シリコンバレーの高速道路は、明かりが余りなく、殆ど真っ暗である。
夜にスポーツカーにのり、「いくぞ」とアクセルを踏むと、音もなく、あっという間に加速し、風になった気分になった。
電気自動車の会社のテスラ・モーターズの本社を、クラスメートの紹介で、経営者に説明を受け、見学をしたのは、もう何年も前になると思う。
その経営者は、飛行機事故で亡くなってしまい、その御葬式には、シリコンバレーの多くの著名人が参列した
そのテスラについて、一時期、ウェブサイトをチェックすると、たしか、テスラセダンについて、1000台くらいの予約がある、と書いてあった。1000台というと少なく聞こえるが、「1台600万円で1000台売ったら、60億円か」と思ったのを覚えている。
そのテスラの株価が、ご存知のとおり、うなぎのぼりで、何と、GMの4分の1の時価総額(1.1兆円くらい)となってしまった!日本の大企業でも、時価総額が1兆円の企業は、そうそうない。
さて、読者が、テスラから、オファーレターをもらい、ストックオプションを受け取って働けるとしたら、テスラで働くだろうか。テスラの株は、買い、だろうか。
GMの時価総額と利益を比較してみると、大体、時価総額が利益の10倍くらいになっているが、テスラについては、100倍くらいとなっているので、将来のポテンシャルを評価していることになる。
将来、どのくらい売れるのか。たとえば、予約台数にすると2万台を見込んでいるとある。
(こちらの記事)
さて、ビジネススクールでは、いろいろと細かいファイナンスの理論やエクセルの使い方を学んだが、 企業の本質を見るということも教わった。それはとても簡単で、
①このマーケットは、良いマーケットか
②この経営者は良い経営者か
の2点を見るというのである。そして、①は②に勝る、と習う。①が欠けていると、②があっても、企業はうまくいかない。
テスラの場合、②は、イーロン・マスクが経営している。シリコンバレーには、ペイパル・マフィアという言葉があり、ペイパルの初期から携わっている人間が、次々と起業して、成功していることからうまれた言葉だが、イーロン・マスクは、ペイパルの創業者ともいえ、また、ベンチャー企業の経営者として多くの成功を収めてきた著名人である(こちら)。
マーケットは、どうだろうか。
スタンフォードビジネススクールでは、マーケットの分析は、通常、とても簡単であると習う。次のプロセスを踏む。
①客に製品を見せる
②その瞬間、この製品は、絶対に、成功すると確信した場合、その市場のセグメントで、プロダクトは成功する
③確信しなければ、辞めるべき
私も起業をしたり、いろいろな経験をしたが、自分の経験からも、これは本当の話である。売れる商品は、お客さまの前に持っていった瞬間、「はっ」とする感動があり、確実に売れる、と分かる。逆に、売れない商品は、客の反応は微妙である。悩んでいる。
さて、冒頭に戻ろう。
振動も音もなく、一瞬で加速をするスポーツカーのテスラ。乗ると感動して、誰しも欲しくなる。しかし、金持ち以外に売れるだろうか。
全世界の石油の埋蔵量に匹敵する石油がアメリカで見つかって、ガソリン代がどんどん安くなっても、一般の消費者に売れるだろうか。
ビジネススクールでは、商品が、一般の消費者に届くようになることを、Crossing the chasmといい、著名なベンチャーキャピタリストのジェフリー・ムーアが、このことを本にした。Chasmを超えて、一般の消費者に製品が届くようになる難しさを述べた本である。
誰しもスポーツカーは欲しい。しかし、手が届かない、というのが多くの人の実情だろう。特殊なガソリンスタンド が必要ということになれば、なおさらではないだろうか。
温暖化は心配なので、予想が間違っていて欲しいが。
さて、以上の分析は、大筋では、プロであれば、誰でも考えることだと思う。とすると、GMの25%の時価総額を付けているテスラは、誰でも高すぎると考えているのではないか。
スタンフォードビジネススクールでは、イベント・ドリブン投資法というのを習う。合併のようなイベントがある場合、株価が高くなることが多いので、これを狙って投資する。そのときに習ったのは、合併の前には、情報が漏れたり、セールスマンに意図的に売上を前にズラすような指示が行われたりし、いろいろな相乗効果で、たとえ、発表前であっても、株価が上がっていったりする現象が起こることがあるということである。
そこで、テスラも、そろそろM&Aで売るのか(イーロン・マスクもスペースXとCEOを兼任で忙しいだろうし)、という推測もしてみたりしたが、1兆円も払って買おうという企業があるだろうか。
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2013年6月3日月曜日
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