Stanfordの学生なら誰もが憧れる存在が立っていた。Vinod Khoslaだ。
「Y.I.と申します。」
「Vinod Khoslaだ。」
Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの学生から見ると、オバマと同じくらいヒーローのような存在。
たまに(1年に1度くらい)、教室をウォークインで訪れると、多くの学生達は、最初我が目を疑い、その後、「おー、コスラを見てしまった」という感じで緊張して固まってしまう。
そのKhoslaとランチをする機会に恵まれた。
色々質問してみた。
Vinod Khoslaは、スタンフォードビジネススクールの卒業生(スタンフォードにはWaitlistから無理やり入学したといわれている)。卒業と同時に余り知られていない会社を立ち上げたが、2年くらい後に、Javaで有名なSun MicrosystemsのCo-Founder兼CEOになった。5年くらい後に、このブログでも紹介したKleiner Perkinsに入るためにSun Microsystemsを退職。以来、(やはりこのブログで紹介した)John Doerrと一緒に投資をしてきた。個人資産は、1000億円を超えると言われている(2007年頃のFortuneでは1200億円から1500億円くらいだったような。。。)。クリーンテクノロジーの投資家では、John Doerrと並ぶ巨匠として知られる。
Khoslaは、インド人で顔が黒く、いつも黒っぽい服を着ているので、「Devil(悪魔)」と呼ばれることもある。設立初期の段階でリスクをとって投資をする。そして、上手くいかないと分かると平気で切り捨てる(ファイナンスのリアルオプションの理論からすると当然か)。創業者のチームに対しても、取締役会のメンバーを決める前に、一人一人全員をインタビューして、「出来ない奴」がチームにいる場合には、先に切り捨てる。起業家に対して、ダメなところがあると、遠慮のない厳しく批判をする。そういったところも名前に反映されたのかもしれない。
会う前は、緊張したが、会ってみると、とても「いい人」だった。学校を案内して、
「クリーンテクノロジーに興味のある学生はGSBではどんどん増えています。いらして頂いたので、皆とても喜んでいます」
と言うと、嬉しそうにニコニコしていた。
どんなに厳しい人でも『学生』の前ではガードが下がるということだろうか。
Khoslaは、Kleiner Perkinsを2004年に退職した。その後は、超ハイリスクハイリターンをとることで知られる。このため、当初は、他の投資家から資金を集めて投資するという普通のベンチャーキャピタルのモデルを捨てて、個人で投資をしていたほどだ(その後、クリーンテクノロジーは、とてもCapital Intensiveなので、他の投資家から資金を集めて、投資家の好みに対応したファンドを設立することにした)。
なぜ、超ハイリスクハイリターンをとるのか。その理由は推測だが、恐らく、中国とインドのCO2の排出量の増加を見込んでだろう。例えば、近い将来、中国のCO2の排出量は、現在の全世界のCO2の排出量を上回ると言われている。これだけ物凄い速度でCO2の排出が出ているときに、ちょっとやそっとCO2の排出量を減らす対策をしても全く追いつかないと考えたのだろう。「根本的な解決ができるのは、本当に物凄い技術だけだ」そう考えて超ハイリスクハイリターン戦略をとっているのだと思う。それは、"$0billion and $0million are different."とか「カネを失うのは全くかまわない。だが、成功したときには、見合わないとダメだ」とか「クリーンテクノロジーは、Cindia Effect(中国とインドのCO2排出)を考えたときに意味をなさないとダメだ」という彼の言葉にもあらわれている。
とりあえず、話した内容を以下にまとめてみた。(ランチで聞いた内容と彼の講演の内容が混ざっている)
非常にシンプルで、聞いていると「そうか」と思うのだが、普通はなかなかこういう風には考えられないと思った。
Y.I.「投資の戦略と起業家の戦略のAlignmentはどう考えるのか。技術の莫大なリスクをとるのであれば、成功したときのアップサイドが大きくなるから、リターンは莫大になるだろう。であれば、ビジネス面では、アメリカ人には難しいモノづくりを自分でするのではなく、ライセンスやアウトソースをする等、もっと手堅い戦略をとりたいと考える起業家もいそうだ。それでも個人で数百億円儲けられるのであれば、何もそれ以上ビジネスリスクをとって数千億円を目指さなくても良いと考えるのは自然だと思う。しかし、あなたの投資の戦略では、これを許さないのでは?」
Khosla「技術のリスクをとるということは、必然的にビジネスのリスクは低くなる。今までより技術が圧倒的に優れているときには、マーケットシェアをとるのは難しくない。モノづくりをできる人はゴロゴロ転がっている。教わればいい。ちょっとの時間の問題だ。ライセンスをしている企業は、ポートフォリオにもある。」
Khosla「専門家に頼むととても精密なモデルを使って将来を予測する。だが、精密なモデルの前提は、ダーツの放り投げだ。だから、専門家は間違う。専門家の言う『答え』は当てにならない。だが、専門家の指摘する『問題』は重要だ」
Khosla「専門家のいうことを聞いたとしよう。そうすると、結局、平均点しかとれない(注:他の人と同じことをすることになるので)。平均点に勝つためには、専門家とは違うように考えないといけない」
Khoslaは、ビジネスプランを精査して、デューディリジェンスをするのではなく、『起業家と夕食を食べて、投資を決定する』(傾向がある)と言われている。優れた技術があって、大きなマーケットがあれば、投資をするという印象があったとので、以下の質問をしてみた。
Y.I.「人がダメだったらどうするのか。投資をする前に人がダメだと思ったら投資しないか。物凄い技術で物凄いマーケットでも結論は同じか。MissionaryとMercenaryという基準も大事か。」
Khosla「人がダメなら投資はしない。その場合、物凄い技術は世の中に出てこないからだ。Mercenaryな会社には悩まされることがある。投資した後に気が付いたときには、人を変えるなど問題を解決する。解決できなければ株を売る」
Khosla「私はたくさん調べたうえで、直感に従って投資をする。新しく世の中に出た科学論文は全部読んでいる。技術が、我々の力をもってすれば、3年以内にモノになるか、イノベーションのサイクルを加速できるか、他の人が考えていないようなことか、そういう点に注目しているんだ」
Khosla「『すべてのものが、クリーンに作り直される』本当にそう信じているんだ。家も、もっとクリーンな素材でつくられるだろう(注:彼はCaleraというCO2をCaptureして製造されるセメントの会社に投資した)。このプラスチックのコップも、Renewableな素材でつくりなおされるだろう。このカーペットもそうだ。『すべてのものがクリーンに作り直される』これに賭けたわけだ。賭けが、間違っているかもしれない。だが、自分が、自分の専門とする技術とか強みに従って、賭けをしないのであれば、結局、平均点しかとれないんだ。」
なぜ、スタンフォードがCritical Analytical Thinkingという授業を創設したのか。Khoslaと話をしていて、その理由が分かる気がした。
情報化社会では、「情報をとってくるものが勝つのではない。情報をとってきた人は、平均点で、とって来た情報に対して『Critical Analytical Thinkingと(直感に従った)賭けをし、賭けに勝った人』が本当の勝者なんだ」
Khoslaはそう言っているような気がした。
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