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2012年12月29日土曜日

隅っこを見ることによる将来の予測

「『正しいアイディアで会社をスタートするべきだ』と考える起業家が多い。大きな間違いだ。正しいアイディアであり、かつ、皆が失敗すると考えているアイディアでスタートしなければ失敗する。皆が正しいと思ったときでは遅すぎるから。」(アンディ・ラクレフ)

グーグルへの投資などでシリコンバレーの歴史を作ってきたセコイア・キャピタル。その元パートナーのマーク・スティーブンスの個人資産は、フォーブズによれば、1000億円を超えるといわれます。

スタンフォードビジネススクールでは、彼と何度かランチをする機会があり、フェイスブックの創業者のマーク・ザッカバーグがセコイア・キャピタルにパジャマを着てプレゼンテーションに来たときの話をしてくれたり、私の創業した会社のアドバイスをしてくれたり、という感じだったのですが、ある日のこと、

「起業家に必要な能力の一つに将来を読むことがある。そのためには、隅っこを見る能力(ability to see corners)が必要である。」

と話してくれました。

彼の言葉の前半は簡単です。
将来を予測することで、競争相手に対して、先手をうつことが可能となり、例えば、ビジネススクール用語でいうfirst mover's advantageが得られます。

しかし、後半はどういうことなのでしょうか。
「隅っこを見ることで、将来を予測する」とは、どういうことなのでしょうか。

これについて、今回は、ベルリンの壁崩壊(!)を例にあげて考えたいと思います。

日本に出張中、とある日本の知識人に、「ベルリンの壁の崩壊って予想できた」と聞いてみたところ、「出来なかった」という返事が返ってきました。

しかし、同じことを、ドイツの東側にあるハンガリー(ドイツとの関係で「corner/隅」のような存在)の知識人に聞いたら、人によっては、「予想できた」という答えが返ってくると思います。


ハンガリーは、東側諸国で、中立国であるオーストリアに面しています。1989年、ブッシュ大統領は、ゴルバチョフが、ソ連を維持するために軍事力を使わないという情報を耳にして、「テストしてみよう」と思い、ハンガリーに対して工作をしかけ、ハンガリーとオーストリアの国境の有刺鉄線を除去させます。その後、ブッシュの工作は続き、ハンガリー政府は、東ドイツの人が、西側に移動するのを色々と助けるようになります(こちらに詳細)。この一連の動きが、ベルリンの壁崩壊につながったといわれています(こちら)。

ハンガリーという隅(コーナー)に着目した人は、ベルリンの壁の崩壊を予想できたかもしれません。

将来は、予測出来ないものではなく、予測が当たるか当たらないか、確率の問題となると言えると思います。

したがって、「将来は予測出来ない」と割り切ってしまうのも問題ですし、逆に、「自分の予測は絶対に当たる」と傲慢になるのも問題なのですが、実は、両者とも、リスクをとらない人の立場なのです。前者は、予測出来ないから、と思って、行動をしない人。後者は、予測出来るから、絶対に当たると思って、行動する人。リスクをとらない人の効用曲線は、以下のようになり、直線でありませんから、自分のリターンを最適化することが出来ないと考えられます。




情報化時代では、能力のある人の間では、情報の格差が減っていくと考えられますから、同じ能力のある人の間で、差をつけようと思った場合、もう一歩踏み込んだ戦略が必要となると考えられます。

リスクをとっていることを認識して、「賭けに出て、賭けに勝つ」ことで、自分自身の効用曲線を変更し、直線に近づけることができ、同じくらい優秀な人に対して、リターンの期待値をあげることが可能になると思います。

もっとも、これに対して、通常の人以上の情報があっても、利用できない人も残念ながら、存在します。例えば、2001年8月6日、9月11日よりも前に、CIAは、飛行機を利用した攻撃を予想していました(以下資料)。この情報は大統領に届けられましたが、結果は、ご存知のとおり、非常に残念なものでした。


2011年9月4日日曜日

周りに自分よりも出来る人を・・・




「そんな奴いらないよ。君に必要なのは、もっと下っ端で、良く働く奴だ。」

カリフォルニアのマウンテンビューにある会社の研究室で、私は会社のアドバイザーと電話で話していた。

「彼女は、スマートグリッドの会社の最高執行役員でした。水道会社に対するロビー活動という意味でも、バックグラウンドは、十分にマッチしていると思います。」とアドバイザーの説得にかかった。

***

起業して暫く経つが、そろそろ会社に、きちんとした組織をつくり、経営のプラクティスを導入したいと考えていた。誰か経験のある熟年のプロを雇う必要がある。

そこで発見したのが、元eBayのチーフオペレーティングオフィサー(最高執行役員)だったスザンナだった。




三顧の礼のように毎日電話して会って、遂に説得に成功し、彼女が従業員一号として入ってくれることとなった。

「常に自分よりも出来る人で自分の周りを固めること」
は、スタンフォードMBAで最初に習うことの一つ。




スザンナは、スタンフォードMBAの先輩。eBayには従業員102号として参加して、最高執行責任者になった。その後、数多くの会社の売上げを数億円レベルから数百億円レベルに短期間で向上させてきた。「私は、売上げを毎日数億円上昇させてきた」と彼女は豪語する。


「そんな人どうやって雇ったの?」と良く聞かれる。


スタンフォードMBAでは、学生の一人ひとりにメンターがアサインされる。
彼女は、私のメンターの一人だ。

もう一つ理由がある。

50歳は、人生で、多くの人がスタートアップに挑戦できるチャンスのうちの二回のうち一回だ。
二回のうち最初の一回は、若いとき、30歳以下のときに到来する。
二回のうち二回目は、子供が巣立ち、あぶらののった50歳で到来する。


既に成功した彼女は、おそらく、二回目のチャンスを取り、新しい人生を歩みたくなったのだろう。

2011年7月17日日曜日

シリコンバレーのドラえもん(?!)

「失敗をすることは構わない。しかし、失敗するのであれば、大きく失敗したい。そして、当たったときには、ホームランでなければならない。私が成功したのは、失敗を恐れる気持ちが全くなかったからだ。」(ヴィノド・コスラ)

「9000回シュートを外した。300回ゲームに負けた。26回、ゲームの勝敗を分けるシュートの成功に賭け、失敗した。何度も、何度も、何度も、人生で失敗した。だから、私は、成功したんだ。」(マイケル・ジョーダン)



今回はシリコンバレーのドラえもんのお話。20年くらい前のドラえもんの映画(犬が出てくる奴)。


     

映画の中で、ドラえもんが、植物に注射をする。すると、植物が成長して、カレーの実を付けたのだ。実をあけると、中から、出来立てのカレーが出てくる。


(藤子・F・不二雄原作、東宝『ドラえもん のび太の大魔境』より引用。リンク元は、http://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/contents/mini/backnumber/0122/img/23.jpg
)



20年前は、SFロマンを感じたが、最近では、「これって今の技術なら、何とか出来そうだよね」と考えるようになった。そして、本当にそんな技術が出てきた。

それが、ヴィノド・コスラが最近投資をしたスタートアップだ。

このスタートアップの技術を使うと、植物が、牛肉や豚肉を作り出すようになる。

「マクドナルドに売るのか、ベジタリアンに売るのか」マーケットを攻略する方法を友達と議論した。

当たれば大きい。牛肉のコレステロールが体に悪いことは、皆知っている。世界中の人が肉から植物に乗り換えれば・・・と考えれば、天文学のような数字がマーケットサイズとなるだろう。

しかし、技術は完成していないし、コスト面で肉に勝てるかも分からないし、遺伝子組み換え食品と同じようにメディアに叩かれるリスクもある。

コスラなら、そのリスクを取れる。スタンフォードMBAを出たばかりの私の友達(ジェネラルミル及び農家の出身)は、従業員No1として、コスラにこの会社に送り込まれた。彼が、世界を変えられるか楽しみだ。

ちなみに似たような技術の会社としては、大気中の二酸化炭素を取り込んで、カーボンを利用した製品(ペットボトルとか)を作り出すという会社がある。コスト面で難しそうだ。

私の方は、最近、学校を出て、近所(スタンフォードから歩いて10分)に引越しをして、ようやくインターネットが接続された。ネットがつながると好きな音楽が聴ける。



来週から中東に出張することになりそうだ。

2011年6月18日土曜日

卒業



1.最後の授業

"Regret for the things we did can be tempered by time; it is regret for the things we did not do that is inconsolable.(Sydney Harris)"(挑戦して、うまくいかなかった記憶は、薄れていく。挑戦しないで後悔した記憶は、一生忘れることが出来ない。シドニー・ハリス。)

スタンフォードGSBの最後の授業は、最人気のグロースベック教授の上の一言で始まった。それは、奇しくも、私のスタンフォードMBAのエッセイの書き出しと同じだった。


2.スタンフォードMBAの謎

スタンフォードMBAのミッションは、御存知のとおり、"Change Lives, Change Organizations, and Change the World."である。

これは単なるマーケティングなのだろうか、本当なのだろうか。

スタンフォードMBAのアドミッションオフィスが来日したとき、彼らは、スタンフォードのカルチャーにフィットしている人が欲しいと述べていた。学校のコミュニティと一体になれる人が欲しいのだ、と。
「あなたがスタンフォードのカルチャーにフィットしていれば、その影響を受ける。皆が世界を変えたい、世界を変えられると思っているカルチャーと一体となる。あなたも、『自分にもできる』と信じるようになる。我々はそういう人がほしい。」(アドミッションオフィス)
その半年後に、合格の電話をもらい、ちょうど3年前に、私のスタンフォードMBAの留学が始まった。私の留学は、前代校長のボブ・ジョスのスピーチと共に始まった。彼のスピーチは、今でも鮮明に覚えている。
「卒業したとき、振り返って、君達は、『自分がこんなに変わったのか』と驚くだろう。そのためには、いつも自分にとって、Uncomfortableだと感じることに挑戦しなさい。」
「本当に自分も変われるのだろうか。卒業するときには、ジョスが言っていたことが本当だったか振り返ってやろう」と心に決めた。


3.つらかった一年目

MBAの一年目はつらかった。一科目について平均して30頁(多いときには100頁)の予習があり、一日について、二科目から三科目授業がある。夕方まで授業があり、そのあとパーティやら色々なイベントがあるので、授業に追いつかず、どんどん負債がたまっていった。

今は校長になったガース・サロナー教授(当時は戦略の授業を教えていた)から、
「君の成績の状態は非常にまずい。危機的な状態だ。」
というメールが届いたのを覚えている。

おまけにアメリカは大不況に突入するところで、仕事がなかった。日本では得てして尊敬を集める弁護士だが、シリコンバレーのキャリアコンサルからは、
「弁護士だということは、なるべく相手に話さないようにしなさい」
とキャリアを全否定され、「それでは、どうやってアメリカでインターンシップをとるのだろうか」とショックを受けたのを覚えている。


4.自分の変化

一年目の秋休みの頃から、私に変化が訪れ始めた。

怖かったが、30年の内戦が終わったグアテマラに、クラスメートと共に行くことにした(こちらの記事)。

グアテマラの農家は貧しく、数十キロのコーヒー豆を手を真っ赤にしながらとっても、一日に1ドルしか貰えない。私が泊まった石造りの家には、いつも野犬が入ってきて、とても臭かった。我々のガイドは、我々を守るために、常にピストルを持っていた。元ゲリラの村に泊まり、生命の危機を感じながら、急斜面な活火山を登り、自然の美しさを謳歌した。とてもとてもUncomfortableだったが、美しくも危険な環境と共存して笑いながら生きていく人達を見て、世界を見た思いがした。

そしてその後、南アフリカにクラスメートと旅行した。水のない砂漠の村に泊まり、「あなたはシャワーもあびれないし、水も飲めないし、歯も磨けない。」と言われた。

世界を見て、旅行して、アメリカ人と飲食就寝を24時間ともにすることで、様々な国の人の価値観が少しづつわかるようになった。

そして、アフリカから帰ってくると、成績優秀者の一人に選ばれていた。勉強時間を削ることが出来るようになったので、アメリカのクリーンテックのスタートアップに対するコンサルをはじめた。そうこうするうちに、インターンシップも手に入った。卒業生が設立したクリーンテックの会社で、アメリカ人と一緒に仕事をして、「自分もアメリカで仕事が出来る」と自信がついた。同時に、アメリカ人のような考え方やコミュニケーションが出来るようになってきた。

インターンから帰ってくると、友達に、「変わったね。自信があるみたいだよ。」と言われた。


5.カルチャー

2年生になり、次々にスーパースター達と会うことができた。グーグルのエリック・シュミット、インテルの創業者のアンディ・グローブ、ベリタスソフトウェアのファウンダーのマークレスリーといった面々とランチをし、素顔を見た。クラスメートには、ファッション大手のランバンのCEOといった面子がいた。いやでも彼らの考え方の影響を受けた。
「アントレプレナーになりたいのであれば、コンサルや投資銀行に行くことは薦めない。学生ローンを返したい気持ちは分かる。しかし、コンサルや投資銀行のカルチャーの影響を受けて、飛行機のファーストクラスになれてしまい、子供ができ、10年後、ベットの上で起き上がり、『スタンフォードにいたときにあんなにあった僕のアイディアはどこに行ったんだろうか』といつか思う日が来る。そうなってからでは引き返せない」(グロースベック教授)

「目の前にいくつも道がある。険しい道をみて、あなたは、『もっと実力がついてから、もっと貯蓄ができてから』その道に行こうと思う。しかし、今行かなければ、その道に行こうという日は、決して来ない」(サーチファンドのクラスの教授)
気がつくと、私もGSBのカルチャーに感化されていた。


6.挑戦

彼らの考え方に感化されるうちに、起業するとしたら、どういうアイディアであれば成功する可能性があるのかが分かるようになり、その後は、次々と新しいアイディアが浮かぶようになった。GSBの友達とビールを飲むと、ビールを飲み干すまでに、2つ3つはアイディアが思い浮かぶようになった。

成功するアイディアの基準の一例:
  1. ストラテジックインフレクションポイント(戦略転換点):このブログで何度も紹介したストラテジックインフレクションポイントでは、競争のルールが変化するので、リソースのないスタートアップにも勝機がある。コーナー(隅っこ)を見ることで、将来に対する自分なりのビジョンがあれば、いち早くストラテジックインフレクションポイントに気付ける。
  2. プロダクトとマーケットがフィットしていること:スタートアップはリソースがないので、マーケティングに大企業ほどガンガンお金を使うことは出来ない。本当に強力なPainをマーケットに発見し、このPainを解決するユニークなプロダクトを売ることでしか、大企業に勝って成功することは出来ない。
  3. フォーカス:スタートアップはリソースがないので、一点に集中して、その一点で大企業に勝って成功することしかできない。
そんなとき、もとベルラボの科学者と出会い、彼から紹介された技術で起業することにした。グアテマラや南アフリカで大きな世界を見たことも、アイディアを思いつく契機になった。

次々とビジネスプランコンペティションで優勝・準優勝し、一流の投資家から資金調達した。プレゼンの技術は、GSBのコーチや教授から習った。


7.人生の意味

私のスタートアップが成功するかは分からない。それでも挑戦できるのは、ビジネススクールで、カルチャーの影響を受け、人生の意味について考える機会を与えられたからだと思う。

私は、挑戦し続ける、ユニークな人生を歩みたい。自分なりの人生を、自分の価値観に従って、歩むことが出来れば、それがGSB流の「成功」なのだ。

最後のパーティで、卒業式で、周りのクラスメート達と気持ちを共有しているのを感じた。オーケストラの一員として演奏するときに、オーケストラ全体と気持ちを共有している感覚と同じだった。その「時が止まった瞬間」は一生忘れることは出来ない。

自分の夢に向かって挑戦し、学び続け、自分が属するコミュニティと気持ちを一つにすることが出来れば、自分の人生に後悔はないと思う。

GSBの卒業式で、Herb Allisonは、「GSBを卒業する今、君達にとって重要なのは、結果ではなく、自分の価値観・コンパスに従った人生を生きることができるかどうかだ」と述べていた。

人生の意味を教えてくれたGSBに感謝したい。

2011年2月27日日曜日

スピーチのお手本:Ebay元社長

スタンフォードビジネススクールの卒業生Jeff Scollのスピーチ。これはうまいです↓



1.文字をほぼ使わずに、グラフィックを多様したプレゼン資料
2.鮮やかな対比(ハリウッドとシリコンバレー)
3.ユーモア
4.ストーリー性
5.ドラマ(ガンの話など)
6.引用(Bet on People doing good things)
7.感情に訴えかけるクロージング

非常に参考になりました。

シリコンバレーでは、このビデオのように、シンプルで、短く、深い洞察力のあるストーリーが評価されます。日本人のように、複雑なロジックを評価する民族とは対象的です。

エッセイもこういう感じで書ければ(またインタビューもこういう感じで出来れば)、スタンフォードMBAの合格率があがると思います。

2010年1月6日水曜日

悪魔のベンチャーキャピタリストとのランチ

Stanfordの学生なら誰もが憧れる存在が立っていた。Vinod Khoslaだ。

「Y.I.と申します。」
「Vinod Khoslaだ。」

Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの学生から見ると、オバマと同じくらいヒーローのような存在。
たまに(1年に1度くらい)、教室をウォークインで訪れると、多くの学生達は、最初我が目を疑い、その後、「おー、コスラを見てしまった」という感じで緊張して固まってしまう。

そのKhoslaとランチをする機会に恵まれた。
色々質問してみた。

Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの卒業生(スタンフォードにはWaitlistから無理やり入学したといわれている)。卒業と同時に余り知られていない会社を立ち上げたが、2年くらい後に、Javaで有名なSun MicrosystemsのCo-Founder兼CEOになった。5年くらい後に、このブログでも紹介したKleiner Perkinsに入るためにSun Microsystemsを退職。以来、(やはりこのブログで紹介した)John Doerrと一緒に投資をしてきた。個人資産は、1000億円を超えると言われている(2007年頃のFortuneでは1200億円から1500億円くらいだったような。。。)。クリーンテクノロジーの投資家では、John Doerrと並ぶ巨匠として知られる。

Khoslaは、インド人で顔が黒く、いつも黒っぽい服を着ているので、「Devil(悪魔)」と呼ばれることもある。設立初期の段階でリスクをとって投資をする。そして、上手くいかないと分かると平気で切り捨てる(ファイナンスのリアルオプションの理論からすると当然か)。創業者のチームに対しても、取締役会のメンバーを決める前に、一人一人全員をインタビューして、「出来ない奴」がチームにいる場合には、先に切り捨てる。起業家に対して、ダメなところがあると、遠慮のない厳しく批判をする。そういったところも名前に反映されたのかもしれない。

会う前は、緊張したが、会ってみると、とても「いい人」だった。学校を案内して、
「クリーンテクノロジーに興味のある学生はGSBではどんどん増えています。いらして頂いたので、皆とても喜んでいます」
と言うと、嬉しそうにニコニコしていた。
どんなに厳しい人でも『学生』の前ではガードが下がるということだろうか。

Khoslaは、Kleiner Perkinsを2004年に退職した。その後は、超ハイリスクハイリターンをとることで知られる。このため、当初は、他の投資家から資金を集めて投資するという普通のベンチャーキャピタルのモデルを捨てて、個人で投資をしていたほどだ(その後、クリーンテクノロジーは、とてもCapital Intensiveなので、他の投資家から資金を集めて、投資家の好みに対応したファンドを設立することにした)。

なぜ、超ハイリスクハイリターンをとるのか。その理由は推測だが、恐らく、中国とインドのCO2の排出量の増加を見込んでだろう。例えば、近い将来、中国のCO2の排出量は、現在の全世界のCO2の排出量を上回ると言われている。これだけ物凄い速度でCO2の排出が出ているときに、ちょっとやそっとCO2の排出量を減らす対策をしても全く追いつかないと考えたのだろう。「根本的な解決ができるのは、本当に物凄い技術だけだ」そう考えて超ハイリスクハイリターン戦略をとっているのだと思う。それは、"$0billion and $0million are different."とか「カネを失うのは全くかまわない。だが、成功したときには、見合わないとダメだ」とか「クリーンテクノロジーは、Cindia Effect(中国とインドのCO2排出)を考えたときに意味をなさないとダメだ」という彼の言葉にもあらわれている。

とりあえず、話した内容を以下にまとめてみた。(ランチで聞いた内容と彼の講演の内容が混ざっている)
非常にシンプルで、聞いていると「そうか」と思うのだが、普通はなかなかこういう風には考えられないと思った。

Y.I.「投資の戦略と起業家の戦略のAlignmentはどう考えるのか。技術の莫大なリスクをとるのであれば、成功したときのアップサイドが大きくなるから、リターンは莫大になるだろう。であれば、ビジネス面では、アメリカ人には難しいモノづくりを自分でするのではなく、ライセンスやアウトソースをする等、もっと手堅い戦略をとりたいと考える起業家もいそうだ。それでも個人で数百億円儲けられるのであれば、何もそれ以上ビジネスリスクをとって数千億円を目指さなくても良いと考えるのは自然だと思う。しかし、あなたの投資の戦略では、これを許さないのでは?」
Khosla「技術のリスクをとるということは、必然的にビジネスのリスクは低くなる。今までより技術が圧倒的に優れているときには、マーケットシェアをとるのは難しくない。モノづくりをできる人はゴロゴロ転がっている。教わればいい。ちょっとの時間の問題だ。ライセンスをしている企業は、ポートフォリオにもある。」

Khosla「専門家に頼むととても精密なモデルを使って将来を予測する。だが、精密なモデルの前提は、ダーツの放り投げだ。だから、専門家は間違う。専門家の言う『答え』は当てにならない。だが、専門家の指摘する『問題』は重要だ」

Khosla「専門家のいうことを聞いたとしよう。そうすると、結局、平均点しかとれない(注:他の人と同じことをすることになるので)。平均点に勝つためには、専門家とは違うように考えないといけない」

Khoslaは、ビジネスプランを精査して、デューディリジェンスをするのではなく、『起業家と夕食を食べて、投資を決定する』(傾向がある)と言われている。優れた技術があって、大きなマーケットがあれば、投資をするという印象があったとので、以下の質問をしてみた。

Y.I.「人がダメだったらどうするのか。投資をする前に人がダメだと思ったら投資しないか。物凄い技術で物凄いマーケットでも結論は同じか。MissionaryとMercenaryという基準も大事か。」

Khosla「人がダメなら投資はしない。その場合、物凄い技術は世の中に出てこないからだ。Mercenaryな会社には悩まされることがある。投資した後に気が付いたときには、人を変えるなど問題を解決する。解決できなければ株を売る」

Khosla「私はたくさん調べたうえで、直感に従って投資をする。新しく世の中に出た科学論文は全部読んでいる。技術が、我々の力をもってすれば、3年以内にモノになるか、イノベーションのサイクルを加速できるか、他の人が考えていないようなことか、そういう点に注目しているんだ」

Khosla「『すべてのものが、クリーンに作り直される』本当にそう信じているんだ。家も、もっとクリーンな素材でつくられるだろう(注:彼はCaleraというCO2をCaptureして製造されるセメントの会社に投資した)。このプラスチックのコップも、Renewableな素材でつくりなおされるだろう。このカーペットもそうだ。『すべてのものがクリーンに作り直される』これに賭けたわけだ。賭けが、間違っているかもしれない。だが、自分が、自分の専門とする技術とか強みに従って、賭けをしないのであれば、結局、平均点しかとれないんだ。」

なぜ、スタンフォードがCritical Analytical Thinkingという授業を創設したのか。Khoslaと話をしていて、その理由が分かる気がした。

情報化社会では、「情報をとってくるものが勝つのではない。情報をとってきた人は、平均点で、とって来た情報に対して『Critical Analytical Thinkingと(直感に従った)賭けをし、賭けに勝った人』が本当の勝者なんだ」
Khoslaはそう言っているような気がした。

2009年9月13日日曜日

Stanford GSBのスピーカー

以前ブログで、スタンフォード大学のiPOD、スタンフォードGSBのVideoについて御紹介させて頂きました。

このほかにスタンフォード大学では、毎週水曜日の午後4時30分から5時30分まで、
Entrepreneurial Thought Leaders Seminar
というスピーカーシリーズが開催されており、ウェブ上でも、聴講することができます。
http://etl.stanford.edu/

URLを御覧頂ければ分かるとおり、毎回物凄いクオリティのスピーカーです。

2009年2月28日土曜日

All Lives Have Equal Value

Bill & Melinda Gates FoundationのCEOであるJeff Raikes氏がお昼の講演に来校されました。

スタンフォードMBAでは、ほぼ毎日各界のリーダー・トップが学校を訪れ、講演、パネル、ディスカッション等をされ、学生は日々大きな刺激を受けています。

Jeff Raikes氏の講演は特に衝撃的でした。

氏の声の大きさ、響きは、聴衆の心を数秒でとらえました。

学生に対しては、農家の息子として生まれて何を学んだか、人生で一番大切だと思うことは何か、Appleでソフトウェアに対して情熱を感じるようになった経緯、マイクロソフトで学んだこと、といった氏自身のストーリーを語られました。

学生の間で、印象に残ったご発言をとりあげてみたいと思います。

「僕は、最初、農家のマネジメントを学びたくてスタンフォード大学に来た(来てみたらUndergraduateにはビジネススクールがなくて困られたそうです)。その後Appleでソフトウェアに情熱を感じるようになった。新しいソフトウェアを見せた時の人の顔の輝きに魅かれた。それで、マイクロソフトに転職することにした。スティーブバルマーは、文字とおりYellして口説いてきた。」

「昔僕は野球チームに所属していた。そのときのコーチは、今はメジャーリーグのあるチームで活躍している。彼と一晩話をしたことがある。僕は、『良いピッチャーを作り上げるのは何だと思うか』『良いキャッチャーを作り上げるのは何だと思うか』といった質問をたくさん彼に投げかけた。彼は、それぞれの質問に対して、『それは、3つの要素で、これとこれとこれだ』といったように非常にシンプルに応えていた。マジメントの本質がここにある。マジメントをする者は、シンプルな言葉で本質をとらえる必要がある。もちろん細かい枝葉の重要性を否定するわけではないが、シンプルな言葉でそれを伝えられないと人はついてこない」

「僕が、マクロソフトとゲイツファウンデーションで学んだ3つのことを教えよう。1つ目は、Work Balanceだ。どんな仕事にも面白い部分と面白くない部分がある。農家の息子として、僕は、このことを早く学び、面白くない仕事をしているときには、そのうち面白い仕事に変わる、と思えるようになった。ビジネススクールを卒業してすぐの学生は、何でも出来ると思っているので、面白くない仕事をしたときのストレスで失敗する人が多い。2つ目は、Prioritizationだ。君たちは、自分が何でも出来ると思っているだろう。そこで何にでも手を出してしまうと、結局最後は何もできない人になる。自分が最もパッションを感じるもので、世の中にValueを生み出せるものを見つけて、それを徹底的に追及するべきだ。その際には、うまく戦略をたてて、Prioritizationをしながら行動すべきだ。3つ目は、Work Life Balanceだ。仕事のほかに、ボランティア・家庭・レジャーは、とても大切だ。自分の中でPrioritizationをしつつ、Work Life Balanceをすべきだ。それが、長い目で見たときの成功につながると思う」

非常に分かりやすく、本質をついた講演でしたので、終了時には拍手喝采でした。

2009年1月24日土曜日

Stanford MBA: エキサイティングな日々は続く

スタンフォードMBAでは、エキサイティングな日々が続いています。

毎日のように、JPモルガンチェースのCEO、ムシャラフ大統領、グーグルのCEO(エリックシュミット氏)、クライナーパーキンスのパートナーといった大物が学校を訪問し、学生は、何でも質問できます。日本では、Opportunityを探して走り回っていましたが、こちらでは、Opportunityに日々exposureされ、選択を迫られている感じです。

JPモルガンチェースのCEOであるDimon氏は、おそらく数年間に渡る世界大恐慌が起こると思われているのかもしれないという印象を受けました(はっきりとは言及されませんでしたので、御本心は不明ですが)。
http://www.gsb.stanford.edu/news/headlines/Dimon09.html

ムシャラフ大統領は、核兵器問題といった挑発的な質問に対して、冷静に回答されているのが印象的でした。

クライナーパーキンスのパートナーは、「君たちが質問してくれたら、それをベースに今日の講演をしよう」という発言から始まり、学生の質問に対して、鋭い視点で応答してくれました。例えば、「オバマの政策がクリーンテクノロジーの発展に与える影響についてどう思うか」という質問に対し、(普通の講演者ですと投資の額、2050年までの達成目標といった視点で回答するところ)「オバマのチームとは何度も議論をしたが、非常に優秀な人達で感銘を受けている。彼らは、少なくとも自分たちが何をしているか知っている。実際の政策はSupplyとDemandに分けて考えると考えやすい。Supplyの面では、Capital Constraintに対する刺激が必要だが、一つの方策として、クリーンテクノロジーに関するプロジェクトファイナンスに対するLoan Guaranteeプログラムが見直されている。Demandについては、Tax Incentiveプログラムは、この状況ではIncentiveとして機能しないと考えれており、Subsidizeがされることになる」といった趣旨の回答をされていました(内容を要約しております)。 また、「クリーンテクノロジーはバブルではないか」という質問に対して、現在の状況がバブルかどうかを判断する一つの手法(注:VCの投資額の合計をグラフにして分析するという手法)について言及したうえで、「クリーンテクノロジーには数か月前には、VC以外も大きく投資をしており、彼らは、私の感覚からすると、ありえない投資の仕方をしていた。ランダムに投資していたといって良いほどだった。今回のクライシスで、そういった投資家の多くは蒸発してしまい、投資の額の全体をみても、今の状況はバブルではない」と回答されていました。

友人の数も圧倒的に増え、日々お互いに情報をシェアし合っており、刺激的な毎日です。新しいアイディアを思いついた場合、探すとその分野のエキスパートがクラスメートに見つかり、すぐにランチができます。先日もE-bayやFacebookに関連するアイディアを思いついたので、クラスメートと話していたところ、「僕はスペインでFacebookに似ているビジネスを起業したファウンダーなんだけれど、スペインでは、Facebookを(ユーザー数などで)リードしている。さっきの話だけれど、マーケットも大きいし、見逃されているポイントだと思う。もちろん難しい点はあるけれど、こういうときには、少なくともビジネスプランは書くべきだよ。僕も役に立てると思う。是非ランチしよう」という話になりました。今の自分のアイディアの良し悪しはともかくとして、こういった形で友人達と日々学び合えるのは大きな刺激になっています。Collaborativeなカルチャーの強みを実感してます。

2008年11月8日土曜日

課外活動が始まる

スタンフォードMBAでは、はじめの6週間は、学業に専念させるポリシーをとっており、この間学生が課外活動等をすることは禁止されています。

中間試験の終了とともに、6週間が終わると、一気に課外活動が始まりました。毎日ほぼ必ずCEO、アントレプレナー、VC等の卒業生がキャンパスを訪れて学生に経験を語られます。私自身も中間試験終了後今までほぼ毎日上記の卒業生の方々(多い日には一日約10人)にお会いして多くを学ぶことができています。

私にとっては、クリーンテクノロジーやバイオテクノロジーのVCの方々にお会いして業界の様子が分かってきたことや、アントレプレナーの方々の経験を伺い、アイディアの詰め方、チームの選び方のプロセス等を伺うことができたのは興味深い経験でした。

アントレプレナーの方々は、家庭用ソーラーパネルの販売、ダイヤモンドの販売、ITを利用した新しい教育システム等々個性的なビジネスでどれも興味深かったのですが、特に面白いと感じたビジネスとしては、レインフォレストアライアンスなる企業がありました。この企業は、発展途上国の農家の方々にコンサルをして、森林の焼却によって畑を作る旧来のビジネスを変化させて、より自然に優しく効率的な農業の方法を指導するとともに、当該農家の方々のプロダクトを利用し、かつ、トレーサビリティのある大企業の製品にサーティフィケートを発行します。大企業(スターバックスなど)にとっては、CSRをプロモーションでき、農家の方々にとっては、効率の良いビジネスをすることができるとともに大企業とビジネスをすることができ、かつ、地球環境に優しい(農業は、大地の約3割を占めているので重要です)ので、ウィンウィンのシチュエーションを構築できます。この企業は、サーティフィケートを利用する大企業から商標利用のライセンス料を取得していないのですが、料金をとってビジネスを拡大するとともにブランドを確立するのに利用した方が良い(ブランドがあるほど大企業にとってサーティフィケートを利用するインセンティブができると思いましたので)のではないか質問したところ、余り考えられていないようでした。その他には、クリーンテクノロジーのアントレプレナーの方が、グロースベック教授のケースライターだったことが、サーチファンドや起業の際に、いかに役にたったのか語られれているのが印象的でした(例えば、投資家と会うときにも、ケースを書いていたので、シリコンバレーの各起業家の逸話を語るところから話を始めることができ、印象を残すことができたのが大きかったそうです)。卒業生の方々は、CEO等の高いポジションにあるのにかかわらず、非常に親切かつ懇切丁寧に学生に対応して下さり、大変勉強になります。

英語漬けになっているので、ブログの日本語の文法が変で冗長な気がしますが、御容赦下さい。

2008年10月5日日曜日

スティーブ・バルマー(マイクロソフトCEO)講演

学校が始まって10日後、早速第一回目の講演がありました。
スティーブ・バルマー氏の講演です。
http://videogsb.stanford.edu/

上記URLで聴講可能です。私にとって、最も興味深かったのは、

ビルゲイツに説得されてスタンフォードGSBを辞めて起業した際、すべての家庭にPCを置くというビジョンを持たれていた。しかし、その後、しばらくの間は、ひどい生活が続いた。

と話されていたことです。

ビジョンの大切さとチャンスを感じたときには、現在のポジションに固執せずに取りにいくことが大切であることを学びました。

2008年9月4日木曜日

Stanford MBAの大先輩から学ぶ (2) 有名な起業家

地獄のように厳しいと言われている授業が始まる前に少しでも楽しもうと、最近は今年Stanford MBAに留学する日本人3人組で行動することが多いです(ビジネス、行政、法律とバックグラウンドも違うからか話をしていても楽しいのです)。

昨日も、シリコンバレーの日本人で最も有名な起業家のうちの一人に3人組でお会いしてきました。

特に印象に残ったのは、

「目的をもって、計画を練って、こうやってこうやったらこうなる、という風には私は生きてきませんでした。そのときそのときの波にのって、ただし、チャンスがきたら『さっと取る』ことが大切。他の人も行動していますから、迷って考えて、ゆっくりしているとチャンスは逃げてしまいます」

という趣旨の教えでした。

「手に入らないものは手に入らないのだし、手に入るもののなからその場その場でベストなものを選択する」ともおしゃっていました。

あまり肩に力を入れすぎると波にうまくのれないということなのでしょうか。その場その場で将来の自分の理想像はイメージするものの、それに固執し過ぎないということなのでしょうか。

その他に特に印象に残ったのは、以下の趣旨のやりとりでした。

「専門外の技術が難しくてビジネスに支障が出るのかというとそんなことはない。技術の本当にディープな部分は、難しいのかもしれないが、私のビジネスに必要な、例えば、どの企業がどのような技術を持っているのか、といったことは簡単に学べる。」

「ネットワーキングとか、『凄い人』に会うのに重要なのは、その人に会う理由を明確に説明すること。誰かからの紹介というのは、その次にくる。それから、良くネットワーキングでビジネスができると勘違いする人がいるが、そのようなことは決してない。」

(なぜそんなに引出しが広いのか、ニュースを大量に読んでいるのかという学生の質問に対して)「新聞や雑誌をそれほど読んでいるわけではない。隅から隅まで読むのではなくて見出しを読む程度ですませてしまう部分も多いし。むしろ、興味をもったニュースなり情報なりについて、過去の情報にさかのぼるなど、さらに深く調べていく過程で情報が入ってきているように思う。」

「アメリカのサービスに閉口することがあるという人がいるが、むしろ世界の中で日本だけがあさっての方向を向いてサービスを頑張っているのではないか。私には日本のサービスよりもアメリカのサービスの方があっている。」「日本人は黙っているから分からないこともあるのだが、アメリカでは主張すると結構よいサービスが手に入ることもある。例えば、買ったものを簡単に返品できるというのも、ある意味でアメリカの良いサービスの一つと言えるかもしれない」(日本のようなsilent conversationで良いサービスが手に入ることを、グローバル化の中で世界中の国々に期待するのは、そもそも無理なのかもしれない、などと考えました)

2008年8月15日金曜日

Stanford MBA の大先輩から学ぶ(1) 有名なベンチャーキャピタリスト

スタンフォードMBAの大きなメリットの一つとして、在校生・卒業生の強いネットワークがあると思います。普通では絶対に会えない卒業生に会ってお話を伺えることがありますし、在校生の間にはお互いに助け合うカルチャーがあります(例えば、最近ゴルフを始めましたが、プロのレッスンよりも数々の友人からの指導の方が効果的です)。

本日は、シリコンバレーの有名なベンチャーキャピタリストのご自宅に伺い、貴重な指導を頂くことができました。特に印象に残ったのは以下の点です。

Q:数々のアントレプレナーをご覧になられていて、成功する人としない人の差を感じられることがあるのでしょうか。
A:「ブリンク」という表現があるのですが、意外と最初の数分の印象で投資の有無を決めてしまうことがあります。プレゼンテーションをさせて、その後廊下で仲間と話して結構決めてしまうことが多いのです。もちろん、その後のDDでちょんぼして失敗してしまうベンチャーもありますが。

Q:スタンフォードMBAの授業で役に立ったもの、あるいは、取っておけば良かったものはありますでしょうか。
A:今は昔と違いますが、リーダーシップを学校で教えられるかという実験をビジネススクールはしています。私は、リーダーシップはある程度学校でも教えられると思っている。また、海外に行く授業もあると思うので、インドか中国に行くと良いと思います。それから、シリコンバレーの人がするレクチャーは結構面白いと思います。例えば、昔は、IPOする前のアップルのスティーブジョブズが来て、皆でランチをする機会があり、学生が数人その後に就職していました。後は大体テクニカルな授業ですからね。

Q:良いアイディアを産み出す条件としては、何があると思われますか。例えば、Googleのようなアイディアが産まれてくる土台には何があるのでしょうか。
A:Googleも趣味でやっていたようなもので、そこから大量にハードディスクを購入してビジネスにしていった。サンマイクロシステムにからんだ男が「めんどくさいなぁ」と思いながらそれを見に行って投資をした後で、クライナーパーキンスとセコイアが「じゃー俺も」ということで投資をしたので成功したという面がある。ビジネス自体をみても誰も彼らの検索が大きなビジネスになるとは思っていなかったと思うので、興味があることをやっていったら、それが当たってしまった、という面が大きいと思う。以上のような意味では、運が左右する要素の方が大きいと思う。

Q:最初に参画された会社(注:当時はスタートアップで、現在は業界のリーダー)を選ばれた経緯を教えて頂けないでしょうか。
A:スタンフォードMBAの2年間、Bay Areaに住んでいて、こちらに住みたいと思った。私の興味のあるインダストリーで、Fortuneに載っている会社はBay Areaでは2社だった。その2社に手紙を出して、1社からだけ返事がきたので、そこに行った。

Q:インターンシップのご経験についても教えて頂けないでしょうか。
A:私は、当時、●社という従業員5、600人の会社で働いてみた。当時は「つぶれるのでは?」という噂もあったが、気にせず楽しく働いた。その後有名なベンチャーキャピタリストが入って立て直し、今では従業員5,6万人の超有名企業になった。

私の方は、ビジネススクールでの2年間を最大に活かしたいと考えて、「どうすれば成功するのか」という種の質問をたくさんしてしまいましたが、大先輩は「こうすれば、こうなる」とか「こうすれば成功する」というものは存在せず、興味のある方向に向かって一生懸命やってみるのが重要である、というメッセージを伝えたかったのではないかという感じています。

その他、私の興味のあるインダストリーの先行きは厳しく、その分野の専門知識があることが望ましいと言われたことが印象的でした。あまり現在のキャリアゴールに固執せず、せっかくのStanford MBAでの経験を柔軟に活かすことが重要であるという趣旨だと感じました。