2009年7月31日金曜日

プリウスと自然

クラスメートのご両親と夕食をご一緒しました。
人生の目的のような会話をした後、プリウスの話になりました。「プリウスは、私の運転の仕方を完全に変えた。上手に運転したときには、最大で、1回の給油で1400マイル(!)走った。」

1400マイル本当に一回の給油で走れるのか不明です(空気抵抗と転がり抵抗によるエネルギー損失だけは、どれだけ上手く運転しても回生できませんので)が、プリウスのように「どれだけエネルギーを利用したか」というフィードバックをすぐに与えることが、人の行動に影響を与える(例:よりエネルギー消費の少ない運転をするようになる)ことはよく知られており、これがスマートメータなどのアイディアの根本にもあります。

アナロジーをしてみると、人が環境破壊をやめるには、環境破壊によって、自分がどれだけ損をしたかというフィードバックがすぐに得られることが必要な気がします。

このためには、
・まず、ある人が、環境破壊行為をしたことが、その人の損につながる
・次に、損をしたということが、その人にすぐに分かる
ことが必要になるような気がします。

単純な例を考えて見ますと、森林の焼却の例で考えてみると、森林を焼却しなければ、森林で生み出される薬・観光ビジネスなどで、森林保有者は儲けられます。森林を焼却して畑にしてしまうと上記の儲けがなくなってしまいます。

環境について、さまざまな利用形態によるバリュエーション(どういうビジネスが可能で、そこからどれだけキャッシュがうまれるか)をして、そのうえで、それをコミュニケートできないでしょうか。

さらに、環境にとどまらず、特許権など、もっと色々なものもバリュエーションできると面白そうです。

いずれも、利用の形態によって、バリュエーションが異なる(単一のバリュエーションはない)ことに注意する必要がありそうです。

インターネット等を使ってできないでしょうか。。。

2009年7月27日月曜日

Stanford GSB授業 ジャッジメント:行動組織学2

行動組織学の第2回目の授業では、「人は見かけによらない」ということを学びました。

インタビューのときでも、ベンチャーキャピタリストに対するピッチのときでも、人は、他人を、スナップショットで判断してしまっているようです。そして、そのような判断には、バイアスがかかっていることが多いようです。


どうやら、私達が、他人を判断するときには、以下のようなバイアスがかかっていないかどうか注意すべきようです。

エゴセントリズム:チームの中での自分の貢献を過大に評価する結果として、他のチームメートの貢献を過少に評価してしまう

ファンダメンタル・アトリビューション・エラー:環境や状況に起因する事象を、個人のパーソナリティや行動に起因すると勘違いしてしまう

コントラスト・エフェクト:対象の属する集団との比較で、対象を判断してしまう(ある国でトップだったスポーツ選手が、別の国では目立たないなど)

ハロー・エフェクト:ある人の普段の評価が、特定の行動の評価に影響すること(例:いつも成績が良い学生は、ある日たまたま授業態度が悪くても、教授が気が付かない)


自分に似ているか(Similar to Me):自分に似ている人の評価は甘くなる(例:オーケストラのオーディションをカーテン越しに行ったところ、女性の採用率が圧倒的に高くなった実験)

セルフ・フルフィリング・プロフェシー:対象に対する先入観を基にして、人の対象に対する接し方が決まる。そのように接しられた対象は、予想された通りに行動してしまう。その結果、益々、先入観が裏付けられてしまう。そして、その連鎖に陥る。(自分で作った例:ジャイアンは、のびたが、かつあげに応じると予想しているので、のびたに、かつあげをする。のびたは、そのようなジャイアンの行動に対して、ジャイアンの予想のとおりに対応する。ジャイアンは、自分のもともとの予想が裏付けられるので、ますますのびたにかつあげをするようになる。そして、その連鎖に陥る)

そうすると、例えば、就職後は、最初の2ヶ月が、もっとも重要ということになるらしいです。この期間に、先入観が固まり、また、その後は、セルフ・フルフィリング・プロフェシーで物事が進んでいくそうです(最初の先入観をもとにして、その人に対する上司の接し方が決まる)。

ハロー・エフェクトやセルフ・フルフィリング・プロフェシーは、弁護士も結構気にしています。負け筋の裁判を頼まれて、「お金も余りないのだが、やるだけやってみたい。この金額で出来る範囲で戦って欲しい」と言われても、下手な訴訟遂行をすると、(弁護過誤で訴えられるリスクも勿論ありますが)裁判所から、「この弁護士は駄目だな」と思われて、その後、別の事件を持っていっても戦いにくくなることが多いようです。逆に、裁判所に、「この弁護士は凄い」と思わせると、その後別の訴訟でも色々と戦いやすいようです。

では、他の人を正しく判断するには、どうしたらよいのでしょうか。
一つは、以下のステップを踏んで、環境に起因する事象と個人に起因する事象を分けることが重要なようです。
ステップ1:同じ状況で、他の人だったら、どのように行動するか。
ステップ2:この人は、いままで、同じような状況で、どのような行動をしてきたか。
ステップ3:この人は、違う状況では、どのような行動をしたか。

逆に、他の人に、自分を正しく判断してもらうには、どうしたらよいのでしょうか。
・自分の置かれている状況を相手にきちんと説明する。
・自分が相手にどう評価されているかを知り、それに対応した行動をとる。評価が間違っている場合には、修正されるような事実を持っていく。
・自分自身のことを良く知る。これは、自分で考え込んでしまうのではなく、他の人との会話の中から、自分が他の人にどう写っているのかを、みつけていく。

最後の点は、ビジネススクールでは、結構問題になることがあります。
ある日のこと。
プロジェクトのテーマを決めるデッドラインが迫っているので、私は、アメリカ人の学生に、土日に、
「早くしようぜ」とメールを送り、電話もかけまくっていました。
しかし、それでも、アメリカ人の学生とは連絡がつきません。
そこで、「あと3時間で返信くれなければ、とりあえず仮決めということでテーマを提出するけど、嫌だったら後で変更できるからね」とメールを一本入れて、他のチームメート全員のコンセンサスをとったうえで、プロジェクトのテーマを提出しました(注:早く提出すれば提出する程、有利になるプロジェクトだった)。
ところが、アメリカ人の学生が、「もう一緒にやっていられないから他のチームにいく」と激怒しました。

このときには、自分たちの置かれていた状況を良く説明して、また、日本とアメリカとの土日の仕事の考え方に対する文化の違いを説明して、相手に納得してもらいました。そして、「自分自身について知ることがGSBでの学習のGoalの一つ何だ」と説明して、相手に対して、私の行動について、どう感じたのかをインタビューしました。1週間くらいで、すっかり仲直りしましたが、自分自身についてよく知り、また、このクラスで学んだことを実践するうえで、良い勉強になりました。

スタンフォードGSB:クラブ活動

スタンフォードGSBは、クラスのサイズが小さいこともあり、比較的簡単にクラブ活動で幹事をすることができます。
例えば、私の代では、クラスメートの日本人3人(日本人は3人しかいない)は、いずれもスタンフォード日本人会幹事になっています。また、私はクラブが好きなので、以下の幹事もしています。
Environmentally Sustainable Business Club
Asian Society Club
Berkeley Stanford Cleantech Conference

幹事をすると、忙しくはなるのですが、色々な人と会う機会が増え、人との出会いから勉強する機会も増えます。ですので、これから留学される方は、是非、何かのクラブ活動の幹事をされることをお勧めいたします。

Stanford GSBで学習した人間行動のバイアス(行動組織学1)

スタンフォードGSBでは、秋学期に、行動組織学の授業を聴講することになります。
最初の授業では、人間の行動や考え方のバイアスについて学びました。

授業は、レースに出場するか否か迷うレーサーの逸話から始まります。
レースに出て、事故が起きると、スポンサーがつかなくなり、今までのすべてが台無しになってしまいます。
一方で、レースに出ない場合には、大口のスポンサーが離れて、財政的に窮地に立ってしまいます。
エンジニアからは、「寒い日には(マシンが壊れやすいので)レースに出ない方が良い」と不吉なアドバイスをもらいますが、今まで事故が起きた日のデータを見てみると、寒い日にも暖かい日にも均等に事故が起きています。
レースの日は、氷点下の温度。
このような状況で、レーサーはレースに出場すべきなのでしょうか。



意思決定をする際に、バイアスがないか判断する際には、いくつかポイントがあるようです。
・サンプルのとり方にバイアスはないか。(事故が起きた日だけではなく、事故が起きていない日の温度のデータもみるべきではないか)
・コンファメーションバイアスはないか。(自分の頭の中で答えが出来上がっていて、答えを裏付けるデータだけを探していて、答えを否定するデータは頭が拒否していないか)
・フレーミングバイアスはないか。(人間、「リスクをとらないと100%損をしますよ」と言われた場合と、「今の状況なら確実にちょっとだけお金をもらえます。リスクをとれば、もっともうけられるかもしれません。」と言われた場合では、同じ状況でも違う意思決定をしがちなようです)
・社会的な地位(上下関係)によるバイアスはないか。(ボスだから良く知っているはずだ、というバイアス)
・ アベイラビリティーバイアスはないか。(頭の中でイメージしやすい状況の方が、正しいものに思える。「シンプルでないから間違っているはずだ」などと考えるバイアス)
・デフォルトバイアスはないか。(例えば、チャレンジャー号の事故の際には、NASAは、意思決定の前に、打ち上げを公式に発表してコミットしてしまっていました)
・コミットメントがエスカレーションしていないか。(少しづつ、コミットメントする量が増してしまい、最後は、大きなコミットメントをしてしまう。)

仕事でも、裁判では、結構、利用します。
例えば、弁護士の間では、「裁判官には心証の雪崩といわれる現象がある」と言われています。裁判官が一定以上結論について印象を抱く(「どうもこっちの言っていることの方が正しそうだぞ」)と、その後形成が逆転することは殆どないという意味です(コンファメーションバイアス)。
また、裁判では、短くて分かりやすい書面が書けなければ、負けであると言われています(アベイラビリティバイアス)。

そういえば、友人(といってもかなり年上)から頼まれて、彼が起業したスタートアップのアドバイスをちょこちょこしているのですが、少しづつコミットメントの量が増してきてしまい、ついにウェブサイトに載せられてしまいました。
http://hbcmediainc.com/company/
これもコミットメントがエスカレーションする一例かもしれません。

2009年7月26日日曜日

Stanford GSB合格法:何があなたに一番大切ですか

今、米国のスタートアップでインターンをしているのですが、スタンフォードビジネススクールで勉強しているときに比べて、相対的に余裕があります。
空いた時間について、メールを処理したり、教科書を読んだり、クリーンテクノロジーの本を読んだりと「有意義」だと思えることに費やしていると、安心します。

しかし、ときに、「自分の人生、これで良いのだろうか」と疑問も感じます。

映画、『不都合な真実』では、息子の交通事故に遭遇して、「人生をどう過ごすべきか」をあらためて考え、物事に優先順位をつけるようになったというシーンが登場します。

スタンフォードGSBの有名なエッセイ、「何があなたにとって一番大切ですか」及び「なぜスタンフォードGSBに入学したいのですか」も、結局、そういうことを聞きたいのだと思うようになりました。

恐らく、(前回のブログに登場した)矢野さんの場合には、(勝手な推測ですが)埋もれているアーティストが世界に自分を発表する場を作りたい、ということになるのだと思います。グーグルの創業者の場合には、恐らく、世界中の情報を検索できるようにしたい。南アフリカで見た人々の場合には、人種の差がない世の中、自由な世の中。

スタンフォードGSBのクラスメートの中には、「自分にとって一番大切なことは、すべてのアメリカ人に平等な教育の機会を与えるという目的に向かって生きることだ」という友人もいました。別の友人は、「途上国の人の生活を向上させたい」とキューバで人権活動をしたそうです。

人のことを書くのは簡単ですが、自分がどうなのか考え出すと、急に難しくなって来ます。

エッセイには、人と心と心で意思疎通して、人の役に立ちたい、と書き、それまでの人生でやってきたことを書きました。エッセイのときには、バイオテクノロジー、今は、クリーンテクノロジーに興味があります。シリコンバレーや今いるスタートアップで、いわゆる10倍テクノロジー(10倍以上の性能のテクノロジー)も見させてもらいました。

しかし、人生をかけても良いと感じるような、凄まじい情熱を感じるアイディアを探すのは大変です。

日本のアートを世界に〜起業家の情熱〜

ハーバードビジネススクールに留学中の友人の矢野さんが、この度、起業されました。
会社名は、ストリートキャンバス
会社のウェブサイトはこちら
矢野さんのブログはこちら

この間お会いしたとき、埋もれているアーティスト達が、お互いを高め合って、世界に自分のアートを発表できる場を作り出したいと熱く語られていました。

ウェブサイトからは、そんな矢野さんの情熱が伝わって来ました。

何を犠牲にしても絶対にやり遂げたいという強い情熱がないと出来ないと感じました。

スタンフォードGSBには、Evaluating Entrepreneurship Opportunity (S356)という人気の授業があります。チームを組んで、ビジネスプランを書くコース。起業に至るチームも毎年あります。それぞれのチームに、クライナーパーキンス(世界トップのVCの一つで、グーグルやアップルなども育ててきたVC)などの世界トップクラスのビジネスパーソンが、メンターにつきます。

10ヶ月前に、このコースの説明会に出席したとき、クライナーパーキンスのパートナーが、起業に向けてのステップを解説していました。ステップ1は、自分が情熱を感じるアイディアを探すことでした。この段階では、マーケットのサイズなど基本的な分析でさえ必要ない、と話していました。

このときには、「どんな仕事でも一生懸命やろうと思えばやれるのだし」と思ったので、彼の本当の意図は分かりませんでした。

しかし、矢野さんのサイトを見ていて、「こういうことだったのか」と分かりました。

皆さん、是非、応援してあげてください!

2009年7月25日土曜日

2009年7月12日日曜日

Stanford MBA: Business Plan

スタンフォードMBAは、General Managementの学校ですが、Entrepreneurshipには取り分け強いことは有名です。
学生の間で出回っているセコイアキャピタル(注:世界トップのVCの一つ)のビジネスプランのテンプレート(下記参照)は、コンパクトにまとまっていて勉強になりました。
http://www.sequoiacap.com/ideas/
例えば、Sustainableなビジネスの条件として、
"Target customers who will move fast and pay a premium for a unique offering."
というのがあります。
現在インターンをしているスタートアップでも、CEOに「日本で動きの早いプレーヤー(Potential Customer)はどこなんだ?」と聞かれましたが、B to Bの起業家からすると切実な問題のようです。
インターネットで、B to CやC to Cの場合には、この点には余り頭を痛めないのかもしれませんが。