2017年11月13日月曜日

強い日本を取り戻して、世界を変えたい人、いませんか

何年か前にスタンフォードビジネススクールの出願者のためのインフォメーションセッション(東京)で、卒業生として話をする機会がありました。たまたま、来日していたためです。

そのときに、自分のキャリアについて話したところ、出願者から、「福島の除染のために頑張っているという話だが、正直あまり花形だという印象がない。あなたは渉外弁護士で、スタンフォード大学で経営学と科学の修士号までとって、なんで、そんなことをしているのか」という質問を受けました。

花形の仕事がしたい場合、スタンフォードを卒業するときに、以下の思考プロセスをたどると思います。

思考プロセス(日本人・アメリカ人エリート)
   世界を変える前に自分の生活に責任を持たないといけない
   だから、まずは、花形の仕事をして、お金を稼いで、生活に安定を持たせよう
   したがって、投資銀行、コンサル、プライベートエクイティなど、給料が多くて、人が見たときに「いいなぁ」と思われる職種で働こう
   金を稼いだら、好きなことをしよう

これをシリコンバレーでは、deferred life planと言います。ただ、シリコンバレーの場合には、日本人や普通のアメリカ人の上記のような思考プロセスと違い、以下の思考プロセスをたどります。

思考プロセス(シリコンバレーのお金が好きな人)
   自分が本当にしたいのは、XX(例:教育)だが、これは金儲けにならない
   だから、まずは、XX(例:物流・E-Commerce)のスタートアップで金儲けしよう
   金を稼いだら、好きな起業をしよう

かくいう私も、スタンフォードビジネススクールのエッセイを出願するときに、deferred life planをイメージしていました。しかし、金のためではなく、実力をつけるためでした。

「ビジネススクールを卒業しても、運転免許をとったばかりの運転手なのだから、すぐには実力がないだろう。だから、10年くらい本場のアメリカでマネジメントの経験を積んで、その後、それを生かして、日本を復活させるような仕事がしたい」

と思って、実際にも、(このブログの読者はご存知だと思いますが)まずはシリコンバレーで起業して、数億円、当地のベンチャーキャピタリストから投資を受け、そのあとは、福島のために、海千山千のアメリカ人達とマネジメントを経験しました。

私が小学生の頃には、バブルの最盛期で、日本の様子は今と大分異なり、勝利の自信に溢れていました。経済がいいときには、良い職が溢れており、良い職につくということは、いい(従業員)教育を受けるということです。経済が良いということは、世界の中で日本が注目され、日本人が良い経験をする機会に恵まれるということです。こういう日本を復活させるような仕事がしたいとずっと思っていました。

そして、留学をしてから、ほとんど10年が経ちました。

この間、どうしたら日本の経済が復活するのか、ずっと考えてきました。

福島のために仕事をしているときには、ネットワーク効果のことを考えていました。シリコンバレーで次々に新しい産業が生まれるのは、優秀な人(起業家)が優秀な人(投資家)に惹かれるということで正の連鎖が生まれており(ネットワーク効果)、優秀な起業家・投資家ほどシリコンバレーに住みたいと思う、という状況ができたからです。福島にも、人類未曾有の事態に、世界で最も優秀な人が集まる状況をつくれば、福島のためになるとともに、正の連鎖のロールモデルが日本に出来て、これが拡大すれば日本が復活すると思って、外資系で仕事をしました。

今年になって、5年間勤務した会社を辞め、また起業することにしました。

今回は、ネットワーク効果ではなく、ブラックスワンを考えています。

過去20年間、米国のGDPは2.3倍になりましたが、日本は(20年間で)むしろ減りました。同じように、過去20年間で米国の賃金は大きく上がりましたが、日本の賃金はあまり変わっていません。

20年前は、アメリカで年収1000万円もらうのと、日本で年収1000万円もらうのと、生活レベルは余り変わらなかったかもしれません。しかし、今では大変大きな生活レベルの差があると思います。

この差が、このまま続くとすると、今後20年間で(直線ではなく)幾何級数で更に大きな開きが出ることになり、そのうち毎年差が分かるほどの大きな差ができると思います。

ブラックスワンの理論では、上記のように過去の傾向からは将来は予測できず、未来は、むしろ、過去から断絶した突拍子も無い自体で大きく変わるとされています。例えば、第二次世界大戦とか、(核戦争を避けた)キューバ革命のような事態が、将来を決めるのだとします。

今までの経験で、日本初のベンチャーを作っても、世界では、「日本の成功モデルは、世界では通用しない」のが常識なので、シリコンバレーに会社を作りました。でも日本に関連するビジネスです。

ロボットとITAIを合わせた内容で、ブラックスワンを作ることを目指しますが、以下の人を募集しています(報酬のある場合とボランティアの場合があります)。

欲しい人
・日本や世界を変えたい人
・スタンフォードビジネススクールで習うイノベーションのプロセスで勉強したい人
・将来、シリコンバレーで仕事がしたい人
・将来留学したい人

要求スキル
・ボランティアの方については、スキルは問わず、時間とやる気があって、人格の良い方
・ソフトウェアエンジニアの経験があってプログラムが出来る方の場合、実力や得意分野に応じて、報酬をお支払いします
・同じくデザインやビデオの撮影・編集が上手な方の場合、報酬をご相談します

ボランティアではじまっても、よく出来る方は採用につながることがあります。

以下にメールを頂ければ事業などの詳細をご説明します。


そのうちブログでも事業の詳細をかけると良いなと思っています。

2017年9月22日金曜日

どうすれば信念を持った人になれるのか

前回のブログで、信念がないと良いCEOになれないので、スタンフォードMBAの受験では、What Matters Most to Youと質問されると書きました。9月になり、そろそろ多くの受験生が、エッセイを書き始める時期になりました。どうすれば信念を持てるのか、考えてみたいと思います。

1. ケーススタディ:なぜ信念を持つことが重要なのか

先日、とある友達と会った時に、「どうしたら信念のある子を育てられるのか」と質問されました。

アメリカ生まれの子供で、英語がアメリカ人ほど達者でないこともあり、アメリカ人と口論になると負けてしまう、ということで悩まれていました。

子供には、「英語の発音や言い回しじゃなくて、内容なのだ」と自信を持って欲しい、と悩まれていました。

小さなことだと思われるかもしれませんが、これはビジネスでも生活でもとても大事なことで、日常茶飯事から大きな問題まで、様々な局面で直面する問題です。

例えば、アメリカでは給料アップやスターティングサラリーを交渉しますが、交渉する時に、絶対の信念を持って交渉する人と、「自分なんて・・・」と交渉するでは結果が異なります。生涯年収にすると少なくとも何倍も違いが出るでしょう。

あるいは、アメリカでは、アパートを追い出される人がいます。下の階の人が、「足音がうるさい」と言って、天井を突っつくようになって、最後は、大家さんから追い出されます。謙虚な日本人は、まず自分が出て行かなくではと思う人も多いので、日本人駐在員や留学生では実際に出ていかれる方が多いです。こういう時も、下の階の人が、日常の小さな足音が気になっていて、天井が薄いだけかもしれません。自分に信念があれば、どうやって戦おうと考えますので、追い出される可能性は大きく減ります。

上は、日常の例ですが、CEOになると、問題はさらに大きくなります。

会社を売る時に、1000億円のオファーがあった時に、絶対に1300億円は会社の価値はくだらない、と信念を持って交渉できるか。あるいは、交渉せずに、オファーを断れるか。

アンディ・グローブは、DRAMのビジネスから、マイクロプロセッサのビジネスに、大きくビジネスの方向性を変更しました。今までの主流ビジネスから、新しいビジネスに方向転換するのも信念のなせる技です。

2. 信念がないとどうなるか

自分にとって、何が一番大切か、という問題を考えることで、信念がついていきます。

逆に考えたことがない人は、心の路頭に迷ってしまいます。

例えば、何が一番大切かわかっていない人がお金を儲けたとしましょう。

ホームアローンの主人公の男の子の家が、大成功の後に、うまくいかなくなったことはよく知られています。記憶では確か、グレてしまったり、結構大変なことになってしまったのだと思います。

子供だったから・・・と思われるかもしれません。しかし、成功して、お金やタイトルを持つと、もっとお金やタイトル(パワー)を欲するようになること(中毒になること)は、学術論文上、知られています。例えば、スタンフォードビジネススクールの教授のJeffrey PfefferのPowerという教科書にも、このことが記載されています。

どんどんお金やタイトルを追い求める人生は幸せなのでしょうか。

まずはファーストクラスに乗るようになります。いいホテルに泊まって・・・どんどん「上」(お金とタイトルという意味で)を求めて、優秀なら、アメリカのいい会社では、毎年昇給したり、給料がぐんぐん上がっていきます。

気がついたら(もっと悪い例では気がつかずに)、お金と権力を求めている人生になっています。

そして・・・ビジネススクールを卒業して、10年間がたちます。

ある朝、ベッドから起きます。「ビジネススクールにいた時に、毎日湧き出てきた自分のアイディアと夢は、どこに行ってしまったのだろう」と嘆くようになります。

実際に、こういう人は、とても多いのです。ここまで金と権力がくっついて、劣化してしまってから、元(精神面で若く、アイディアと希望に溢れた状態)に戻るのには、もちろん無理ではありませんが、努力が必要でしょう。

3. どうすれば信念が身につくのか

どうすれば信念が身につくのか。

(1)「成功」は与えられるものだという認識
まず、自分の置かれている幸せな状況(日本人で受験を考えるポジションにいるだけで世界の多くの人よりも恵まれています)が、自分が獲得したものだと思わないことでしょう。例えば、親が与えてくれたものは、自分の力で獲得したと言えるのでしょうか。ホームアローンの子が成功したのは、もちろん自分も頑張ったからでしょうが、彼だけの力だと勘違いした瞬間に負の連鎖が始まります。多くの「成功」は、与えられるものです。

(2)おてんとうさまに恥ずかしくないこと
道を踏み外してしまうと、自分を見失います。

(3)お金と権力が一番大切だと思わないこと
上に書いたとおりです。

(4)一度信じたら最後までやり遂げること
多くの信じるものは、目に見えませんので、信じて最後までやり遂げるのは大変です。これは前回のブログの記事の通りです。

(5)何が一番大切なのか理解していること
これがないと多くの場合で目的を持てないので、信じる対象がないことが多いです。ガイドブックにも、どういうものが、what matters most to youになりうるのか、色々と書きましたが、ブログでも次回にでも、もう少し考えて見たいと思います。




2017年9月9日土曜日

Believe in yourself because we believe in you

ビジネススクールに入るには、受ける学校のウェブサイトを徹底的に調べるのが最初のステップの一つになる。色々なやり方の人がいると思うが、私の場合には、隅から隅まで目を通した。

スタンフォードビジネススクールの留学の勉強中に、アドミッションのウェブサイトに、

"Believe in yourself, because we believe in you"

という文言があった。

日本語訳をすると、

「自分の価値を信じなさい。我々はあなたの価値を信じているから」

ということになる。

なぜ、こんなことが書いてあるのだろうか。
意味がわからず、ずっと不思議だった。

今になってみると、こんな意味なのではないかと思う。

大学生の頃には、CEOってかっこいい、と純粋に思っていた。CEOを経験した後、今考えると、とても孤独な職業だと思う。

スタンフォードビジネススクールは、General Managementの学校だ。授業中にも、当時のディーンのガース・サロナーから、「卒業して10年たったら、みんな一度はCEOになって欲しい」という言葉もあった。


CEOは孤独だ。全員が諦めた時に、一人だけ絶対に諦めているところを見せてはいけない。

Hard Thing about Hard Thingsの著者のベン・ホロウィッツは、会社の株価が1株1ドルよりも下がって、取引所から1ドル以上にできなければ、上場廃止にすると言われた時に、株式の合併をすると、「弱く見える」という理由で、株式の合併をせずに、かわりに、大手投資家を説得するという"Hit the Road"をしたそうだ。

起業家の場合も同じだ。全員が「うまくいく」と思うアイディアの場合、「誰かがやったことがある」ので失敗する。多くの人が「失敗する」と思うアイディアで、実は正しいアイディアを選ぶ必要がある。そうすると、色々な人に話して、「それはうまくいかないと思う」と言われることの連続だ。

ペン・コンピュータで有名なGO CORPORATIONを創業したカプランも、ビルゲイツと会った後に、「カプランはCEOの器でない」というメールをマイクロソフト社内に流されていた。

投資家と会って、「いつ本当のCEOを雇うのか」と創業者CEOが聞かれるのは日常だ。

色々な人から批判され、陰口を叩かれ、全員が諦めた時に皆を鼓舞して(それで陰口を叩く人がいたりして)、それでも戦うのがCEOだ。

これに対して、弱いCEOは、「どうせダメだから・・・」「日本は千年の系だから」と言ったりする。正直で良い奴といえば、それまでだが、正直で、会社の状況をありのままに話すことは必要だが、弱いところを見せられない辛い職業なのだからJOB DESCRIPTIONを満たしていない人が多いと思う。

だから、
"BELIEVE IN YOURSELF"
とアドミッションのブログに書いてあったんだろう。

世界中の全員にバカだと思われても、自分とチームを信じて、長く戦い続けられるか。

これが勇気であり、CEOには絶対に必要な能力だと思う。








2017年1月20日金曜日

Yes We can

アメリカは東海岸でちょうど1月20日になった。

いよいよ新しい大統領が誕生する。

オバマについては、色々と批判があった。
・オバマケアのせいで、税金が高くなったし、医療機器のイノベーションが阻害された
・シリアが滅茶苦茶になってしまった
・シェール革命を阻害した
・シカゴの犯罪が悪化した
・ベンガジでアメリカ人が犠牲になった
・上院と下院の決議をとるのではなく、Executive Orderを多用して意思決定を押し通した
などなど。共和党のアメリカ人とご飯を食べに行くと、知識人層であるほど、食事の間、ずっと文句を言っていることも珍しくない。

トランプは、このようなアメリカの人の心をうまくつかんだのだろうというのがアメリカの新聞の論調だ。

ふたをあけてみると、ヒラリーはカリフォルニアで400万票トランプよりも票(Popular Votes)をとり、ニューヨークで170万票トランプよりも票を取得し、全体では、200万票トランプよりも票を取得したが、トランプに負けた。アメリカでは、州を制した候補者が、その州のもっているElectoral Votesをすべてとれるが、カリフォルニアは55票、ニューヨークは29票しかElectoral Votesをもっておらず、全体では538のElectoral Votesがあるので、人口が集中しているカリフォルニアとニューヨークで大勝しても、他の選挙区で負けてしまうと大統領になれない。

「皆オバマに嫌気がさしたから、方向転換でトランプに投票したのだろう。カリフォルニアとニューヨークだけが例外なんだ」というのが多くのアメリカの新聞(特にWSJなど共和党の新聞)の論調だ。


こうやって叩かれているオバマをみると、複雑な気持ちになる。



オバマが大統領になったのは2008年。私がアメリカに来た年だ。

スタンフォードビジネススクールのアプリケーションを書いているときに、「オバマになったらいいね」とアメリカ人のカウンセラー(デバリエ)に言われたのをよく覚えている。

オバマが大統領になった日は、スタンフォードの寮にいた。勝った瞬間に、学校中に学生達の拍手の音が鳴り響き、寮まで聞こえてきた。

新しい時代へのHopeだと思った。
はじめての黒人のアメリカの大統領。若くてカリスマのあるスピーチ。ノーベル平和賞の受賞。
ビジネススクールでは、オバマのようなリーダーシップをとる方法なども習った。
ビジネススクールでつらいとき、クラスメートはオバマのスピーチをきいて、気分を鼓舞していた。
ビジネススクールのコミュニケーションのクラスでは、「スピーチの力がオバマを大統領にした」と習い、スピーチを徹底的に練習した。
ビジネスプランコンペティションの前には、オバマのスピーチを何百回もみて、盛り上げ方、ストーリーのスピーチの入れ方、話し方を真似した。

Yes, We canと何度聞いたことか。

まさにロールモデルであり、理想の体現だった。


理想と現実は違うから、政治の現実がうまくないから、ということで、若い人のロールモデルと希望の象徴をあまり叩いてしまって良いのだろうか。

どんなに叩かれても、どんな現実を前にしても、オバマは自分の理想とPrincipleに忠実だった。




オバマの最後の文章は、下記のように終わっている。

When the arc of progress seems slow, remember: America is not the project of any one person. The single most powerful word in our democracy is the word "We". "We the People" "We shall overcome"

Yes, we can.





トランプが大統領になったのは、Back To The Futureの未来の世界の次の年だ。
昔映画をみていたときには、未来のその頃には車は空を飛べるのだろうか、とか考えていたが、結局、空を飛ばなかった。

トランプは未来の幕を開けられるのだろうか。

私は共和党でも民主党でもないので、良い人なら歓迎だ。

大統領が変わっても、一人では何も変えられないから変化はおきない、という人もいる。

だが、リンカーンやルーズベルトなど、例外もいる。今回は上院と下院の両方の過半数が共和党でもある。

トランプはエクソンモービルのCEOなど超大物を閣僚に起用した。
期待がもてるとともに、あまりの実力、経験と迫力に怖くもある。

エネルギーでも、金融でも大きな変化が起きるのではないだろうか。

オバマケアが新しい制度になって、医療機器のイノベーションの時代がくるのか、Federalのシェール油田が解禁されるのか。石油価格があがってシェール革命に火がつくのか。不動産以外の分野でGDPがもっと伸びるのか。

強いアメリカをつくろうと思ったら、注目するのはそういうところだろうか。

トランプを怖がる人も多い。2015年の秋に、将来を予言しようという話になって、Accidental Super Powerという本を起業家の友達が勧めてくれた。アメリカは大国なので、戦後の同盟国に依存する体制が崩れて、韓国や日本などの同盟国に対する安全保障の関係が崩れ、50年後に世界はカオスに陥る、という予言が書いてある本だ。当時、アメリカ国防省の幹部(Scientific Advisory Boardの議長)に夕食を食べながら、意見を聞いたところ、亀のような目で睨まれて、そういうことはない、と完全に否定されたが、今はどうなのだろうか。


友達の子供は、トランプが勝った日、雨上がり窓の外をみて、綺麗だね、と呟いていた。新しい時代は、どんな時代になるのだろうか。

今よりももっと平和な世界となって欲しい。

協調しあう世の中を、皆でつくれるのだろうか。

何があっても、希望を忘れず、未来を信じ続けたい。

Yes, we can.