2008年12月23日火曜日

課外活動

ブログを読んでくださっている方から課外活動について書いて欲しいと御要望を頂きました。下記のとおり、秋学期は勉強に集中しましたので、十分な知識があるか微妙ですが、知っている範囲でご紹介したいと思います。

1 キャリア関係
コンサルティングクラブ、ファイナンスクラブ、リアルエステートクラブ、ヘルスケアクラブ、ソーシャルアントレクラブ、ベンチャーキャピタルクラブ、アントレクラブなどがあげられます。
業界の方のスピーチ、ネットワーキングイベント開催、インタビュー対策、企業訪問などのキャリア対策がなされます。今学期には、例えば、コンサルクラブで、ケースインタビューについてどのように準備すべきなのかという対策がなされたようです。また、ヘルスケアクラブでジェネンテックへの訪問がなされ、ベンチャーキャピタルクラブでVCへの訪問がなされました。なお、スピーカーの招待及びネットワークイベント開催は、どのクラブでも頻繁かつ日常に行われており、例えば、アショーカのドレイトン氏が招待されたり、ムハマドユヌス氏の講演が紹介されたりしました。
他学部との交流もあり、例えば、ヘルスケアクラブには、メディカルスクールのPHDの学生なども所属されており、企業訪問やネットワークイベントの際には、MBAの学生と共に参加されています。
また、アントレプレナークラブでは、(起業の)アイディアのブレインストーミングを定期的に行うといったユニークな活動もなされています。

2 Experiential Learningの出来る課外活動
ボードフェロー、Future Alumni Consulting Teamなどがあげられます。
ボードフェローは、実際のノンプロフィット(非営利)企業のボードメンバーとして、プロジェクトに参加できるという課外活動です。非営利企業は、従業員数数百人の大企業から従業員数数名の小企業まで様々です。
Future Alumni Consulting Teamは、卒業生とともに、非営利企業に無料でコンサルティングを行うという課外活動です。

3 娯楽系及びその他
旅行に行くクラブ、フィットネスクラブ、スキークラブ(スキーに行く)、空手クラブ(空手を習える)、GSB Show(GSB生が芸をする)、アジアンソサイエティクラブ(アジアに関する様々な活動がなされる)、チャイナクラブ、中東クラブといったクラブがあり、その名から想像できるとおりの活動を行っています。また、View From The Topなる大企業CEO、(もと)(副)大統領及び著名VCなどをGSBに招待するクラブもあります。さらに、GSB以外のクラブにも勿論所属可能で、私の所属しているものですとMEDesign(Medical Entrepreneur Design Club。Medicalに関するニーズを発掘し、ニーズに対してどのようなイノベーションが可能なのかを考え、ビジネス化することを目指すクラブ)等がこれに当たります。
なお、Global Study Trip(GSB生がプログラムの一環として参加しなくてはならない外国へのTrip)などのリーダーになることも勿論可能です。

私は、秋学期については、課外活動は、興味のあるスピーカーの講演に顔を出し、軽く会食に顔を出すという感じで利用しました。スタンフォードMBAの場合、人数も少ないので、 (フォーマルなクラブ活動よりも)自分達で集まって好きな活動をする方が効率が良いことも多いような気がします。

秋学期印象に残った授業内容

秋学期が終わりました。まだ授業が開始して3カ月ですので間違っているかもしれませんが、今学期受けたそれぞれの授業について、簡単に印象に残った内容を記載したいと思います。ここでは好き勝手書いていますが、授業の内容をまとめたものもありますので、時間があれば、そのうち、これもアップしたいと思います。

1.Strategic Leadership
戦略立案(Strategic Insight)と遂行(Strategic Execution)を考える授業(ケース方式)とExperiential LearningのできるLabとに分かれている。
戦略立案及び遂行の授業では、戦略や競争の本質を考察するのだが、弁護士としては、(戦略や競争の本質の議論そのものは勿論のこと)特許戦略との関係が非常に興味深かった。
授業では、例えば、競争上の強み(Competitive Advantage)とは何なのか、その源泉は何なのかということを考察する。まず、Competitive Advantageとしては、例えば、クオリティ/コストが競争相手よりも優位していることなどがあげられる。Competitive Advantageの源泉は、企業のExternal Context及びInternal Contextに分けて考えることができる。External ContextとしてのCompetitive Advantage (positional advantage)の源泉は、マイケル・ポーターの5つの力(競争、参入障壁、Buyer Power、Supplier Power、代替品)によって考えられる。Internal ContextしてのCompetitive Advantage (capability advantage)の源泉は、企業の戦略(戦略は、企業の目標、業務範囲及び競争上の強みを論理的にリンクさせることによって得られるもの)と企業のPARC(People, Architecture, Routine, Culture)が整合していることなどによって得られるのが通常である。
特許戦略との関係を自分なりに考えると、例えば、特許権は、上記マイケル・ポーターの5つの力のうち、参入障壁として機能する場合がある(特許権が十分強力であれば、特許権によってプロテクトされた市場には一応参入障壁があることになる)と同時に、競争の性質にも影響する場合がある(必須特許を有していない企業は、特許権によってプロテクトされた市場に参入できないため、市場で競争するプレーヤーの数が減ることになる)ことになる。また、上記のとおり、競争上の強みを与えるファクターは特許権だけではないから、特許権以外に見るべきもののない企業は、理論的には、見るべき強みのある企業に特許権を売ってしまった方が良いことになる(実務的には特許権の売買のマーケットがないので難しい。ただ、特許権の価値は、特許権を保有する企業によって異なる。一般には、他にPositional Advantage及びCapability Advantageがあって競争上の強みをもっている企業の方が、(みるべきもののない企業よりも)特許権をより効率的に活用することができ、したがって当該特許権をより高く評価することになると思われる。そうであれば、このような企業に、特許権を売ってしまった方が、理論的には良いことになると思われる)。

2.Global Context of Management
 ビジネスを世界に拡大することのメリットやその手法について学ぶコース。
ビジネスを世界に拡大することのメリットとしては、Growth(より広いマーケットを得る)も勿論あるが、世界で競争することによって得られるLearningや、他の国で得た強みをLeverageできる(例えば、Technologyの発達した国から発展途上の国に進出すると、Technologyの強みをLeverageできる)ということもある。
ビジネスを世界に拡大することの手法としては、分析対象の企業とターゲット国との違いについて、Culture、Market、Technology、Institutionの4つの観点から考察をする。
私にとっては、毎回授業で新しい理論を学ぶことができ、非常に刺激的な授業なのだが、学生によっては、「1つしか学ぶことがなかった」などとコメントをする学生もいる。
日本のローファームは、日本の一地域のみに展開しているケースが多いが、「グローバルに展開したらどうなるのか、そのためにはどうしたら良いか」といったことも自分なりに考察してみた。

3.CAT
 Critical Analytical Thinkingという名のとおり、分析力を鍛え、論理的かつ批判的に文章を読解し、考え、これについて論文を書き、意見を述べることを学ぶコース。毎回、新しい分析の手法の書いた紙と長文(本など)を渡され、これをもとにして、エッセイなどを提出する。
 教授と私とのOne on OneのMeetingを見に来られたアプリカントの方は、「毎回こんなに色々と学べるんですか」と非常に感激されていた。あらためて自分の恵まれた状況に感謝した。

4.Organizational Behavior
 最も課題の量が少なく、秋学期の科目の中でおそらく最も学生に人気のあったコースの1つ。私にとっては、人間の行動にいかにバイアスがかかっているか、これを避けるためにどうしたら良いのか、を学べたことが有意義だった。

5.Finance
 DCFから始まり、CAPM、WACC、ブラックショールズ、リアルオプションなどを一通り学ぶコース。多くのアメリカ人はFinanceに最も苦労していたが、日本人にとっては数理系であり、比較的点をとりやすいのではないかと思う。
 オプションのバイノミアルモデル(株式などのオプションの対象の価値が、一単位期間に、上か下か、二つのうちどちらか一つに動くと仮定してオプションの価値を算定する)について、上に動く確率及び下に動く確率によらずしてオプションの価値が決まること(上下に動く確率は計算上不要であること)、バイノミアルモデルにおいて、(一見すると株式などが一単位期間に上か下にしか動かないという仮定はアンリアリスティックに見えても)一単位期間のそれぞれの期間を無限に小さくすれば、当該モデルもリアリスティックといえ、実務的にもオプションの価値の算定に用いることができること、といった内容は、非常に興味深く、印象に残った。また、このようなオプションの価値の算定方法を用いて、オプション以外の様々な金融資産の価値を評価できる(したがって、当該金融資産をオプションでReplicateしてリスクをヘッジすることなどもできる)ことも非常に興味深かった。