ところが、そこで事件が起こる。
授業で、「チームをつくって、スタートアップのビジネスプランを書いてごらん」という課題が与えられたのだ。
ユニークな髪の毛の彼は、私と仲の良いクラスメートのエミリー・マーと、チームを組むという。エミリーは、一緒にいて楽しく、ベンチャーキャピタルの知り合いも多く、IDEOでの経験も長いので、こういうテーマのときには、欠かせない人材である。
エミリーとチームを組みたいので、仕方なく、髪の凄い彼とチームを組むことを了承した。
(エミリー・マー)
5人のチームである。
ところが、ことのほか、5人の中で、私と凄い髪の毛の彼のみが、一緒に組んで、複雑なリサーチを担当することになる。
ユニークな髪の彼は、パソコンを打つスピードが遅い。
このため、作業時には、必ず私を呼ぶ。
日々、私のストレスはたまっていき、「ちょっと、出来るだけ一人で作業しないか!」と発言してしまったこともあった。彼は悲しそうな顔をしていた。
しかし、結局、彼はタイピスト(?)が必要なので、しょうがなく、私と彼は一緒に作業を続け、そのうち、濃厚な関係(?)となった。
家に呼ばれる仲になったのである。
ある日のこと、彼の家で、彼が新しく興そうとしているファッションの会社のパートナーのファッションデザイナーのビデオを見せてくれた。
「素敵なビデオだね」と褒めると、「彼の年収、300億円なんだよ。ストックオプションを入れて。デザイナー界ではNo2だと思う」という。ワインを噴出しそう・・・にはならなかったが、顔色が変わるのは隠せなかった。
ユニークな髪の彼の名前はポール・デネブ。
エミリーから、ポールは、フランスのランバンのCEOだと聞いていたが、「ランバンなんて聞いたことないベンチャーだな」としか思っていなかった。
もちろん、本当は、かの有名なランバンである。ジバンシーとも肩を並べるファッション大手。彼がスタンフォードビジネススクールに留学するためにCEOを退職したことは、ウォールストリートジャーナルの記事になっていた。ニナリッチのCEOでもあったという。ポールは、結局起業せず、卒業後、最近映画にもなったイブ・サンローランのCEOになり、ヨーロッパで3年程過ごした。
(イブ・サンローラン)
ポールと一緒にクラスで考えた会社は、今は別のクラスメートが運営しており、起業してわずかにもかかわらず、投資家が数億円の値段をつけたらしい。
成功する人は、どこでも成功するのだろか。 クラスでも、彼のレポートは(タイピングが遅いので)、数行しかないが、それが長い文章を読みたくないという教授の利害とも重なり、必ず、最高得点かそれに近い点だという評判だった。
これまでポールは、問題を抱えているファッションブランドを立て直してきた(ようにみえる)。
そのポールが、アップルの副社長になり、ベイエリアに帰ってくることになった。
ポールは次のたてなおし(?)に成功するだろうか。
見込みがあるとすると、最近のiPhoneは音声認識で作動するから、タイピングという最大の弱点は、克服済みという点であろうか。
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