Kleiner Perkinsの話題をもう一つ。そのパートナーの一人、John Doerrについて。
以前にご紹介したとおり、シリコンバレーでは有名人です(例えば、こちらの記事)。
個人資産は、1200億円。アメリカのBest Leadersの一人にも選ばれました。
クリーンテクノロジーの分野のベンチャーキャピタリストでは、Vinod KhoslaとJohn Doerrが2人の「巨匠」とするのが一般的だと思います(例えば、こちらの記事を参照)
クライナーパーキンスは、2000年か2001年頃からクリーンテクノロジーの領域に進出しましたが、その契機について明らかにしているのが、以下のJohn Doerrの2007年の講演です。
John Doerr2007年講演 (ビデオを見る時間がない方は、こちらに抜粋があります)
この講演では、「私は怖い」と語る最初から感情的で、最後は泣き出してしまいます。
以前にもご紹介したとおり、John Doerrの所属するKleiner Perkinsは、異常なトラックレコードを叩き出してきました。2009年のJohn Doerrの公表によれば、Kleiner Perkinsのトラックレコードは、以下のとおりです。
・Annual Revenue:10兆円
・時価総額:50兆円
・33年間で475件に投資。
・今までに173件がIPO。163件がM&AでExit。
しかし、そんなKleiner Perkinsの力を持ってしてさえ、Climate Changeの非常事態を解決できないかもしれない。だから、John Doerrは、講演中に「私は怖い」と語るのだと思います。
Doerrによれば、エクソン・モービルの『一日』の売り上げは、1000億円を超えます。一方で、Kleiner Perkinsのグリーンテクノロジーファンドの規模は、約1000億円。
「未来を予測するのに最も簡単な方法は、未来を発明すること。二番目に簡単なのは、それについてファイナンスすること」とDoerrは、語ります。未来は予見できないので、それなら、つくりだすのがよい、という趣旨でしょう。しかし、エクソン・モービルの一日の売り上げ(1000億円)や中国のCO2排出量の増加には凄まじいものがあります(詳しくは、John Doerr2007年講演を参照)。Kleinerの力をもってしても、未来をつくりだせるのか「怖い」とDoerrは感じているのだと思います。
先に述べたように、Doerrによれば、エクソン・モービルの『一日』の売り上げは、1000億円超。2007年当時のアメリカ政府のグリーンテクノロジーに関する予算も1000億円程度。この講演の中で、彼は、クリーンテクノロジーの分野では、「政策が非常に大事だ」と語ります。起業家の力だけでは問題は解決できず、なんとしても政策が必要だというのです。そして、具体的に5つの政策を以下の記事で提唱しています。
The Green Road to Prosperity. By: Doerr, John, Scientific American Earth 3.0, 19361513, 2009, Vol. 19, Issue 1
「政策が必要」という言葉通り、Doerrは、アメリカ政府に対して、強いパイプを作り出してきました。昨年2月に大統領に対するアドバイザリーボードのメンバーになったのです(こちらの記事)。
そのインセンティブではなく、結果の方を中心に吟味して、「クリーンテクノロジーに対してシリコンバレーのトップベンチャーキャピタリストは真剣なのではない。政府とのパイプが欲しいだけだ。」とする経済専門家の声もあります。私自身、ある教授から、「クリーンテクノロジーは、近い将来、熱が冷めるだろう。中国とインドの二酸化炭素排出量の増加は、もうどうしようもない。ベンチャーキャピタリスト達が投資しているのも、政府とのコネが欲しいだけだろう」とアドバイスをもらったことがあります。確かに、政府とのコネを得たのは、Doerrだけではなく、Foundation Capitalなどのクリーンテクノロジーに強い他のベンチャーキャピタルファームも同じ。例えば、スタンフォードビジネススクールを最近卒業したばかりのFoundation CapitalのSteve Vassalloも、最近大統領からホワイトハウスに意見聴取に呼ばれたと話していました。
しかし、Doerrがクリーンテクノロジーへの検討をはじめたのが、2000年か2001年頃。その後、環境問題に興味のなかったように見えるブッシュ政権の時代にも、グリーンテクノロジーへの投資を続けています。 本当に、政府とのコネが欲しかっただけならば、ブッシュ政権の時代にグリーンテクノロジーへの投資はしないのではないかと思います。
これは、John Doerr2007年講演で見せた涙を、真実の涙ととるか、単なるパフォーマンスととるかという違いでもあると思います。
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