先日、とある友達と会った時に、「どうしたら信念のある子を育てられるのか」と質問されました。
アメリカ生まれの子供で、英語がアメリカ人ほど達者でないこともあり、アメリカ人と口論になると負けてしまう、ということで悩まれていました。
子供には、「英語の発音や言い回しじゃなくて、内容なのだ」と自信を持って欲しい、と悩まれていました。
小さなことだと思われるかもしれませんが、これはビジネスでも生活でもとても大事なことで、日常茶飯事から大きな問題まで、様々な局面で直面する問題です。
例えば、アメリカでは給料アップやスターティングサラリーを交渉しますが、交渉する時に、絶対の信念を持って交渉する人と、「自分なんて・・・」と交渉するでは結果が異なります。生涯年収にすると少なくとも何倍も違いが出るでしょう。
あるいは、アメリカでは、アパートを追い出される人がいます。下の階の人が、「足音がうるさい」と言って、天井を突っつくようになって、最後は、大家さんから追い出されます。謙虚な日本人は、まず自分が出て行かなくではと思う人も多いので、日本人駐在員や留学生では実際に出ていかれる方が多いです。こういう時も、下の階の人が、日常の小さな足音が気になっていて、天井が薄いだけかもしれません。自分に信念があれば、どうやって戦おうと考えますので、追い出される可能性は大きく減ります。
上は、日常の例ですが、CEOになると、問題はさらに大きくなります。
会社を売る時に、1000億円のオファーがあった時に、絶対に1300億円は会社の価値はくだらない、と信念を持って交渉できるか。あるいは、交渉せずに、オファーを断れるか。
アンディ・グローブは、DRAMのビジネスから、マイクロプロセッサのビジネスに、大きくビジネスの方向性を変更しました。今までの主流ビジネスから、新しいビジネスに方向転換するのも信念のなせる技です。
2. 信念がないとどうなるか
自分にとって、何が一番大切か、という問題を考えることで、信念がついていきます。
逆に考えたことがない人は、心の路頭に迷ってしまいます。
例えば、何が一番大切かわかっていない人がお金を儲けたとしましょう。
ホームアローンの主人公の男の子の家が、大成功の後に、うまくいかなくなったことはよく知られています。記憶では確か、グレてしまったり、結構大変なことになってしまったのだと思います。
子供だったから・・・と思われるかもしれません。しかし、成功して、お金やタイトルを持つと、もっとお金やタイトル(パワー)を欲するようになること(中毒になること)は、学術論文上、知られています。例えば、スタンフォードビジネススクールの教授のJeffrey PfefferのPowerという教科書にも、このことが記載されています。
どんどんお金やタイトルを追い求める人生は幸せなのでしょうか。
まずはファーストクラスに乗るようになります。いいホテルに泊まって・・・どんどん「上」(お金とタイトルという意味で)を求めて、優秀なら、アメリカのいい会社では、毎年昇給したり、給料がぐんぐん上がっていきます。
気がついたら(もっと悪い例では気がつかずに)、お金と権力を求めている人生になっています。
そして・・・ビジネススクールを卒業して、10年間がたちます。
ある朝、ベッドから起きます。「ビジネススクールにいた時に、毎日湧き出てきた自分のアイディアと夢は、どこに行ってしまったのだろう」と嘆くようになります。
実際に、こういう人は、とても多いのです。ここまで金と権力がくっついて、劣化してしまってから、元(精神面で若く、アイディアと希望に溢れた状態)に戻るのには、もちろん無理ではありませんが、努力が必要でしょう。
3. どうすれば信念が身につくのか
どうすれば信念が身につくのか。
(1)「成功」は与えられるものだという認識
まず、自分の置かれている幸せな状況(日本人で受験を考えるポジションにいるだけで世界の多くの人よりも恵まれています)が、自分が獲得したものだと思わないことでしょう。例えば、親が与えてくれたものは、自分の力で獲得したと言えるのでしょうか。ホームアローンの子が成功したのは、もちろん自分も頑張ったからでしょうが、彼だけの力だと勘違いした瞬間に負の連鎖が始まります。多くの「成功」は、与えられるものです。
(2)おてんとうさまに恥ずかしくないこと
道を踏み外してしまうと、自分を見失います。
(3)お金と権力が一番大切だと思わないこと
上に書いたとおりです。
(4)一度信じたら最後までやり遂げること
多くの信じるものは、目に見えませんので、信じて最後までやり遂げるのは大変です。これは前回のブログの記事の通りです。
(5)何が一番大切なのか理解していること
これがないと多くの場合で目的を持てないので、信じる対象がないことが多いです。ガイドブックにも、どういうものが、what matters most to youになりうるのか、色々と書きましたが、ブログでも次回にでも、もう少し考えて見たいと思います。