Hard Thingsというシリコンバレーでは有名なベン・ホロウィッツ氏が書いた本を読んでいる。もともとネットスケープの幹部で、その後、自分の会社で社長を経験した後、有名なベンチャーキャピタルファンドを創業した。日本語でも出ているようだ(こちらから買える)
濃い内容だが、以下の点が実践的で特に勉強になった。
1.ベン・ホロウィッツが、投資をする際にCEOを評価するときに特にみる3つの点
(1) Does CEO know what to do (right strategy/story,
speed and quality of decision) (2) Can CEO get the company to do what s/he knows (3) Can CEO Get the desired results against objectives
(2)について、リーダーシップのスキル(後記)、正しい人材を正しい場所に配置し、社内で情報が十分に共有される環境をつくり、世界一のチームをつくり、常にチームが世界一かをチェックする能力があるかをチェックする。具体的には、例えば、従業員がミッションに貢献し、仕事を達成する環境をつくっているか、それとも、社内政治ばかりしているか。ネットフリックスが出しreference guide to freedom and responsibility cultureに具体例が書いてある。
2番目のタイプについて、ビル・キャンプベルというのは、San Francisco 49ersというフットボールのチームを弱小から最強にのしあげた伝説のコーチ。その後、Go CorporationというノートパソコンのかわりにIPADみたいな製品(ただし指ではなくペンを使う)を売ろうという会社のCEOになり、従業員が最高だと感じる会社をつくったが、市場にプロダクトがフィットするタイミングがあわず、世紀の大失敗をする。しかし、Go Corporationに大金を投資した投資家達は、ビル・キャンプベルと色々とビジネスをする。「正しい野心をもっているタイプ」というのは、会社を私物として扱うのではなく、会社のために経営をする人のこと。アメリカでは実は悲しいことに珍しいのだが、これは、ポジションが上がれば上がるほど、人は権力の虜になるからだろう。ベン・ホロウィッツは、これは生まれながらの才能で学べるものではない、と書くが、このスキルをみにつける本は色々と出ており、例えば、Ten Laws of TrustというJoel Petersenというジェット・ブルー社の会長が書いた本には、このタイプになるための方法が色々と書いてある。また別の機会に紹介したいと思う。
さて、ライバル校のハーバードビジネススクールを「工場」と批判するスタンフォードビジネススクールでは、グローブ氏の解釈するマルローのモデルは、第一学期を除いて、成立していない(ただし、これはクラスの中だけの話であり、マルローのモデルを経営のツールとして如何にして使用するかどうかということ「も」教えるクラスはある。Managing
and Building Sales Enterpriseという超人気クラスである。このクラスは色々なことを教え、グローブ氏の解釈するマルローのメソッドについては、「各セールス担当者の営業成績は公開することで、各人のモチベーションがあがるので、公開すべきである」と先生が授業中に一言述べるだけであり、別段、マルローのモデルを教えるクラスというわけではない)。スタンフォードビジネススクールでは、第一学期では、ほぼ全員退学しないかどうか必死なので、マルローのモデルが成立する。第二学期以降は、ほぼ全員が退学しないことが分かる。
これは、人生で最も大切なものは、Self-Interestだけな人には、手に入らないからである(と少なくとも私は思う)。だから、What
matters most to youという質問に、Moneyと回答したら、どんなに上手にエッセイを書いても、合格しないだろう。お金を生み出すだけのロボットはクラスメートにいても学校のカルチャーにフィットしないからである(「どのような組織であっても、カルチャーにフィットする人のみを採用するべきである」と一学期で習った)。
シュバイツァーは、以下の名言を残した。「The only really happy people are those
who have learned how to serve」(本当に幸せなのは、他の人にどのようにして与えるのか、ということを学んだ人だけである)。他の人に何かをしてあげたとき、幸せ、という感情を享受できる、とシュバイツァーは述べているのである。幸せ、という感情をもっているとき、人は、ロボット(存在しているだけ・空虚)ではなく、本当に生きており、満たされている存在となる。
Touchy Feelyが超人気授業なのは、他の人と感情をシェアしている瞬間が、自分が生きている、と実感できる瞬間だからである。もし、ある人に感情がなければ、工場で製品は生み出せても、生きている、と実感できないだろう。このような人生は空虚であり、存在しているだけである。デカプリオ主演の映画のWolf
of Wall Streetをみたことがあるだろうか。主人公は、アンディ・グローブの解釈するマルローのレベル5の段階で、突き動かされたように進んでいく。派手な人生だが、空虚である。工場でお金を生み出し、そしてその金を(セレブを呼んだプールパーティなどで)消費するマシーン。どんなに突き動かされたように進んでも、進んでも、決して満たされることはない。
・どんな人として生きていきたいのか。(何をするのか、ではなく、どういう人なのか、ということ。具体的には、例えば、正直なのか、約束を守るのか、といったことである。別の例では、Wolf
of Wall Streetに出てくるような浪費家なのか、それとも、森鴎外の小説『高瀬舟』に登場する喜助のように「足ることを知っている」のか)