2013年12月21日土曜日

もうすぐMBAの出願の時期(その2)

もうすぐ出願の時期、ということで、毎年恒例のスタンフォードMBAに合格するためのガイドブックその4を作成しました。

今までのガイドブックについては、こちらを。

今回の「ガイドブックその4」は、実際にあった受験生のエッセイを添削する内容です。

高校生が使う受験参考書に、チャート式シリーズがあると思いますが、それと同じような構成を目指しました。

まず、

1.合格するための鉄則

を記載し、

2.実際にあった、いくつかの出願エッセイ

が鉄則に対して、どこが良くて、どこに問題があるか

という構成になっています。

私が受験生だったときに、「回答例があれば良いのになぁ」と思いつつ、ハーバードMBAのもの(こちら ) しか回答例が出版されておらず、しかも、ハーバードMBAの出版物(回答例)の内容は、エッセイ例文集に過ぎず、攻略法が書いていないという点で、イマイチだったことを踏まえて、作成しました。

欲しい方は、今までと同様、こちらにメールを:
stanfordmba.guide@gmail.com

2013年11月9日土曜日

Twitterの上場



忘れもしない2009年の冬。
グーグルの会長のエリック・シュミット氏らが教授として講義するスタンフォードビジネススクールの名物授業「ベンチャーキャピタルと起業家」。

その授業に、Twitterの創業者、ビズ・ストーンが、投資家のピーター・フェントンと一緒に登場した。

Twitterのコンセプトの始まりは2006年頃。
スピンオフで会社として誕生したのは2007年の4月だ。

つまり、授業は、Twitterが会社になってから、まだ3年弱の頃だ。
それだけに、授業の前のスタンフォードビジネススクールの学生のTwitterに対する評価は、マチマチ。
「もしかしたら、Googleを追い落とすかもしれない」というくらいの印象しかなかった。

授業のはじめに、教授が、
「Twitterが成功すると思う人、手をあげて」
というと、何とクラスの半分くらいの手しかあがらなかった。

それだけに、ケーススタディでは、Twitterについて、皆言いたい放題だった。

好意的な意見:

  • 2009年の1月から2月の間に、Twitterのユーザが、600万人から1000万人に上昇している。幾何級数的なユーザの上昇は、成功するスタートアップの典型だ。
  • 2008年秋にFacebookが、500億円程度でTwitterを買うというオファーを出している。
  • リアルタイムで、他人の経験や情報を取得できるのは素晴らしい。
否定的な意見:
  • Twitterが、どうやって利益をあげるのか、全く分からない
ケースのディスカッションが終わった後、ビズ・ストーンとピーター・フェントンが壇上にあがった。ビズ・ストーンは、ピーター・フェントンに昔書いた手紙を読んでくれた。

「Twitterについて、信じて欲しいこと○箇条」

というような感じで、「必ず甲子園に連れて行くからついてきて欲しい」というトーン。とても純粋な人なんでしょう。ラブレターみたいだなぁ、と思ったのを覚えている。

ラブ・レターを読むようなソフトな口調のビズ・ストーンが、メディアの業界を民主化するんだ、と語ると、ピーター・フェントンは、Twitterについて出会ったその日、余りの衝撃に骨がとけるような気がした、と言っていた。直感で投資したらしい。

しかし、創業者と投資家は、まさに恋人同士という感じに見えた。

終始恋人にラブレターを読んでいるようなソフトな口調のビズ・ストーンのせいで、クラスは異様な雰囲気だった。

しかし、そんな二人の情熱というか恋心のようなものに感化され、 何だか凄そうだぞ、という気持ちになってくる。

クラス全体が洗脳された
そんな雰囲気だった。

クラスの終わりに、Twitterの投資家でもあるピーター・ウェンデル教授が、もう一度、

「Twitterが大成功すると思う人、手をあげて。最低でも時価総額数千億円だ。僕の投資が成功だったと思うか」

と聞くと、今度は、 クラスの全員が、一斉に手をあげた。
その熱狂、全員がTwitterを信じた瞬間に、とても驚いたのを覚えている。

今週、Twitterが上場した。
株価が株式公開日に74%上昇。
今では、大体3兆円くらいの時価総額がついている。

2008年に500億円。2013年に3兆円。5年で60倍か。
5年前に数百万円の価値のストックオプションをもらって入った人の資産は、 数億円になったということだろうか。
お金持ち達の誕生で、シリコンバレーでは、また家賃と不動産の値段があがりそうだ。

2013年10月26日土曜日

起業した会社の今


私がシリコンバレーで起業した会社は、うまくいっているようで、先日も以下のような発表がありました。
http://www.prweb.com/releases/mOasis/News/prweb11200961.htm

福島のためにつくそうと自分の会社は退職しましたが、それでも自分の会社がうまくいっていると、とても嬉しい気持ちになります。

上記のプレスリリースにもありますが、私が自分の後任に雇ったEBayの元最高執行役にかわって、モンサント出身の農業業界のCEOだったスティーブという方 が、私の起業したモアシスのCEOになります。

こちらの水ビジネスのカンファレンスでも、スタンフォードビジネススクールの卒業生が起業した会社として紹介され、「スタンフォードMBAの卒業生のビジョンはすべて当たっていた」と紹介されたようで、参加したプライベートエクイティの友達が後で教えてくれました。

いつの日か砂漠がすべて畑に変わる日がくれば、世の中が変わると思うのですが。

エッセイで使える引用句

MBAのエッセイは、引用で書き始めると効果的であることが多いのですが、スタンフォードビジネススクールの場合には、例えば以下の引用は効果的です。

  1. "What does not destroy me, makes me stronger." – Friedrich Nietzsche, 1844-1900
  2. "Great works are performed not by strength but by perseverance." Samuel Johnson 1709-84.
  3. "Sweet are the uses of adversity." – William Shakespeare, 1564-1616
  4. "When it’s darkest, men see the stars." – Ralph Waldo Emerson, 1803-1882
  5. "Success is how high you bounce when you hit bottom." – General George S. Patton, 1885-1945
  6. "When the well’s dry, we know the worth of water." – Benjamin Franklin, 1706-1790
  7. "A certain amount of opposition is a great help to a man. Kites rise against, not with the wind." – John Neal, 1793-1876
  8. "Success is going from failure to failure without a loss of enthusiasm." – Anon
  9. "He knows not his own strength that hath not met adversity." – Ben Jonson, c. 1573-1637
  10. "Life is not always a matter of holding good cards, but sometimes playing a poor hand well." – Jack London, 1878-1916

引用元:http://www.linkedin.com/today/post/article/20130907072209-11846967-10-quotes-all-entrepreneurs-should-memorize

2013年10月20日日曜日

特殊能力について考えたこと


小学生の頃、本屋さんで参考書を手にとって眺めていたとき、「ここに書いてあること全部が手にとるだけで頭に入れば、時間が節約できて良いのにな」と思ったことを覚えている。

その当時は、魔法のように感じられた。

しかし、大人、特に社会人であれば、それに近いことができる方は、少なくないだろう。一瞬とはいわずも、立ち読みで本は十分という人は少なくない。

私の場合には、司法修習生のときに能力が身についた。



上司である東京地裁の裁判官が、文書を字としてではなく、絵として写真のように頭に刷り込んで、一瞬かつ正確に事件記録を読んでいくのをみて、教えて欲しいと頼み込み、真似をして、ある程度の速読法を身につけた。



裁判官流速読は、「見る」能力(文書を読む時に、左脳でなく右脳で見る)だが、「聞く」ことによる特殊能力もある。

絶対音感は、エレベータの音が音階で聞こえて、気持ち悪いらしいので、それよりは、聖徳太子のように、いっぺんに複数人の声が聞き分けられる能力の方が良い。

「話す」能力としては、同時通訳があるだろう。

以上は、いずれも努力次第で努力家なら、トレーニングで身につけられそうだ。

究極の努力家、アインシュタインは、およそあり得ない特殊能力を得ることに成功した。



それは、「妄想」(「思考」というべきか)による特殊能力といえると思う。

彼は、特許庁の審査官だった時代に、審査をしながら、常に、「自分が⚪️⚪️だったら」という妄想をしていたらしい

そして、「自分が光だったら、どのように感じるだろう」と妄想(思考)をした結果うまれたのが、特殊相対性理論といわれている。

読者の皆様も、満員電車にのりながら、つり革の広告の企業の業績をあげる手法を考えたり、お店の商品をみながら、新しい起業のアイディアを考えたり、食べながら考え事をして怒られることはあるのではないだろうか。本居宣長も、常に考え事をしていたので、日常生活が疎かになり、変人扱いされたらしい。

しかし、そのレベルを超えて、アインシュタインのように、非常に複雑な作業をしながら、全く別の「思考」をすることができれば、仕事の時間も自分の思考に使えるのだから、人生が2倍になるだろう。

2013年10月9日水曜日

外資系(米国本社)での昇進・給料交渉

 
私も、米国企業に就職して約一年、そろそろ、昇進と給料アップが欲しくなった。

ご存知のとおり、「ひたすら忍耐」の日本社会と違い、米国社会では、交渉しない者には、昇進と給料アップはない。だから、ビジネススクールの交渉の授業にも人気が出るのである。

そこで、今回は、昇進・給料アップの方法を紹介しよう。

1.ダメな例

まずは、アメリカ人に、よくあるダメな例を紹介しよう。


マッチョなアメリカ人で、ろくに給料アップ交渉をしたことがない人(軍人に多い)は、以下のようなロジックで勘違いをする。

雇用者が給料アップをするインセンティブは、辞められないことである
したがって、「辞めてやる」とオファーをちらつかせながら交渉しなければならない
また、
自分が辞めると、いかに会社が困ったことになるかを分からせなければならない

したがって、喧嘩腰で、「俺はお前がいなくても困らない。でもお前は、俺がいなると困るだろう」と交渉するのが良い


本当にこういう交渉が多いのである。

しかし、雇用者の側は、上記のような話をされても嫌になってしまうだけである。

使用者がむかついて、給料交渉の結果、従業員が首になった例もある。


2.良い例


スタンフォードビジネススクール時代のコーチのヒューに電話して、どうしたらよいか聞いてみた。ヒューは、ヒューレットパッカードの副社長のコーチもしている実力者だ。

ヒューによると、「フィードバックが欲しい」と話を持ちかけるのが良いそうである。


上司からすると、部下から、

「出来ているところ・出来ていないところ」をフィードバックして欲しい

と相談されると、悪い気はしない。

普通のアメリカ人の上司であれば、

「向上心があり、素晴らしい」

という評価になる。

さらに、その過程で、自分のことをうまくアピールできれば、

「そういえば、この人は辞めると困る」

ということになる。

そこで、「実は、これだけ貢献したのですから、・・・」と給料アップと昇進アップを持ちかければ、アメリカ人は、嫌な気持ちはしない、ということらしい。


そして、スタンフォードビジネススクールでは、

「重要な会議の前には、必ず、メモをつくり、鏡の前で徹底的に想定問答をし、練習せよ」

という鉄則をたたきこまれる。



今回も、それを実践した。自分の貢献した点、足りないと思う点をまとめ、相手がついてきそうな点も紙にまとめた。そして、鏡の前で喋る練習をした。




そして、社長と交渉をした。


3.結果

結果、そこそこの昇進と給料アップとなったが、「こうなったら最高だな」というケースには到達しなかった。

徹底して準備したはずが、なぜベストケースにならなかったのか、考えて見た。

ひとつには、想定問答のつめが甘かったことがある。 しかし、より本質的な理由がある。

スタンフォードビジネススクールの交渉のクラスでは、マーガレット・ニール教授から、

「交渉では、どれだけAspirationを高くもつか」

が重要であると習った。

今回、「こうなったらよいな」というケースについて、「こうなるのが当然」と思えなかったのが、ベストケースに到達できなかった原因である。





 このことを、上記のヒューからは、別の言い方で、以下のように習ったことがある。

「オバマ 大統領のスピーチを聞いたことがあるかい?言葉の一つ一つに信念があるだろう?こういう話し方ができれば、それだけで相手を説得することが出来るよ。」

絵にするとこんな感じだろうか。
 


一言にすると単純で、信念を持つことが大切、ということである。

2013年9月23日月曜日

プロジェクト

変な話題で恐縮ですが、私とプロジェクトがしたい、という方がいらっしゃいましたら、以下までメール下さい。

stanfordmba.guide@gmail.com

2013年7月7日日曜日

正岡子規とスタンフォードMBA

「人間のえらさに尺度がいくつもあるが、最少の報酬でもっとも多くはたらく人ほどえらいぞな。一の報酬で十の働きをするひとは、百の報酬で百の働きをする人よりえらいぞな」(司馬遼太郎『坂の上の雲 (二)』文春文庫、25頁、正岡子規の台詞)

「人生における決断というのは、キャッシュフローを現在価値に引きなおした和で計算できる。このとき、幸福度といった様々な尺度は、キャッシュフローに置きなおして計算することになる」(エドワード・ラジアー、元米大統領経済諮問委員会委員長。スタンフォードビジネススクールの講義にて。教科書はこちら。

もう有名な話だが、スタンフォードビジネススクールに留学するための鬼門が、「何があなたにとって一番重要ですか」というエッセイを書くことである。このエッセイを考えに考え抜いた人は、合格し、いい加減に書いた人は落とされる、といっても過言ではなかろう。

多くの欧米のビジネススクールの中核は、会社や個人の将来のリターン(報酬)を最高にするための様々な手法を学ぶことにあるのではないかと思う。このため、人生の道を誤ることがある。

私が、自分で立ち上げた会社を他の人間(eBayの元COO)に任せて、自分は、日本のため、福島のために頑張ろうと、南カリフォルニアの会社転職したときには、たまたま同時期に、今をときめくITの会社のアジア代表であるとか、色々なオファーがあった。自分のリターン(報酬)を最高にしようなどと考えて、道を誤っていたら、大変なことになっていたと思う。

リターン(報酬)を追及した人の典型は、『史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか』に描かれていると思う。

これは、ジョン・ポールソンが、いかにして、リーマンショックのときに儲けたのか、を述べた本である。ポールソンは、不動産ローンの証券市場が暴落すると予想した。ローンの返済可能性と不動産価格との間に相関関係があることに気がついたのだ。それまでは上昇していた不動産の価格が下降に転じれば、ローンが返済されなくなり、(バブルの状態にあった)不動産ローン証券市場が暴落すると読んだ。市場が下がるときに、投資家が良く使うのは、「借りておいて売り、あとで(価格が下がった段階で)買い戻して返す」という空売りだ。しかし、価格が下がるタイミングを正確に予測するのは難しい。その他、色々な理由で、ポールソンは、空売りを利用しようとはせず、代わりに、ウォーレン・バフェットが「金融大量破壊兵器」と呼んだクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を使って、市場の暴落時に、儲けようと考える。要すると、ポールソンが保険のプレミアムのような比較的少額な金額を毎年払う代わりに、デフォルトが発生した場合には、保険金のような大量の金が(デフォルトした人や損をした人ではなく、ポールソンに)支払われる。ポールソンは、CDSの毎年の支払額を低くするために、自分の投資手法を出来るだけ隠しながら、隠密に行動し、最後は、大儲けする。しかし、多くの人が破産することで自分だけが儲かるという仕組みは、社会の利益と個人の利益が相反する状態とも考えられる。他の人間が不幸になると自分が儲かるのであれば、他の人間の不幸を祈るようにならないのだろうか。まさに悪魔に魂を売り渡すという形容がふさわしいのではないだろうか。

自分は、こういうのは向かない、と思いながら、福島の仕事に向かうと、福島に関する業界のとある信頼できる専門家から、(色々いかがわしい情報が飛び交う中で)「この本だけが福島の真実を述べた本です」と、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』という実話を記述した本を薦められた。「飛行機の中で読むと涙が止まらないので、やめた方が良いですよ」と別の専門家に言われた。

本の中では、格納容器の圧力が設計圧力の二倍近くなり、いつ何が起こってもおかしくない状態で、吉田氏が、自分と一緒に死んでくれる人間の顔を思い浮かべるシーンが出てくる。原子炉を冷やすために、水を入れ続けるメンバーとして、何人を残すのか、一人一人の顔を思い浮かべながら考えたらしい。「最後はもう、(生きることを)諦めてもらうしかねぇのかなと、そんなことをずっと頭の中で考えていました」という。

著者は、「ぎりぎりの場面では、人間とは、もともと持ったその人の"素の姿"が剥き出しになる」という。

(あのとき、命をかけて原子炉を冷やし続けた人達がいなかったら)日本は、汚染によって住めなくなった地域と、それ以外の北海道や西日本に「三分割」されていたかもしれない、と述べる専門家もいる。

スタンフォードビジネススクールでは、CDSなど「金儲けの方法」も習うが、生き方についても習う。最後に社会を良くするのは、立派な価値観をもった人だから、であろう。

2013年7月3日水曜日

クラスメートの進路

ある日のこと、授業中、前をボンヤリ眺めていると、「凄い髪の毛だな」と思う人が目の前に座った。日本人の悲しい習性なのか、「髪の毛が余りにユニークだから無理・・・」と距離を置くことを決める。


ところが、そこで事件が起こる。

授業で、「チームをつくって、スタートアップのビジネスプランを書いてごらん」という課題が与えられたのだ。

ユニークな髪の毛の彼は、私と仲の良いクラスメートのエミリー・マーと、チームを組むという。エミリーは、一緒にいて楽しく、ベンチャーキャピタルの知り合いも多く、IDEOでの経験も長いので、こういうテーマのときには、欠かせない人材である。

エミリーとチームを組みたいので、仕方なく、髪の凄い彼とチームを組むことを了承した。

(エミリー・マー)

5人のチームである。

ところが、ことのほか、5人の中で、私と凄い髪の毛の彼のみが、一緒に組んで、複雑なリサーチを担当することになる。

ユニークな髪の彼は、パソコンを打つスピードが遅い。

このため、作業時には、必ず私を呼ぶ。

日々、私のストレスはたまっていき、「ちょっと、出来るだけ一人で作業しないか!」と発言してしまったこともあった。彼は悲しそうな顔をしていた。

しかし、結局、彼はタイピスト(?)が必要なので、しょうがなく、私と彼は一緒に作業を続け、そのうち、濃厚な関係(?)となった。

家に呼ばれる仲になったのである。

ある日のこと、彼の家で、彼が新しく興そうとしているファッションの会社のパートナーのファッションデザイナーのビデオを見せてくれた。

「素敵なビデオだね」と褒めると、「彼の年収、300億円なんだよ。ストックオプションを入れて。デザイナー界ではNo2だと思う」という。ワインを噴出しそう・・・にはならなかったが、顔色が変わるのは隠せなかった。

ユニークな髪の彼の名前はポール・デネブ。

エミリーから、ポールは、フランスのランバンのCEOだと聞いていたが、「ランバンなんて聞いたことないベンチャーだな」としか思っていなかった。

もちろん、本当は、かの有名なランバンである。ジバンシーとも肩を並べるファッション大手。彼がスタンフォードビジネススクールに留学するためにCEOを退職したことは、ウォールストリートジャーナルの記事になっていた。ニナリッチのCEOでもあったという。ポールは、結局起業せず、卒業後、最近映画にもなったイブ・サンローランのCEOになり、ヨーロッパで3年程過ごした。


(イブ・サンローラン)

ポールと一緒にクラスで考えた会社は、今は別のクラスメートが運営しており、起業してわずかにもかかわらず、投資家が数億円の値段をつけたらしい。

成功する人は、どこでも成功するのだろか。 クラスでも、彼のレポートは(タイピングが遅いので)、数行しかないが、それが長い文章を読みたくないという教授の利害とも重なり、必ず、最高得点かそれに近い点だという評判だった。

これまでポールは、問題を抱えているファッションブランドを立て直してきた(ようにみえる)。

そのポールが、アップルの副社長になりベイエリアに帰ってくることになった

ポールは次のたてなおし(?)に成功するだろうか。

見込みがあるとすると、最近のiPhoneは音声認識で作動するから、タイピングという最大の弱点は、克服済みという点であろうか。

2013年6月14日金曜日

起業した会社のアップデート

スタンフォードビジネススクールを卒業してすぐ、砂漠を緑化したいという一心で、不毛な土地を、農地にする会社(モアシス)をシリコンバレーで設立しました。不毛な土地は、ただ同然の値段で安く買えることが多いので、これを、友人の教授が開発した特殊なプロダクトを使い、低コストで、農地に変換し、キャッシュフローを改善すれば、コストよりも利益が多く、砂漠のような不毛な土地を買って緑化(農地化)すればするほど儲かる、というコンセプトの会社です。


その後、去年の今頃、ゴールドマンサックスから、福島の放射性廃棄物を綺麗にするアメリカの会社がある、と聞き、第一原発にセシウムを吸着する設備を納入するアメリカ企業の日本代表に転職しました。

モアシスについては、かわりの社長を雇い、十分な投資を受けて資金潤沢にしておいたうえで、(創業者株式を大量に持って)転職をしたのですが、それから1年が経ち、どうなっているか気になったので、投資家に電話してみました。

「プロダクトは完璧に実証されたし、マーケットも実証された。すべて君のビジョンのとおりだった。資金も潤沢だよ」という返事とともに、今後の計画を聞かされ、それが素晴らしい内容だったので、安堵しました。かなりの速度で成長しているようです。

クリーンテクノロジーの会社は、インターネットと違い、以下のような特徴があります。

・マーケットの規模が莫大に大きいことが多い(インターネットは市場が小さいこともある)
・設備投資費が大きく、ペイバックが長いことが多い

つまり、ハイリスク・ハイリターンなので、ホームランか、空振りのどちらかになることが多いです。

モアシスの場合も、本当に世界の砂漠と不毛な土地をすべて農地に出来れば、と夢は膨らみましたが、まだまだどうなるか分かりません。フェースブックで一人友達をつくるのには、1秒しかかかりませんが、作物が育つには3ヶ月かかります。インパクトをもたらすには時間がかかります。

2013年6月5日水曜日

MBA留学のためのバックグラウンド

「バックグラウンドがないので、スタンフォードMBAへの出願は見合わせるようにカウンセラーに言われました」

少し前から、MBA留学のためのガイドブックを配布し始めたところ、上記のような相談が届くようになった。

「バックグラウンドがないから、受かりません」というのは、多くの場合、コンサルタントのご都合主義のようなものではないだろうか。受かりそうな人に集中してコンサルティングをすれば、受かりそうな人の合格率は更に高まり、「○○大学○人合格」という実績が出来るという仕組みである。受験生とすれば、人生がかかっているので、たまったものではない。

本当に、「バックグラウンドがないから、受からない」のだろうか。私の記憶が正しければ、以下のような例がある。

1.インド人のクラスメートのO君(写真)は、俳優を目指して、会社を退職し、「無職」であったのにもかかわらず、スタンフォードビジネススクールに合格した。エッセイにも、俳優になりたい、と記載。

2.カリフォルニア大学バークレー校に合格した某氏は、山で仙人のような生活(要は無職)をしていたのに合格。

合格できるか、できないか、ということの基準の一つに、確かに、「典型的な合格者か」(大手のプライベートエクイティ、ヘッジファンド、投資銀行、コンサルティング会社勤務、または、医者、官僚、弁護士か、など)というものがあるように思われるが、もう一つ、その人が、どういう人生を生きてきて、どういう人生を今後生きるかどうか、というものもあるように思われる。その人は、interestingな人間なのかどうか。

そうでなければ、無職の人間を合格させる、という決断はなかなかできないだろう。

さて、ここまで書くと、「diversityのことだろう?」と型にはまったコメントが出るだろう。

diversityというのは、とても曖昧な言葉であり、とても示唆に浅い。偏差値が低い人も高い人も入れるべき、という意味なのか。無職になれる勇気のある人はとれ、という意味なのか。

そうではないだろう。結局、interestingな人間と見てもらえるかどうか、それにつきるだろう。

どうすれば、interestingな人間として出願できるのか。

ここを回答せずに、「あなたのバックグラウンドでは、スタンフォードMBAには出願しないように」とアドバイスするコンサルタントは、考え直して欲しい。他方で、MBAに出願する日本人が減っていると嘆くのは、ダブルスタンダードというものだろう。

私の日本出張の際に、ほかの人もあわせて、数人で会いたい、という人は、以下のメールに「面談希望」と件名に記載して自己紹介を頂ければ、時間ができれば、まとめて返信したい(なお、自己紹介がなく、面談希望とだけ記載した方には、申し訳ないが、返信できないと思う)。
stanfordmba.guide@gmail.com