2013年4月1日月曜日

オンラインプライバシー

クリーンテックのブームが、シェールオイルの台頭とともに過ぎ去っていくのに対して、インターネットの火は消えない。

シリコンバレーのベタープレイス(電池を交換するというコンセプトの電気自動車の「ガソリンスタンド」を提供する会社)で働いていた友達や投資家の友達も、乗り遅れるな、とばかりにインターネットに乗り換えていく。

スタンフォードビジネススクールでは、アイディアを考えつき、それを評価する方法をならうので、私も、ぼーっとしているときに、たまにインターネットのアイディアを考えてみるということをする。インターネットなら、1時間あれば、大体、5個くらい、良いアイディアを思いつく。学校で習った方法でアイディアを評価してみると、どれもとても大きな市場で、誰もやったことがないアイディアだったりするので、「インターネットの世界はまだまだ無限の広がりがある」と感じたりする。

他方で、起業家の友達で、インターネットに乗り換えなかった友達は、「フェースブックが終わる日が来る。いつか消費者がオンラインのプライバシーの問題に気がつく日がくる」と警鐘をならしたりする。決して負け惜しみで言っているわけではなく、この友達は、今まで2つ会社を設立し、2つとも上場させ、大きな利益をあげた歴戦錬磨である。今回は、3つ目の会社で、ビルゲイツに勝とうと、クリーンテックで、数百兆円の市場にチャレンジしている。

さて、その彼が、なぜ、上記のような警鐘をならすのか。例えば、グーグルがサーチに関する情報といった個人情報を保有していることは知られていると思われる。スタンフォードが出している月刊誌の2013年3月/4月号によれば、グーグルは、ユーザーに対する大量の情報を保有しており、2012年の後半期には、政府や裁判所から3万3000のユーザアカウントに関する情報を求められ、そのうちの66パーセントに対して要求に同意した、ということである。同誌によれば、このような状況は、グーグルに限られたものではない。

成功する起業家は、実はリスクテーカーではなく、数百のアイディアから本当に成功するアイディアを厳選できる人だと思う。数百兆円の市場にチャレンジしている上記の友人は、オンラインのプライバシーの問題は、起業の有無の検討をするにあたって、大きなウェイトをしめるレベルにまで到達しているとのことのようである。

さて、これが本当であれば、実は、これまたビジネスチャンスだと思う。友達には、夫婦そろってグーグルを退職して、フェースブックのプライバシーを向上させる会社を設立した友人がいる。ちなみに、奥さんは、スタンフォードでのクラスメートである。

スタンフォードビジネススクールのインターネットや起業に関する有名な授業に、Formation of New Venturesという授業がある。その最初のケースは、マカフィーである。マカフィーが、コンピュータが台頭した頃に、「これからはウィルスが問題になる」とビジョンをもって(当時は殆ど誰もそう思っていなかったそうである)、設立され、「マカフィーのプロダクトを使うユーザーが多いほど、マカフィーは早くウィルスを発見して駆逐でき、競合に対して優位にたてる。これにより、マカフィーは、さらに多くのユーザーを獲得出来、この正のサイクルがマカフィーを勝利に導く」というネットワーク効果を利用した巧妙なモデルも利用し、大企業になるまでを扱ったケースである。

プライバシーの問題は、マカフィーの設立期のウィルスの問題と同じように、大きなビジネスになるのだろうか。

例えば、既にreputation.comというオンライン上の自己のレピュテーションをマネージする会社があり、著名である。このプロダクト部隊の副社長だった友人は、転職して会社から離れてしまった。また、有料というモデルでは消費者に広く浸透しないだろう、という指摘も大きい。同社が、プライバシーの分野の「グーグル」になる可能性は低いだろう。どの起業家が新しい分野で頂点をとるのか、今後の行く末が興味深い。




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