MBAの日本人の間でも、クリーンテクノロジーに対する関心が高まっています。
合格された方から、
「MBAに合格しました。ブログ読んでます。クリーンテクノロジーに関心があるので、一度会いませんか。」
という嬉しい連絡を頂くことがあります。
お会いして、
「具体的にどういう分野にご興味があるのですか」
と質問すると、
結構頻繁に頂く御返事が
「うーん。ベタープレイスとか?!」
ベタープレイスは、日本でも、雑誌記事に載るなど、注目を集めています。
環境省がバックアップし、元ルイヴィトン日本CEOでハーバードMBA卒業生の方が、日本のヘッドをされています。
どういう企業なのか。
最も注目されているのが、バッテリースワップ。
どういうことでしょうか。
三菱のアイミーブや日産のリーフに代表されるように、電気自動車が注目される時代になりました。
しかし、電気自動車に積む電池は、まだまだ値段が高く、また、充電に時間がかかります。
箱根に旅行するときなど、長距離を旅行する際に、充電が切れると大変です。
そこで、ベタープレイスは、
「電池は私が持っているのを、お貸しします。携帯電話みたいに、使っただけお金を払って頂ければ結構です。充電が切れても大丈夫ですよ。私共のバッテリースワップステーションで、電池ごと交換しますから、すぐです」
というソリューションを打ち出したのです。
さて、ベタープレイスは、どのくらい成功する確率があるのでしょうか。
「当たるとデカイ」です。なぜなら、一度、スワップステーションが全国にできてしまうと、後発企業の参入障壁が非常に高いからです。
ベタープレイスがバッテリースワップステーションを全国に設置するとする。後発企業からすると、バッテリースワップステーションを全国にいきなり設置するだけ資本がある可能性は低いと思われるので、少しずつになる。ベタープレイスは、いろいろな方法で後発企業の参入を妨害できます(例えば、後発企業のステーションの傍でだけ価格競争する)。また、バッテリーにはいろいろなタイプがあるとすると(あるいはベタープレイスが他の企業のバッテリーとのスワップを許さないとすると)、ユーザからすると、全国にステーションが設置された便利なベタープレイスのほうを使うという風になりやすくなります。
しかし、本当に成功できるのでしょうか。
良くある批判が、電池には色々なタイプがあるので、すべてのタイプを揃えないといけないとすると、バッテリースワップは難しい、という批判。また、電池は重いからスワップは難しいという批判。しかし、いずれも技術的に解決できそうであり、私に届いている情報(真偽は不明)では技術的には解決済みとのこと。
しかし、より難しい問題が、ファイナンスだと思います。
ある情報筋(真偽は不明)によれば、カリフォルニアをバッテリースワップステーションでカバーするだけで1000億円が必要とのこと(電池代を含まない)。電池を入れれば、もっともっと凄い金額になりそうです。
そうすると、ベンチャーには難しいのではないか。
リスクの高いベンチャーは、エクイティで調達するのが基本だと思いますが、ベンチャーキャピタルのファンドの規模(大きくても1つで1000億円くらい)を考えると、エクイティでの全額の調達は無理そうです。ヘッジファンドやプライベートエクイティがベンチャーに投資していたときもありましたが、リーマンショックで、シリコンバレーからは殆どが「蒸発してしまった」といわれています。
エクイティでは足りないので、デットで入れるとすると?
実際にも、ベタープレイスは、デットファイナンスを検討しているという噂です。
しかし、ファイナンスの理論によれば、デットとエクイティの比が重要です。 (デットの比を高めれば、金利に伴う節税効果のために、キャッシュフローの期待値が向上し、当初は企業価値が向上します。しかし、あまりにデットの比率を高めると、今度は倒産する可能性が高くなり、倒産した場合のコストの期待値が計算に入るために企業価値は下がります。)
デットとエクイティの比は、ベタープレイスのように、アセットをたくさん有しているビジネスでは、デットの比率が高めになる傾向があります。 しかし、ここで思い出されるのが、有名なイリジウムのケースです。
イリジウムは、日本の京セラの稲盛氏をはじめとした世界のスーパースターを抱え、ファイナンス業界から注目を集めました。アセットをたくさん有するビジネスであり、また、スーパースターが運営していたため、「利益があまり出る前の段階から」ファイナンス業界が大量の資金をデットで貸したと言われています。
イリジウムは、最後には失敗します。
そして、その教訓として、「アセットがたくさんあれば、確かに『ターゲット』となるデットの比は高くなる。しかし、本当にデットの比を高めるのは、利益がきちんと出てからとすべきで、利益が出る前にデットの比を高めてはいけない」と良く言われます。
ベタープレイスが、イリジウムの二の舞にならなければ良いのですが。
ベタープレイスは、まずはイスラエルなど小さな国から順番にビジネスをはじめています。ここで、利益を出して、デットの比を高められるようにすれば、国土の大きな国に打って出れるかもしれません。また、デットのほかに、政府の資金などを入れようとしています。いずれにしても、大量のカネという意味でダイナミックで、かつ、デットの比を高めるタイミングという意味でセンシティブなExecutionになりそうです。
日産は、「ベタープレイスとセットにされて、日本でバッテリースワップ型の車を出すかのように言われているが、そういう計画は今のところない」との旨の発言をしたと言われています。 しかし、その日産も、ルノーの方で、イスラエルでは、ベタープレイスに協力して、バッテリースワップ型の車を出すと言われています。
おそらく「ベタープレイスがイスラエルで成功すれば、他の国での協力に検討するし、失敗すれば、トカゲの尻尾を切るように切ってしまえば良い」と考えているのでしょう。
ベタープレイスが非常に難しく、センシティブなExecutionに成功するか注目です。
2010年1月4日月曜日
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1 件のコメント:
日本国内はLPガス車(タクシーとか)の代替を狙ってるみたいな話は聞きます。そのマーケットだけで当初はいけるというなら次のステップもありか?とは思ったりします。
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