら良いのかということを、具体的に解説します)
あまり流通するのも好ましくないと思われますので、希望者の方は、以下の宛先までメールを下さいませ。

Stanfordmba.guide(アットマーク)gmail.com

2010年6月3日木曜日

Stanford GSB:ウェブサイトのデザインの仕方

Stanford GSBで、ウェブサイトのデザインの仕方について、最近シリコンバレーで著名なスタートアップのエグゼクティブが講演しました。こちらから見れます。

10 Things CEOs Need to Know About Web Site Design - Jason Putorti - Stanford Business School from david rogier on Vimeo.



スライドはこちら

2010年6月2日水曜日

Stanford Design Schoolの授業

Stanford Design Schoolで、Lauch Padという人気の授業があります。

デザインを手がけて、プロダクトをローンチするところまで持っていくという授業。セコイアキャピタルやクライナーパーキンスをはじめとした一流のVCとのネットワーキングの機会も与えられ、投資を受ける学生もいます。

鹿島君、近藤君、清川君というStanfordの日本人の友人の3人もこの授業をとり、以下のビデオで紹介されているプロダクトを作成したようです。是非、御覧下さい。私も来年授業を取ろうかな。。。

Findshareのご紹介 from Findshare on Vimeo.

2010年5月29日土曜日

Stanford Business Plan Competition: 2位

本日、Stanford大学のBusiness Plan Competitionの決勝戦(5チームが戦う)がありました。ヒューレットパッカードのパッカードファウンデーションの元CEOをはじめとした審査員達の前でのプレゼン。気が引き締まります。


(30分のプレゼンを終えた後に、レセプションで1分間ピッチをしているところ。憔悴し切ってます。)

結果は、2位となりました。
ちなみに賞金500万円の内訳は:
1位 250万円
2位 160万円
3位から5位 各30万円
6位から80位 0円



プレゼン後に、色々な方から「凄く良かった」と言ってもらえ、髭剃りなど消費者向けの電子機器で有名なフィリップスからは、「投資を是非検討したいので、後でコンタクトしてくれ。投資を受けたくないという場合でも、人の紹介などで協力してあげるからコンタクトして」と名刺を渡されました。


(フィリップスから投資を是非検討したいと言われる。投資を受ける場合、今年Round1で1億。今年中に更に第2ラウンドで数億円の投資。しかし、Exitが3年後のM&Aになり、サイズも数十億円程度になるとのことなので、あまり自由にはやれないこととなる。)

プレゼンを終えた後、客席から拍手の他にブラボーの声があり、審査員(の一部)、観客、チームメンバーも「絶対勝ったね」と言ってくれたのですが、2位になったのは、どうやらその後にもっと上手くプレゼンをした人がいたようです。


(フィリップスの人達。その2。フィリップスはビジネスプランコンペティションのスポンサーのうちの一社。ほかにはセコイアキャピタルなどがスポンサーだが、当日彼らは来ていなかった。)

発音が日本人の私。プレゼン教育を受けてきたアメリカ人と違い、プレゼン自体をそもそもしたことが殆どないという有様。少し前はBusiness Plan Competitionでプレゼンしよう等と考えたことさえありませんでした。自分の強みだとは思わなかったのです。

しかし、結果は、2位。Stanfordには、ドアを叩き、自分を変えようとする人に対して、チャンスを与える力があります。特別な場所にいて、その恩恵を受けていることに、本当に感謝しています。実は、今回は、Stanfordのお陰で、以下の素晴らしい方々から、プレゼンの指導を受けていました。

・レイモンド(グーグル、アップル等のコーチ。エリックシュミットのコミュニケーションコーチでもある。)
・ジェリーワイスマン(マイクロソフトやシスコのコミュニケーションコーチ。まともにコーチをうけると数十万円するらしい。The Power Presenter: Technique, Style, and Strategy from America's Top Speaking Coachという本が有名。MBAに留学する前に読むとよいと思う)
・シュラム教授(Stanford MBAのコミュニケーションの教授)

彼らから「こうした方が良いよ」と言われた場所を、そのようにプレゼンすると、観客から必ず笑いが返ってきます。

彼らからどんなことを学んだのか、一番大きなポイント2つにしぼってご紹介したいと思います。

<プレゼンにはストーリーが必要>
プレゼンの出だしはストリー、統計、引用等で始める。
プレゼンの最中にもストーリーが必要。
例えば、以下のプレゼンは、肥満の方のストーリーをプレゼンの最中にうまく入れている(「彼女には後6年の命しかない」等とプレゼンしている箇所です)。


なお、普通はプレゼンターは、ストーリーを語るのにいくつかセンテンスが必要。しかし、オバマ大統領のプレゼンの域になると「hope is something...a skinny kid with a funny name who believes that America has a place to him」とセンテンスに満たないフレーズでストーリーを完結させることが出来る。

<エネルギーのレベルをコントロール>
よくプレゼンの教科書に書いてあるのは、「声の大きさを変化させましょう」「大きな声でプレゼンしましょう」ということ。しかし、レイモンドは、そういう教え方はしませんでした。

「プレゼンの最初はローキーではじめるんだ。一番後ろの観客が良く聞こえる範囲でね。君のプレゼンの場合、クライマックスは、君のプロダクトをポケットから出す瞬間だ。そこにドラマがなくてはダメだ。最初からそこに向けて、自分のエネルギーを上げていくんだ。」

なるほど。確かに、以下のスピーチを見ると、プロダクトを出す瞬間に向けて、ドラマを作って盛り上げていっています。
以下のプレゼンでは、終わりに向けてドンドン盛り上げていっています(最初から大声で怒鳴っていたら上手くなかったでしょうが、盛り上がって大きな声になるのは自然)。


以下のプレゼンでも、確かに盛り上がりがあります。一つ前のビデオと違い、短い時間でも小さな盛り上がりを作れる点が参考になります。


盛り上がりの作り方のパターンを上記のビデオで研究してみると、どうやら、
・声を大きくしている
・フレーズとフレーズの間のPauseを短くしていっている
・普段短いフレーズの文で話をしておいて、盛り上がりでは、フレーズにフレーズを重ねていくようなスピーチの仕方をしている

<その他> もっと学びたいという方は、是非、The Power Presenter: Technique, Style, and Strategy from America's Top Speaking Coachを。素晴らしい本です。

2010年5月3日月曜日

Stanford Business Plan Competitionで決勝に進出

Stanford大学で毎年行われるビジネスプランコンペティションに参加しています。
http://bases.stanford.edu/

一応CEOとして5人のメンバーを率いて申し込みをし、ほかの75チームを破って、決勝に進出しました。
ほかの5人のメンバーは、ジョンズホプキンス大学教授(70歳!)、スタンフォードのバイオ系のPHDの学生、Stanford MBAの1年生、ベルラボ出身の科学者、水の分野のアントレプレナー(50歳)。
多彩なバックグラウンドのチームを、一つの方向に向かわせて、リードするチャレンジを日々経験しています。

決勝進出の5チームは、公開講堂でプレゼンを行います。
ビジネスプランとプレゼンの良さに応じて賞金が配当され、また、優勝すると著名なメディアでスタートアップが紹介されることが多いようです。
今までの優勝チームは、殆どいずれも実社会で成功しているので、励みになります。

2010年4月4日日曜日

Stanford GSBのクラスメートのアニメーション

クラスメートのDanが、ディズニーに以下のアニメーションを納入したようです。

2010年3月1日月曜日

日経BPなどに載りました。

少し前ですが、日経BPのウェブに記事が載りました。

また、ニューヨークタイムズに、ファウンデーションキャピタルを皆で訪問した際の写真が、こちらに載りました(ホントに小さいですが、写真真ん中奥で握手をしている人)。

2010年2月28日日曜日

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストに対するプレゼンテーション

水がなくて、農家に捨てられた土地。


(写真の出典:http://www.vfej.vn/public/Images/content_img/0china.jpg

水がなくて捨てられた農地を、バイオ燃料畑・穀物畑に戻せないでしょうか。

最近、シリコンバレーで、自分の体積の500倍の体積の水を吸収する物質が発明されました。
この技術を利用すれば、乾燥地を穀物畑に変えられるのではないでしょうか。

最近は、アイディアをベンチャーキャピタリストやCEOに話してフィードバックをもらっています。
昨日は、Khosla Venturesをはじめとして16人のベンチャーキャピタリストが会ってくれ、プレゼンテーションをしました。

しかし、こういうとき、日本人は、発音の差・プレゼンを重視しない教育の差があり、苦労します。

そこで、スタンフォードMBAで、プレゼンの方法の授業をとりはじめました。
面白かったのは、Nancy Duarte氏のプレゼンメソッド。
彼女は、アルゴアの映画、Inconvenient Truthのスライドを作成しています。

そのNancy Duarte氏による上手なプレゼンテーションをするためのレクチャーが、以下から見れます:



ソースは、こちらです:
http://blog.duarte.com/page/3/

2010年1月24日日曜日

なぜStanford MBAなのか

「おい、また新しい技術があるぞ。」

また友達から電話がかかってきた。数々のノーベル賞受賞者を生んできたベルラボ。その科学者だった友達(45歳)からの電話だ。

前に電話がかかってきたときは、「太陽電池にくっつけると、太陽電池の効率が1.5倍になり、kWh当たりコストが2分の1になる技術」の紹介だった。「太陽電池業界のインテルになれるか」というビジョンが頭に浮かんだ。そのプロジェクトは今でも遂行中だ。

今度は何の技術なのか。

友達「水をためるパウダーだ。水の中にパウダーを入れると固まってジェル状になる。」
私「砂漠でも出来るの?」
友達「水を含ませたパウダーを砂漠にまぜておけば、植物はずっと生きている」
私「コストは?」
友達「ほとんど0だ。」

今度は、前よりももっと面白い話だ。
すべての砂漠をバイオ燃料の畑にできるのか。
そんなビジョンが、うっすらと頭に浮かんできた。



砂漠は、地価が安い。砂漠は、Cashを生みにくいから、DCFで評価すれば当然地価は安くなる。
砂漠をバイオ燃料畑にできれば、大量のCashを生むようになり、価値があがる。
実現するために必要なコストが、それに見合うかどうか、数字をはじく必要がある。
数字があえば、砂漠を緑に変えられるかもしれない。



しかし、数字をはじく前に人にあって話しをしてみよう。

すぐに動き始めた。

シエラ・ベンチャーズの創業者のピーター・ウェンデル氏、エリック・シュミットのアドバイザーのレイモンド氏、Khosla Ventures、Kleiner Perkinsのパートナーといった面々とランチをしたり、電話で話してみた。

このブログで「悪魔のベンチャーキャピタリスト」として紹介したKhosla Ventures。
「数字をはじいてみて、うまくいきそうだったら、1頁の紙でいいから送ってくれ。投資するか検討したい。ビジネスプランはいらないよ。」
という返事だった。

さらに周りを普段歩いている色々な人とランチをしてみた。
そのうちの一人が、たまたまバイオ燃料業界で世界最大の企業のCFOだった。
彼は、「とても面白い」とプロジェクトチームに入ってくれた。
その彼が、Marketingで最強の人材も連れてきた。

今日は、自分のメンターに連絡してみよう。
Stanford GSBでは、全員にメンターがつく。私の場合は、joint degreeでMBAのほかにMSを取得中なので、ビジネスパーソン及び教授が三人、科学者のメンターが一人つく。

科学者のメンターは、Chris Field。
ノーベル賞を受賞した科学者で、安い土地(Marginal Land)でバイオ燃料畑をつくることを声高に叫んでいる人だ。

それぞれの分野で世界第一人者の人が手の届くところにいる。
それが、Stanford。

「地球上のあらゆる場所で、Stanford GSBの2年生程素晴らしい場所はない」
新しいDeanになったSalonerからのメールだ。

このプロジェクトがうまくいくのかは、もちろん分からない。
しかし、まさに夢のような経験だし、今後どの道をとるにせよ、この過程から学んできたことは、いかせると思う。

それが、私がStanford MBAにきた理由だ。

息抜き

他の学校ですが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=tGn3-RW8Ajk

真面目な話題が続きましたので、息抜きに・・・

2010年1月10日日曜日

ハゲタカからの忠告をとるか

「ハゲタカからのご忠告です。本業以外のビジネスに手を出した企業は、必ず潰れます」(真山仁『レッドゾーン』

映画ハゲタカの原作となったレッドゾーンの主人公の台詞だ。ハゲタカからの忠告は、いつでも正しいのだろうか。

コングロマリット・ディスカウント。「投資家は、自分で株式のポートフォリオを組みたいのであるから、投資される事業会社の方で、複数の事業を手がけるべきでない」というハゲタカからの忠告。複数の事業を手がけると、投資する側からは、「何がDriverとなって成長しているのか」「何が問題で利益が落ちているのか」といったことが見えにくくなる。買手に十分な情報がない場合には、(いったい本当はいくらなのか分からないので)買手にそれだけリスクが生じ、それだけ高い値段を払いたくなくなるというのはみえやすい。このことは、ノーベル賞を取得したアケロフ教授のレモンの理論の中でも述べられている(こちらに分かりやすい説明があります)。乱暴な説明だが、中国の屋台でロレックスが売っているとして、仮にホンモノだとしても、誰もロレックス本店と同じ値段は払わないだろう。コングロマリット経営をすると、投資家に情報が見えにくくなるので、それだけ投資家は高い値段を払いたくなくなるのだ。

また、「餅は餅屋」という。

例えば、GMは、自動車のみならず、航空宇宙産業やITなどにも手を出し、(労働組合問題、人事問題、ファイナンス問題などの問題も重なって)潰れてしまったといわれている(詳しくは、『M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?』)。

トヨタ自動車についても、自動車事業のほかに、住宅事業(トヨタホーム)、金融事業(トヨタファイナンシャルサービス株式会社)、ITS事業、Gazoo事業、マリン事業、バイオ・緑化事業などの複数の事業を行っているので、ピュアプレイに戻るべきだという専門家の指摘がある(『M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?』)。例えば、ファイナンス事業に手を出した結果、借入金が大きく膨らみになってしまい(7年前は5兆8000億円くらいだった借入金が、2009年3月時点で は12兆6000億円くらい。もちろん全部がファイナンス事業のせいではないが。)、また、2008年9月のリーマンショックの影響も大きく受けたという のだ。

コングロマリット経営で有名なGEも、2009年3月には、ピーク時(42ドル)の7分の1である一株6ドルになった。リーマンショック後に、ファイナンス部門のGEキャピタルが大打撃を受け、金融事業の見直し、スリム化に着手したといわれているのだ(M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?)。

ハゲタカからの忠告は説得力がある。
しかし、どんな場合にも、本当なのだろうか。

投資家の立場を知るなら、M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?
は秀逸の本だ。私のStanford MBAのクラスメートは、「とても参考になった。学部生ならこの本を読むだけで、投資銀行に内定が出るだろう」と言っていた。

しかし、投資家のトップの人達だけでなく、
投資される立場のトップの人達の意見も聞いてみよう。

例えば、インテル3代目CEOのアンディ・グローブなら何と言うか。
彼は、「経営の神様」とも呼ばれることがある。

アンディ・グローブ:
・「私は、ウォルマートのCEOに、『ヘルスケア事業に進出せよ』とメールを送った。その結果なのか、ウォルマートは、Health and Human Services省のAssistant SecretaryのJohn Agwunobi氏を雇った。」
・「次はGEだ。GEのCEOには、『電気自動車事業に進出せよ』とメールを送った。返事を待っているところだ。」

AppleのSteve Jobsなら何と言うだろうか。

Appleは、もともとApple Computersという名前だったと記憶しているが、この名前をやめて、Appleという名前になったのではないかと思う(もし違っていたらスミマセン)。
なぜなのか推測してみよう。
Appleは、iPODやiTunesを手がけるようになった。
さらに、Appleは、iPhoneという携帯事業にも進出した。
今までの本業以外をするようになった。
しかし、結果はご存知のとおり。
大成功だ。

さて、上に述べたGMやトヨタとの違いはどこにあるのか。

「シナジーのことを言っているのだろう?」という声が聞こえそうだ。

違う。
ほかにも、理由がある。
そのうちの一つが、以前に、このブログで御紹介したストラテジック・インフレクション・ポイントだ。

技術などの飛躍的な進歩が、業界の競争の方程式を根本的に変えてしまう場合がある。新たな競争の方程式にのれた企業は、覇者となるが、のれなかった企業は、大打撃を受ける。

iTunesの例で考えてみよう。

ソフトウェアやIT技術の飛躍的な進歩によって、音楽業界には、ストラテジック・インフレクション・ポイントが到来していた。ナップスターなどのアントレプレナーが出現する。ネットを利用して音楽をダウンロードするという時代が到来したのだ。あせった音楽業界はナップスターなどを訴えて迎撃した。
彼らはスタートアップだったから、既存の音楽業界全体とやりあうだけのリソースはなかった。
しかし、Appleは違う。大企業としてのリソースがある。
iTunesは成功した。
そして、それは、ネットと音楽の融合という新しい業界の流れを見こして、音楽業界にStrategic Inflection Pointが到来すると見抜いたSteve Jobsの先見性によるのだろう。

つまりこういうことだ。
シナジーだけではない。
Strategic Inflection Pointの到来する業界に打って出る。この業界では、既存企業は、変化しないと生き残れない。どんな企業であれ、「変化する」のはとても大変だ。既存企業が、変化がなかなかできなくて困っているところに、Appleのような別業界の大企業が入ってくる。

アンディ・グローブのメールも、これを言っているのだろう。自動車業界とアメリカのヘルスケア業界にストラテジック・インフレクション・ポイントが到来するのだ、と。

いくらストラテジック・インフレクション・ポイントが到来しても、アントレプレナーが大企業で埋まっているマーケットでシェアをとるのは難しい。リソースがないからだ。しかし、自分のそれまでのコア事業とリソースで守られた大企業ならば話は別だ。Appleが、iTunesで成功できた秘訣がここにある。Appleが、もしスタートアップだったら、あの時点での成功は難しかっただろう。

ストラテジック・インフレクション・ポイントの到来を見抜ければチャンスが到来するだろう。しかし、『インテル戦略転換』に述べられているように、これは大変難しい。ストラテジック・インフレクション・ポイント後の業界の新しい方程式を見抜くのはもっと難しい。

そこで、アンディ・グローブに、
・「ストラテジック・インフレクション・ポイント後の新しい業界の方程式がどうなるか」その見抜き方一般論と、
・電気自動車の業界の新しい方程式はどうなるのか
を質問してみた。

「それは私にも分からない。二つくらい上の次元の話だろう。」
という返事だった。

2010年1月6日水曜日

悪魔のベンチャーキャピタリストとのランチ

Stanfordの学生なら誰もが憧れる存在が立っていた。Vinod Khoslaだ。

「Y.I.と申します。」
「Vinod Khoslaだ。」

Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの学生から見ると、オバマと同じくらいヒーローのような存在。
たまに(1年に1度くらい)、教室をウォークインで訪れると、多くの学生達は、最初我が目を疑い、その後、「おー、コスラを見てしまった」という感じで緊張して固まってしまう。

そのKhoslaとランチをする機会に恵まれた。
色々質問してみた。

Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの卒業生(スタンフォードにはWaitlistから無理やり入学したといわれている)。卒業と同時に余り知られていない会社を立ち上げたが、2年くらい後に、Javaで有名なSun MicrosystemsのCo-Founder兼CEOになった。5年くらい後に、このブログでも紹介したKleiner Perkinsに入るためにSun Microsystemsを退職。以来、(やはりこのブログで紹介した)John Doerrと一緒に投資をしてきた。個人資産は、1000億円を超えると言われている(2007年頃のFortuneでは1200億円から1500億円くらいだったような。。。)。クリーンテクノロジーの投資家では、John Doerrと並ぶ巨匠として知られる。

Khoslaは、インド人で顔が黒く、いつも黒っぽい服を着ているので、「Devil(悪魔)」と呼ばれることもある。設立初期の段階でリスクをとって投資をする。そして、上手くいかないと分かると平気で切り捨てる(ファイナンスのリアルオプションの理論からすると当然か)。創業者のチームに対しても、取締役会のメンバーを決める前に、一人一人全員をインタビューして、「出来ない奴」がチームにいる場合には、先に切り捨てる。起業家に対して、ダメなところがあると、遠慮のない厳しく批判をする。そういったところも名前に反映されたのかもしれない。

会う前は、緊張したが、会ってみると、とても「いい人」だった。学校を案内して、
「クリーンテクノロジーに興味のある学生はGSBではどんどん増えています。いらして頂いたので、皆とても喜んでいます」
と言うと、嬉しそうにニコニコしていた。
どんなに厳しい人でも『学生』の前ではガードが下がるということだろうか。

Khoslaは、Kleiner Perkinsを2004年に退職した。その後は、超ハイリスクハイリターンをとることで知られる。このため、当初は、他の投資家から資金を集めて投資するという普通のベンチャーキャピタルのモデルを捨てて、個人で投資をしていたほどだ(その後、クリーンテクノロジーは、とてもCapital Intensiveなので、他の投資家から資金を集めて、投資家の好みに対応したファンドを設立することにした)。

なぜ、超ハイリスクハイリターンをとるのか。その理由は推測だが、恐らく、中国とインドのCO2の排出量の増加を見込んでだろう。例えば、近い将来、中国のCO2の排出量は、現在の全世界のCO2の排出量を上回ると言われている。これだけ物凄い速度でCO2の排出が出ているときに、ちょっとやそっとCO2の排出量を減らす対策をしても全く追いつかないと考えたのだろう。「根本的な解決ができるのは、本当に物凄い技術だけだ」そう考えて超ハイリスクハイリターン戦略をとっているのだと思う。それは、"$0billion and $0million are different."とか「カネを失うのは全くかまわない。だが、成功したときには、見合わないとダメだ」とか「クリーンテクノロジーは、Cindia Effect(中国とインドのCO2排出)を考えたときに意味をなさないとダメだ」という彼の言葉にもあらわれている。

とりあえず、話した内容を以下にまとめてみた。(ランチで聞いた内容と彼の講演の内容が混ざっている)
非常にシンプルで、聞いていると「そうか」と思うのだが、普通はなかなかこういう風には考えられないと思った。

Y.I.「投資の戦略と起業家の戦略のAlignmentはどう考えるのか。技術の莫大なリスクをとるのであれば、成功したときのアップサイドが大きくなるから、リターンは莫大になるだろう。であれば、ビジネス面では、アメリカ人には難しいモノづくりを自分でするのではなく、ライセンスやアウトソースをする等、もっと手堅い戦略をとりたいと考える起業家もいそうだ。それでも個人で数百億円儲けられるのであれば、何もそれ以上ビジネスリスクをとって数千億円を目指さなくても良いと考えるのは自然だと思う。しかし、あなたの投資の戦略では、これを許さないのでは?」
Khosla「技術のリスクをとるということは、必然的にビジネスのリスクは低くなる。今までより技術が圧倒的に優れているときには、マーケットシェアをとるのは難しくない。モノづくりをできる人はゴロゴロ転がっている。教わればいい。ちょっとの時間の問題だ。ライセンスをしている企業は、ポートフォリオにもある。」

Khosla「専門家に頼むととても精密なモデルを使って将来を予測する。だが、精密なモデルの前提は、ダーツの放り投げだ。だから、専門家は間違う。専門家の言う『答え』は当てにならない。だが、専門家の指摘する『問題』は重要だ」

Khosla「専門家のいうことを聞いたとしよう。そうすると、結局、平均点しかとれない(注:他の人と同じことをすることになるので)。平均点に勝つためには、専門家とは違うように考えないといけない」

Khoslaは、ビジネスプランを精査して、デューディリジェンスをするのではなく、『起業家と夕食を食べて、投資を決定する』(傾向がある)と言われている。優れた技術があって、大きなマーケットがあれば、投資をするという印象があったとので、以下の質問をしてみた。

Y.I.「人がダメだったらどうするのか。投資をする前に人がダメだと思ったら投資しないか。物凄い技術で物凄いマーケットでも結論は同じか。MissionaryとMercenaryという基準も大事か。」

Khosla「人がダメなら投資はしない。その場合、物凄い技術は世の中に出てこないからだ。Mercenaryな会社には悩まされることがある。投資した後に気が付いたときには、人を変えるなど問題を解決する。解決できなければ株を売る」

Khosla「私はたくさん調べたうえで、直感に従って投資をする。新しく世の中に出た科学論文は全部読んでいる。技術が、我々の力をもってすれば、3年以内にモノになるか、イノベーションのサイクルを加速できるか、他の人が考えていないようなことか、そういう点に注目しているんだ」

Khosla「『すべてのものが、クリーンに作り直される』本当にそう信じているんだ。家も、もっとクリーンな素材でつくられるだろう(注:彼はCaleraというCO2をCaptureして製造されるセメントの会社に投資した)。このプラスチックのコップも、Renewableな素材でつくりなおされるだろう。このカーペットもそうだ。『すべてのものがクリーンに作り直される』これに賭けたわけだ。賭けが、間違っているかもしれない。だが、自分が、自分の専門とする技術とか強みに従って、賭けをしないのであれば、結局、平均点しかとれないんだ。」

なぜ、スタンフォードがCritical Analytical Thinkingという授業を創設したのか。Khoslaと話をしていて、その理由が分かる気がした。

情報化社会では、「情報をとってくるものが勝つのではない。情報をとってきた人は、平均点で、とって来た情報に対して『Critical Analytical Thinkingと(直感に従った)賭けをし、賭けに勝った人』が本当の勝者なんだ」
Khoslaはそう言っているような気がした。

2010年1月4日月曜日

スタンフォードMBAの授業「社会をどう変えるのか」

スタンフォードMBAの授業をとっている学生が、毎回の授業の内容をレポートするブログがあります。「社会を、ITでどう変えるのか」という趣旨の授業です。そのブログは、以下です。

http://www.powerofsocialtech.com/

最初の方の投稿に、シラバスへのリンクがあります。
シラバスを読むと、授業のコンセプト(どうすればITで社会を変えられるのか)や、スタンフォードのほかのブログへのリンク、また、授業で読むべきとされている文献のリストにもたどりつけます。

ご興味がある方のご参考まで。

ベタープレイス

MBAの日本人の間でも、クリーンテクノロジーに対する関心が高まっています。

合格された方から、
「MBAに合格しました。ブログ読んでます。クリーンテクノロジーに関心があるので、一度会いませんか。」
という嬉しい連絡を頂くことがあります。

お会いして、
「具体的にどういう分野にご興味があるのですか」
と質問すると、
結構頻繁に頂く御返事が
「うーん。ベタープレイスとか?!」

ベタープレイスは、日本でも、雑誌記事に載るなど、注目を集めています。
環境省がバックアップし、元ルイヴィトン日本CEOでハーバードMBA卒業生の方が、日本のヘッドをされています。

どういう企業なのか。
最も注目されているのが、バッテリースワップ。
どういうことでしょうか。
三菱のアイミーブや日産のリーフに代表されるように、電気自動車が注目される時代になりました。
しかし、電気自動車に積む電池は、まだまだ値段が高く、また、充電に時間がかかります。
箱根に旅行するときなど、長距離を旅行する際に、充電が切れると大変です。
そこで、ベタープレイスは、
「電池は私が持っているのを、お貸しします。携帯電話みたいに、使っただけお金を払って頂ければ結構です。充電が切れても大丈夫ですよ。私共のバッテリースワップステーションで、電池ごと交換しますから、すぐです」
というソリューションを打ち出したのです。

さて、ベタープレイスは、どのくらい成功する確率があるのでしょうか。

「当たるとデカイ」です。なぜなら、一度、スワップステーションが全国にできてしまうと、後発企業の参入障壁が非常に高いからです。
ベタープレイスがバッテリースワップステーションを全国に設置するとする。後発企業からすると、バッテリースワップステーションを全国にいきなり設置するだけ資本がある可能性は低いと思われるので、少しずつになる。ベタープレイスは、いろいろな方法で後発企業の参入を妨害できます(例えば、後発企業のステーションの傍でだけ価格競争する)。また、バッテリーにはいろいろなタイプがあるとすると(あるいはベタープレイスが他の企業のバッテリーとのスワップを許さないとすると)、ユーザからすると、全国にステーションが設置された便利なベタープレイスのほうを使うという風になりやすくなります。

しかし、本当に成功できるのでしょうか。

良くある批判が、電池には色々なタイプがあるので、すべてのタイプを揃えないといけないとすると、バッテリースワップは難しい、という批判。また、電池は重いからスワップは難しいという批判。しかし、いずれも技術的に解決できそうであり、私に届いている情報(真偽は不明)では技術的には解決済みとのこと。

しかし、より難しい問題が、ファイナンスだと思います。

ある情報筋(真偽は不明)によれば、カリフォルニアをバッテリースワップステーションでカバーするだけで1000億円が必要とのこと(電池代を含まない)。電池を入れれば、もっともっと凄い金額になりそうです。

そうすると、ベンチャーには難しいのではないか。

リスクの高いベンチャーは、エクイティで調達するのが基本だと思いますが、ベンチャーキャピタルのファンドの規模(大きくても1つで1000億円くらい)を考えると、エクイティでの全額の調達は無理そうです。ヘッジファンドやプライベートエクイティがベンチャーに投資していたときもありましたが、リーマンショックで、シリコンバレーからは殆どが「蒸発してしまった」といわれています。

エクイティでは足りないので、デットで入れるとすると?
実際にも、ベタープレイスは、デットファイナンスを検討しているという噂です。

しかし、ファイナンスの理論によれば、デットとエクイティの比が重要です。 (デットの比を高めれば、金利に伴う節税効果のために、キャッシュフローの期待値が向上し、当初は企業価値が向上します。しかし、あまりにデットの比率を高めると、今度は倒産する可能性が高くなり、倒産した場合のコストの期待値が計算に入るために企業価値は下がります。)

デットとエクイティの比は、ベタープレイスのように、アセットをたくさん有しているビジネスでは、デットの比率が高めになる傾向があります。 しかし、ここで思い出されるのが、有名なイリジウムのケースです。

イリジウムは、日本の京セラの稲盛氏をはじめとした世界のスーパースターを抱え、ファイナンス業界から注目を集めました。アセットをたくさん有するビジネスであり、また、スーパースターが運営していたため、「利益があまり出る前の段階から」ファイナンス業界が大量の資金をデットで貸したと言われています。

イリジウムは、最後には失敗します。

そして、その教訓として、「アセットがたくさんあれば、確かに『ターゲット』となるデットの比は高くなる。しかし、本当にデットの比を高めるのは、利益がきちんと出てからとすべきで、利益が出る前にデットの比を高めてはいけない」と良く言われます。

ベタープレイスが、イリジウムの二の舞にならなければ良いのですが。
ベタープレイスは、まずはイスラエルなど小さな国から順番にビジネスをはじめています。ここで、利益を出して、デットの比を高められるようにすれば、国土の大きな国に打って出れるかもしれません。また、デットのほかに、政府の資金などを入れようとしています。いずれにしても、大量のカネという意味でダイナミックで、かつ、デットの比を高めるタイミングという意味でセンシティブなExecutionになりそうです。

日産は、「ベタープレイスとセットにされて、日本でバッテリースワップ型の車を出すかのように言われているが、そういう計画は今のところない」との旨の発言をしたと言われています。 しかし、その日産も、ルノーの方で、イスラエルでは、ベタープレイスに協力して、バッテリースワップ型の車を出すと言われています。

おそらく「ベタープレイスがイスラエルで成功すれば、他の国での協力に検討するし、失敗すれば、トカゲの尻尾を切るように切ってしまえば良い」と考えているのでしょう。

ベタープレイスが非常に難しく、センシティブなExecutionに成功するか注目です。

ドリームスクール

スタンフォードMBAは、ハーバードMBAとならび、最も人気のある学校。

昔から統計調査では、「(もしどこのMBAにでも行けるなら)51%の人がスタンフォードMBAに行きたく、49%の人がハーバードMBAに行きたい」という結果が出ていると聞いたことがあります。

ところが、最近良く
「スタンフォードMBAに出願しようと思っていて、合格率の低さにびっくりした。カウンセラーからも、時間の無駄だから受けるなって言われた。でもドリームスクールだからどうしよう。時間の無駄かなぁ。」
というような相談を受けます。

こういうアドバイスを外人のカウンセラーから強く受けると、Confrontationの文化のない日本人(若者)は、結構、シュンとなるかもしれません。
しかし、MBAに留学してアメリカ人と議論してきた経験からすると、(クチだけの人にならない限り)アメリカ人に対しては、自信を持って、自分がいかにすぐれていて、受かるポテンシャルがあるのか反論すべきだと思います。例えば、Andrew Groveを見ていても、アメリカ人は、意見と意見を正面から衝突させるConfrontationを大切にします。まるで、弁護士が法廷で主張のすべてを出し尽くすように。

個人のレベルとしては、時間を使うという小さなリスクをとって、高い目標を目指すチャレンジ精神を大切にしたいです。

もっと大きなレベルでは(裏の話)、実は、Vicious Cycleが出来つつあり、流れを変える必要もあるのです。
以下は本当にあった話です。

(アドミッションとの会話)
日本人在校生・卒業生有志:「日本人合格者を増やしてください」
アドミッションオフィス:「出願者数が足りない。日本人はもっとスタンフォードMBAを受けるべきだ。興味がなくなっているのか」

(元ディーンとの会話)
私:「日本人は今一学年3人です。もっと人数を増やして頂けると嬉しいのですが。」
元ディーンのBob Joss:「一学年3人なのは知っているよ。日本のGDPは世界2番目だから、もっと合格者を増やしたいね。ただ、他の国と比べて、圧倒的に出願者数が足りない」

日本人から見ると、「受けても受からないから受けない」
スタンフォードMBAから見ると、「あまり受けてこないので、取る人数を減らす」

このサイクルが決まってしまうと、どんどんStanford MBAの日本人が減ってしまいます。

2010年1月3日日曜日

MissionaryとMercenary

John Doerrについて、補足。

1.投資とポートフォリオについて

ある雑誌記事のインタビューによれば、「投資をする際には、技術、マーケット、チームを見る」そうです。

そして、スタートアップを、「MissionaryタイプとMercenaryタイプ」という観点から見るようです。

それぞれの特徴は、以下のとおりです。(John Doerrの2009年の講演より)



いくつかのシリコンバレーの企業で働いてみました。

実際に、シリコンバレーの企業で働いてみると、「心地よい」と感じるスタートアップは、Missionaryな要素をたくさん持っていました。「カスタマーの視点に立つように」というような指示が末端のスタッフにまで行き届きます。また、仕事をしていても、常にチームのサポートがあります。「ファウンダーだけが良い思いをしている」ということはなく、若くても、結果を出していれば、大切にされます。

逆に、働いてみて「凄いんだろうけれど、ストレスを感じる」スタートアップは、Mercenaryな要素をたくさん持っていました。例えば、「金をもうけて将来楽をしたい」(Making Money、The deffered Life Plan)という発想で、「今を、自分の情熱に従って生きる」という感じがあまりありません。また、何か仕事をしていても、チームのサポートがなく、「●●しておいて」と普通の感覚であれば「奇跡を起こせ」というような指示がとびます(loners)。顧客の立場に立とうという発想もなく、「競争者に勝つために、顧客が●を要求したらその顧客は切ろう」という議論が平気でまかり通ります。さらに、設立間際であるにもかかわらず、「あと7年で市場を全部とる」というようなOptimisticな議論が戦略もなくされます。これを変えようと、頑張っても、ファウンダーが最も強い(aristocracy)ので、筋がとおっていたとしても、なかなか意見が通りません。

Kleiner自体は、Missionaryになりたいのだと思います。例えば、インターネットのトーマス・エジソンと呼ばれるBill Joyやアルゴアがパートナーにいる一方で、大変若いパートナーもいるようです。


2.キャリアアドバイス

John Doerrは、以下のような経験を若いうちに積むと良い、と講演しています。

・Launch a product
・Manage a douzen or more employees
・Learn great management processes from the best: GE, Intel, Amazon, Cisco, Intuit, Google

より具体的には、以下のようなスキルを得るべきだと言います。

・Ability to listen actively, think critically
・Communicate (think on your feet, debating the merits of issues, whether large or small groups)

そして、その理由として、以下のように述べています。
“Ideas are easy. Execution is everything. It takes a team to win.”
従って、「事を成す」ためには、チームをinspireする必要がある。チームをinspireするためには、think on your feetのスキルを使って、行くべき方向にチームを導く必要がある、と言うのです。

他にも、特に以下のようなことを学ぶべきだと語ります。
・Confront problem without confronting others
・Recruit, to sell, to hire and fire, inspire, manage, develop and motivate with tough love
・Extra points for humor

さらにネットワークが非常に重要なので、「毎日10分間ネットワーキングに時間を使うように」と言います。そして、マーケティング、セールス、ビジネスディベロップメントの各ポジションが、ネットワークをするのに最適なポジションだと語ります。

そして、こうしたスキルを身につけた結果、「起業するべきときは、自分で分かる。多くの人にとって、これはSprintじゃない。Marathonなんだ」と言います(上記表を参照)。
勿論、グーグルの創業者のサーゲイとラリーのように、例外はあります。
「もし君が例外なら、僕の講演が終わった後、すぐに来てくれ」とのことでした。

伝説のベンチャーキャピタリスト、John Doerrとは

Kleiner Perkinsの話題をもう一つ。そのパートナーの一人、John Doerrについて。

以前にご紹介したとおり、シリコンバレーでは有名人です(例えば、こちらの記事)。
個人資産は、1200億円。アメリカのBest Leadersの一人にも選ばれました。

クリーンテクノロジーの分野のベンチャーキャピタリストでは、Vinod KhoslaとJohn Doerrが2人の「巨匠」とするのが一般的だと思います(例えば、こちらの記事を参照)

クライナーパーキンスは、2000年か2001年頃からクリーンテクノロジーの領域に進出しましたが、その契機について明らかにしているのが、以下のJohn Doerrの2007年の講演です。

John Doerr2007年講演 (ビデオを見る時間がない方は、こちらに抜粋があります)

この講演では、「私は怖い」と語る最初から感情的で、最後は泣き出してしまいます。

以前にもご紹介したとおり、John Doerrの所属するKleiner Perkinsは、異常なトラックレコードを叩き出してきました。2009年のJohn Doerrの公表によれば、Kleiner Perkinsのトラックレコードは、以下のとおりです。

・Annual Revenue:10兆円
・時価総額:50兆円
・33年間で475件に投資。
・今までに173件がIPO。163件がM&AでExit。

しかし、そんなKleiner Perkinsの力を持ってしてさえ、Climate Changeの非常事態を解決できないかもしれない。だから、John Doerrは、講演中に「私は怖い」と語るのだと思います。

Doerrによれば、エクソン・モービルの『一日』の売り上げは、1000億円を超えます。一方で、Kleiner Perkinsのグリーンテクノロジーファンドの規模は、約1000億円。

「未来を予測するのに最も簡単な方法は、未来を発明すること。二番目に簡単なのは、それについてファイナンスすること」とDoerrは、語ります。未来は予見できないので、それなら、つくりだすのがよい、という趣旨でしょう。しかし、エクソン・モービルの一日の売り上げ(1000億円)や中国のCO2排出量の増加には凄まじいものがあります(詳しくは、John Doerr2007年講演を参照)。Kleinerの力をもってしても、未来をつくりだせるのか「怖い」とDoerrは感じているのだと思います。

先に述べたように、Doerrによれば、エクソン・モービルの『一日』の売り上げは、1000億円超。2007年当時のアメリカ政府のグリーンテクノロジーに関する予算も1000億円程度。この講演の中で、彼は、クリーンテクノロジーの分野では、「政策が非常に大事だ」と語ります。起業家の力だけでは問題は解決できず、なんとしても政策が必要だというのです。そして、具体的に5つの政策を以下の記事で提唱しています。

The Green Road to Prosperity. By: Doerr, John, Scientific American Earth 3.0, 19361513, 2009, Vol. 19, Issue 1


「政策が必要」という言葉通り、Doerrは、アメリカ政府に対して、強いパイプを作り出してきました。昨年2月に大統領に対するアドバイザリーボードのメンバーになったのです(こちらの記事)。

そのインセンティブではなく、結果の方を中心に吟味して、「クリーンテクノロジーに対してシリコンバレーのトップベンチャーキャピタリストは真剣なのではない。政府とのパイプが欲しいだけだ。」とする経済専門家の声もあります。私自身、ある教授から、「クリーンテクノロジーは、近い将来、熱が冷めるだろう。中国とインドの二酸化炭素排出量の増加は、もうどうしようもない。ベンチャーキャピタリスト達が投資しているのも、政府とのコネが欲しいだけだろう」とアドバイスをもらったことがあります。確かに、政府とのコネを得たのは、Doerrだけではなく、Foundation Capitalなどのクリーンテクノロジーに強い他のベンチャーキャピタルファームも同じ。例えば、スタンフォードビジネススクールを最近卒業したばかりのFoundation CapitalのSteve Vassalloも、最近大統領からホワイトハウスに意見聴取に呼ばれたと話していました。

しかし、Doerrがクリーンテクノロジーへの検討をはじめたのが、2000年か2001年頃。その後、環境問題に興味のなかったように見えるブッシュ政権の時代にも、グリーンテクノロジーへの投資を続けています。 本当に、政府とのコネが欲しかっただけならば、ブッシュ政権の時代にグリーンテクノロジーへの投資はしないのではないかと思います。

これは、John Doerr2007年講演で見せた涙を、真実の涙ととるか、単なるパフォーマンスととるかという違いでもあると思います。

Stanford MBA Round 1合格者

スタンフォードMBAのラウンド1の合格者が発表になりました。

私がかつて所属していた弁護士事務所の先輩で、プライベートエクイティファンドに転職した方が合格しました。

やはりこのブログを参考にされたそうです。

これで2年連続ブログ読者が高い確率でStanford MBAに合格しています。統計はとっていませんが、在校生と話す限り、おそらく合格者の10割がこのブログを読んでいると思います。

お役に立てているのであれば、嬉しい限りです。
受験される方は、過去の記事に、合格法をたくさんのせてあります(左側の欄のタグで「MBA留学合格法」をクリックすると表示されます)ので、参考にされて下さい。