スタンフォード大学の目の前を走るエル・カミーノリアル。その一角に位置するスターバックスは、学生達のたまり場だ。そして、「あなたを訴えます」という、その紙は、コーヒーを片手に、スタンフォード博士過程に在学中の天才、ジェーン(仮名)から私に手渡された。
忘れもしない2009年9月。夏季休暇をドイツ・中国で過ごした直後に、呼びつけられたのである。
「請求の件、考えておいて。私のバックには弁護士が3人いるから。私抜きで起業するなんて許せないわ。」
ウェーブのかかった金髪をなびかせ、ジェーンは、スターバックスを去っていた。
(エルカミノにあるスターバックス)
何でこんなことになったんだ・・・こんなはずじゃなかった。アメリカで訴えられるのか。ビジネススクールのケースに、こんなシーンはなかった・・・どうすれば良いのだろう。
動揺を隠せない。穴があったら入りたい気持ちだった。
***(1年半さかのぼる)***
2008年に私が留学した直後は、シリコンバレーは、クリーンテクノロジーのバブル期で、スタンフォード構内では、チャンスを求め、怪しい風貌の人達がウロウロしていた。「クリーンテック・アントレプレナーシップ」は、ビジネススクール卒業生、アントレさん(仮名)が教える科目で、クラスの99%が、スタンフォード大学とは全く関係ない、浮浪者のような身なりの人が聴講している、という、とんでもないクラスだった。
(クリーンテック・アントレプレナーシップをとった場所の近く)
私とベルラボ出身のインド人の科学者、ラオウ氏(仮名)は、このクラスで出会った。私と彼は、妙に馬があった。私は、技術者の友達が欲しかった。彼は、お金を集められる友達が欲しかった。
それ以来、毎週、一緒にビールを飲んで過ごした。彼と一緒にビールを飲んでいると、次々と起業のアイディアが思い浮かんだ。一晩で20個はアイディアがうまれる。ステルス戦闘機を探知するセンサーを使ってビルの中の見取り図をつくるアイディア、放射線の探知機をアイフォンにくっつけるアイディア(地震の前)、熱を超高効率で電気に変えるガラスをつくるアイディアなどなど。
ラオウの話すことは、いつも、どこまで本当なのか分からない。馬鹿と天才は紙一重という言葉があるが、嘘とイノベーションは紙一重なのかと感じたこともある。正確さと精密さを良しとする弁護士業界から来た私にとっては、新鮮な空気だった。
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