Kleiner Perkinsについて記載をしたついでに、彼らの投資基準を下に書いておきたいと思う。
一人のパートナーが9から11のポートフォリオにしか関与できないため、これらを満たさないスタートアップには投資しないらしい。
1. Leadership
2. Large and transformational market
3. Reasonable financing
4 Sense of Urgency
5. People who are missionaries but not mercenaries
1番目は分かりやすい。
2番目について、「マーケットがあれば技術のリスクはとるが、マーケットが大きくないとかReadyでない分野では投資しない」とコメントしていた。確かに、彼らのポートフォリオを見てみると、業界の第一人科学者から「その技術はうまくいかない」とコメントを受けた企業がある。
3番目について、スタートアップのファウンダーは、あるべきバリュエーションよりも高過ぎるバリュエーションを求めすぎることがある。これは単にカネを入れすぎることはできないというよりも、「そういう目先の欲深い人はそもそも成功しない」ということだと思う。例えば、最初のバリュエーションが高すぎるとRound B以降でファイナンスがつきにくくなってしまう。結局、IPOまでいけず、潰れてしまうことになりかねない。目先の欲にとらわれてはダメということなのだろう。
4番目について、競争者に勝って、最初に動かないといけないし、一番にならないといけない。そのために「何としてもやってやる」という気構えが必要との旨を話していた。
5番目について。金儲けが目的の人ではなく、世の中にバリューをつくりだすなど、別のより崇高なことが目的の人でないといけない。5番目については、John Doerrは、Mercenaryでもうまく行くと講演したことがあるが、自分が一緒に働くのなら、missionaryの方が良いとも講演していた。5番目については、以前紹介したJohn Doerrの愛読書のMonk and the Riddle: The Education of a Silicon Valley Entrepreneur (Harvard Business School press tip sheet)に更に詳しい説明がのっている。クライナーのパートナーが書いた本だ。
ここまで書くと、
「そんなの当たり前じゃないか」
と思われる方も多いかもしれない。
しかし、実際にいくつかシリコンバレーのスタートアップとプロジェクトをしてみて、5つ揃っていない企業は結構ある。
ある企業は、素晴らしい技術を持っていたが、上記の3番と5番に欠けていた。金儲けに走っているのが目に見えるのだ。有名なベンチャーキャピタリスト、Vinod KhoslaからTermSheetを提示されたのに、バリュエーションが低い、とはねた。その企業はまだプロダクトもなかったし、高いバリュエーションを期待するのは難しい。mercenariesにありがちなそうなのだが、チームにdiversityがなく、顧客よりも競争相手にフォーカスしてしまっており、さらに、ミッションやバリューよりもファイナンスの話が多い。こういったすべての帰結として、従業員もついていかず、上記の1番にも欠けてしまっていた。
ある企業は、日本の大企業よりも動くのがのろく、また、マーケットがとても小さかった。上記の2番と4番に欠けていたのだ。
スタンフォードの教授で、ヴェリタスのファウンダーのMark Leslie教授は、もう少し単純なことを言われていた。
「マーケットが悪くて、チームが良いときには、マーケットが勝つ。マーケットが良くて、チームが悪いときにもマーケットが勝つ。マーケットもチームも良いときには、何か特別なことが起こる」
たしかに、上記の2番目以外は、「チーム」という枠で人くくりにできる。
2009年12月31日木曜日
2009年12月30日水曜日
Stanford MBAの教授は日本をどう見ているか
スタンフォードビジネススクールへの出願の追い上げの時期だ。
私も2年前のクリスマス頃の時期には、エッセイを書き直して書き直して過ごしていたことを覚えている。
そういう時期なので、Stanford GSBの教授が、
「日本についてどう見ているのか」
について書いてみたい。
スタンフォードビジネススクールの元Dean(学長)であるRobert Joss。
授業を取って以来、顔を覚えてもらい、自宅の豪邸にも呼ばれた。スタンフォードビジネススクールでは、教授が学生を家に呼び、学生が教授をコーヒーやランチに誘うなど、教授がapproachableなところに特徴がある。
彼が日本の朝日新聞のシンポジウムの討論会に出て帰ってきた後のこと。
朝日新聞が彼の発言をどうまとめたのか、「翻訳してくれ」と部屋に呼び出された。
私:「読んでみました。(冗談で)レピュテーションを下げるような発言はありませんでした。」
Bob:「笑。それよりも、Y.I.、日本にいったが、元気がなくてびっくりしたよ。アメリカは、不景気だけど、『自分たちならできる』という精神を忘れていないし、元気だぞ」
私:「日本は、起業家が社会的にまだまだ評価されていないと思います。青色LEDの発明者は、『日本で起業して失敗したら自殺しなくてはいけない』と演説したそうです。もっと、日本人の合格者を増やしていただけると嬉しいのですが。」
Bob:「日本のGDPが世界で2番であることを考えると、できれば3人よりは合格者を増やすべきだ。起業もいいけど、私は、日本の問題は、企業の組織のマネジメントにあると思う。」
Bob:「日本はモノづくりはうまい。しかし、チームとか、組織のカルチャーとかは、まだまだだと思う。例えば、会議で若い人達が下を向いて発言をしないのでは人材の無駄づかいだ。スタンフォードビジネススクールに、それを変えられる人に来て欲しい。」
Bob:「あと、日本のサービス産業は、世界のレベルと比べて低いよね。」
Bob Jossは、Deanの前には、ウェルズファーゴ銀行の幹部、オーストラリアで最大の銀行のCEOなどで働いた経歴を持つ。今は、シティバンクの取締役だ。
別の教授Edward Lazearからも同じようなコメントを受けた。
彼は、元大統領経済諮問委員会委員長だった。アメリカの大統領に対して経済のアドバイスをする人の中で、一番偉い人だ。
教授「日本の景気(注:失われた10年のことを指し、リーマンショックのことを指していない)は、随分前に回復している。日本政府が、銀行に対して打ち出した政策は、遅くはあったが、成功したんだ。リーマンショックのとき、私がアメリカ政府にいたときには、日本政府が当時打ち出した政策を真似したんだ。ただ、日本のように遅い段階でしたのではなく、物凄いスピードで実行したんだ。結果は素晴らしいと思う。アメリカの景気は随分前から上向きに回復してきているよ。」
教授「日本にとっての誤算は、中国をはじめとした他のアジアの国の台頭だ。彼らが、ものづくりの競争に入ってきた。これらの国に対して、これから日本がものづくりの競争に勝っていくのは、私にはどんどん厳しいと思う。サービス産業に移行すべきだろう」
教授「サービス産業に移行すれば、人材の流動性も進む。ものづくりのスキルよりもサービス産業のスキルの方が、industry specificじゃないからね。」
大統領アドバイザーだったほどの教授の授業をとれるのは本当に幸福なことだ。
しかし、サービス産業に移行すべきだというのはどういうことだろうか。
元インテル3代目CEOで「経営の神様」と呼ばれるアンディ・グローブ。
彼は、今でもスタンフォードビジネススクールで教鞭をとっている。
そんなアンディ・グローブの授業をとる機会に恵まれた。電気自動車とクリーンな石炭の分野で、どのような戦略行動(Strategic Action)をとるべきか、という授業だ。
彼が授業で強調した概念の一つが、ストラテジックインフレクションポイントという概念だ。(詳細は、インテル戦略転換を参照されたい)
これは、技術、競争、サプライヤーパワー、バイヤーパワー、Substituteなどが飛躍的に変化する(10X Forces)と、それが様々な変化を呼び、幾何級数的な変化を引き起こし、結果、従来通用した競争の方程式が、通用しなくなり、新たな競争の方程式に適用できた企業は生き残るが、適用できなかった企業は痛い目を見る、という概念だ。
良くあがる例が、チャップリンとウォルマート。技術の飛躍的な変化で、無声映画に対して、音声映画が可能となったとき、変化に適応せず、無声のパントマイムにこだわった役者達は痛い目を見た。また、ウォルマートが町にやってくると、「競争」に10X Forceが生じる。町の小さな店は、今までのやり方で競争するのではなく、例えば「文房具にフォーカスする」といったストラテジックな変化をする必要があるというのだ。
アンディ・グローブは、ストラテジック・インフレクション・ポイントの概念が国家のレベルでも通用すると考えていた(これをSelf-Similarity Across Scaleというらしい)。
「中国や韓国の台頭で『競争』に10X Forcesが生じ、Strategic Inflection Pointとなった。日本にとって競争の方程式が変わった」Edward Lazear教授はそのように考えたのかもしれない。
しかし、現実問題として、日本は、世界のほかの国と言葉とカルチャーが違うから、サービス産業での競争にはハンデがつきやすいのではないか。しかも、百歩譲って、サービス産業に移行するとしても、具体的には何なのか。
そう質問しようとしたとき、Lazear教授は、「記者会見があるからまたね」と去っていってしまった。
私も2年前のクリスマス頃の時期には、エッセイを書き直して書き直して過ごしていたことを覚えている。
そういう時期なので、Stanford GSBの教授が、
「日本についてどう見ているのか」
について書いてみたい。
スタンフォードビジネススクールの元Dean(学長)であるRobert Joss。
授業を取って以来、顔を覚えてもらい、自宅の豪邸にも呼ばれた。スタンフォードビジネススクールでは、教授が学生を家に呼び、学生が教授をコーヒーやランチに誘うなど、教授がapproachableなところに特徴がある。
彼が日本の朝日新聞のシンポジウムの討論会に出て帰ってきた後のこと。
朝日新聞が彼の発言をどうまとめたのか、「翻訳してくれ」と部屋に呼び出された。
私:「読んでみました。(冗談で)レピュテーションを下げるような発言はありませんでした。」
Bob:「笑。それよりも、Y.I.、日本にいったが、元気がなくてびっくりしたよ。アメリカは、不景気だけど、『自分たちならできる』という精神を忘れていないし、元気だぞ」
私:「日本は、起業家が社会的にまだまだ評価されていないと思います。青色LEDの発明者は、『日本で起業して失敗したら自殺しなくてはいけない』と演説したそうです。もっと、日本人の合格者を増やしていただけると嬉しいのですが。」
Bob:「日本のGDPが世界で2番であることを考えると、できれば3人よりは合格者を増やすべきだ。起業もいいけど、私は、日本の問題は、企業の組織のマネジメントにあると思う。」
Bob:「日本はモノづくりはうまい。しかし、チームとか、組織のカルチャーとかは、まだまだだと思う。例えば、会議で若い人達が下を向いて発言をしないのでは人材の無駄づかいだ。スタンフォードビジネススクールに、それを変えられる人に来て欲しい。」
Bob:「あと、日本のサービス産業は、世界のレベルと比べて低いよね。」
Bob Jossは、Deanの前には、ウェルズファーゴ銀行の幹部、オーストラリアで最大の銀行のCEOなどで働いた経歴を持つ。今は、シティバンクの取締役だ。
別の教授Edward Lazearからも同じようなコメントを受けた。
彼は、元大統領経済諮問委員会委員長だった。アメリカの大統領に対して経済のアドバイスをする人の中で、一番偉い人だ。
教授「日本の景気(注:失われた10年のことを指し、リーマンショックのことを指していない)は、随分前に回復している。日本政府が、銀行に対して打ち出した政策は、遅くはあったが、成功したんだ。リーマンショックのとき、私がアメリカ政府にいたときには、日本政府が当時打ち出した政策を真似したんだ。ただ、日本のように遅い段階でしたのではなく、物凄いスピードで実行したんだ。結果は素晴らしいと思う。アメリカの景気は随分前から上向きに回復してきているよ。」
教授「日本にとっての誤算は、中国をはじめとした他のアジアの国の台頭だ。彼らが、ものづくりの競争に入ってきた。これらの国に対して、これから日本がものづくりの競争に勝っていくのは、私にはどんどん厳しいと思う。サービス産業に移行すべきだろう」
教授「サービス産業に移行すれば、人材の流動性も進む。ものづくりのスキルよりもサービス産業のスキルの方が、industry specificじゃないからね。」
大統領アドバイザーだったほどの教授の授業をとれるのは本当に幸福なことだ。
しかし、サービス産業に移行すべきだというのはどういうことだろうか。
元インテル3代目CEOで「経営の神様」と呼ばれるアンディ・グローブ。
彼は、今でもスタンフォードビジネススクールで教鞭をとっている。
そんなアンディ・グローブの授業をとる機会に恵まれた。電気自動車とクリーンな石炭の分野で、どのような戦略行動(Strategic Action)をとるべきか、という授業だ。
彼が授業で強調した概念の一つが、ストラテジックインフレクションポイントという概念だ。(詳細は、インテル戦略転換を参照されたい)
これは、技術、競争、サプライヤーパワー、バイヤーパワー、Substituteなどが飛躍的に変化する(10X Forces)と、それが様々な変化を呼び、幾何級数的な変化を引き起こし、結果、従来通用した競争の方程式が、通用しなくなり、新たな競争の方程式に適用できた企業は生き残るが、適用できなかった企業は痛い目を見る、という概念だ。
良くあがる例が、チャップリンとウォルマート。技術の飛躍的な変化で、無声映画に対して、音声映画が可能となったとき、変化に適応せず、無声のパントマイムにこだわった役者達は痛い目を見た。また、ウォルマートが町にやってくると、「競争」に10X Forceが生じる。町の小さな店は、今までのやり方で競争するのではなく、例えば「文房具にフォーカスする」といったストラテジックな変化をする必要があるというのだ。
アンディ・グローブは、ストラテジック・インフレクション・ポイントの概念が国家のレベルでも通用すると考えていた(これをSelf-Similarity Across Scaleというらしい)。
「中国や韓国の台頭で『競争』に10X Forcesが生じ、Strategic Inflection Pointとなった。日本にとって競争の方程式が変わった」Edward Lazear教授はそのように考えたのかもしれない。
しかし、現実問題として、日本は、世界のほかの国と言葉とカルチャーが違うから、サービス産業での競争にはハンデがつきやすいのではないか。しかも、百歩譲って、サービス産業に移行するとしても、具体的には何なのか。
そう質問しようとしたとき、Lazear教授は、「記者会見があるからまたね」と去っていってしまった。
Stanford MBAの学生の『憧れの職業』
「Y.I.、クライナーパーキンスって知っている?最近はじめて名前を聞いたよ~」
ベトナム人のクラスメートに言われて驚いた。まさかシリコンバレーの中心で、クライナーパーキンスを知らないスタンフォードビジネススクールの学生がいるとは。。。
「意外と知られていないのかな」
そう思って日本の友人に聞いてみると、意外と
「クライナーって何?」
という反応。
そこで、一度クライナーパーキンスについて、簡単に書いてみることにした。
シリコンバレーでクライナーパーキンスは知らない人がいないくらい有名な存在。
世界でトップのベンチャーキャピタルの一つだ。
そのトラックレコードを下にまとめてみた(クライナーパーキンスのパートナーJohn Doerrが2009年に公表したものをそのまま翻訳している。ただし、1ドル100円で換算)。
・Annual Revenue:10兆円
・時価総額:50兆円
・33年間で475件に投資。
・今までに173件がIPO。163件がM&AでExit。
日本の国家予算が85兆円くらいだと思われる。
Annual Revenueは、その約9分の1、時価総額はその半分以上。
33年間で475件に投資して、336件がIPO又はM&AでExitしているということは、少なく見積もっても、約70%がきちんとExitしていることになる。実際には、成功率はもっと高いはずだ(不況の中で好景気になるまでIPOを待っているポートフォリオや、まだ投資して間もない初期の段階にあるポートフォリオがあるだろう)。
John Doerrは、「自分の仕事は、投資家から投資された金額を10倍にして返すことだ。そして、今までは、それに成功してきた」と話す。
「自分のお金を10倍にしてくれる」のであれば、誰でもクライナーパーキンスにカネを入れたくなる。
しかし、クライナーパーキンスに投資するのは難しい。とても閉鎖的なコミュニティなのだ。会ってもらうのさえ難しい。日本の投資家で、「クライナーにカネを入れることができた」という例は聞いたことがない。『やっと会ってもらえた』と興奮する例はある。
クライナーは、創業初期の段階から、グーグル、アマゾン、AOL、コンパック、ジェネンテック、Intuit、サン・マイクロシステムズ、ネットスケープ、ロータスといったそうそうたる企業に投資して、育て上げてきた。
クライナーが投資をして育てた会社は、どうなったか。
例えば、1994年にクライナーのJohn Doerrは、ネットスケープに4億円を投資した。昔、スタンフォードビジネススクールのアンディ・グローブの授業中に、John Doerrが、ネットスケープに熱狂していたことは今でも語り継がれている。そのときアンディ・グローブは、「ネットスケープは、ネットの歴史で脚注くらいの存在になるだろう」と反対したそうだ。結局、ネットスケープは、4000億円で買収された。
グーグルに対する投資の際には、20%の株式を25億円で取得。その後、グーグルの時価総額は一時期10兆円をつけた。
アマゾンでも、投資額が55000%となったといわれている。
クライナーのチームには、アルゴア元副大統領、パウエル元国務長官といった政治家もいれば、サン・マイクロシステムズを創業時から一流企業に育て上げたCTOのBill Joyなどの技術家、オラクル(世界No2のソフトウェアの会社)の社長兼COO出身のRay Laneなどのビジネスマンもいる。
「クライナーパーキンスのパートナーにいつかなりたい」というのは、多くのスタンフォードビジネススクールの学生の普通の心情だ。クライナーのパートナーは、スタンフォードビジネススクールの学生にとっても憧れの職業なのだ。しかし、ビジネススクールを卒業してすぐには、会うことは出来てもパートナーにはなれない。卒業後に「1年くらいしたら辞めます。単なる経験として働いてみたい」と話せば、プリンシパルのレベルであれば、雇ってもらえる例がある。しかし、彼らがパートナーにのぼっていくことはないだろう。パートナーになるのは、アルゴアのようにずば抜けた人か、クライナーのポートフォリオで、(投資ではなく)マネジメントをした経験のあるアントレプレナーなのだ。横からパートナーになるのが通常だ。
それもあって、スタンフォードビジネススクールでは、「若くて元気のあるうちには、起業して苦労して、年をとって疲れたら、クライナーなどのベンチャーキャピタルで、投資をして、ポートフォリオを助ける」というキャリアパスを理想と考える学生が多い。
そんなクライナーも最近クリーンテックに対する投資をはじめた。
今ではクリーンテクノロジーで50のポートフォリオを持つ。
しかし、一見すると、苦戦しているように見えた。
・例えばポートフォリオのBloomenergyは、燃料電池の会社。しかし、秘密主義で有名だ。スタンフォードビジネススクールを出た従業員に対してさえ、情報をあかさなかった。こうした態度から、「秘密にするということは何もないのだろう。何かあれば情報を出すはずだ」という噂がスタンフォードで囁かれるようになった。さらに、「燃料電池って、随分前から『実現まであと10年』と言い続けられて来たけど、結局何10年たっても実現しないし、今でも『実現まであと10年』っていわれているよね」という声も出るようになってきた。
・AusraはSolar Thermalの会社。Solar Thermalというと格好良いが、要は、太陽光をレンズで集光して水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回すという原理だ。1年位前に、マネジメントが、「今のままではコスト面で勝てない」と弱音を吐いたという噂がシリコンバレーで囁かれた。
・Fiskerはプラグインハイブリッドカーの会社だ。しかし、日本の自動車の大企業などと正面衝突するのだろうか。。。何か物凄いCompetitive Advantageがあるのであれば別だが、そういう情報は少なくともスタンフォードのレベルには入ってこない。「大丈夫なのかなぁ」という気持ちになってくる。
・また、バイオ燃料の会社に大量に投資をしている。しかし、スタンフォードのノーベル賞を受賞した教授は、バイオ燃料が、CO2排出量を減らすのは難しいという旨を熱弁していた。また、バイオ燃料の会社を一流にするのは200億円程度の投資が必要といわれており、Capital Intensiveだ。
・唯一、最近シリコンバレーでIPOの噂が囁かれるSilverSpringNetworksに対しては、創業初期に投資をすることができず、最近になってようやくカネを入れた。
また、クライナーのクリーンテクノロジーのポートフォリオでIPOした会社があるという話はあまり聞かない。
しかし、百聞は一見に如かず、実際に働いてみようということで、クライナーの会社で数ヶ月間くらい働いてみた。
もとサンマイクロシステムズのCTOであるBill Joyがリードインベスターの会社だ。
ステルスモードの会社なので、詳細は記載できないが、確かに凄い。
他の多くのベンチャーとはレベルが違った。
電池のコストが馬鹿げているほど安いのだ。
「もしかすると本当に世界を変えるかもしれない」と感じた。
さて、そんなクライナーパーキンスで、トップの投資家と言われているJohn Doerrの愛読書のリストと「スタートアップ成功マニュアル」を手に入れた。
まず、彼の愛読書は、以下のとおりだ。
Startup: A Silicon Valley Adventure Story
Monk and the Riddle: The Education of a Silicon Valley Entrepreneur (Harvard Business School press tip sheet)
Good to Great: Why Some Companies Make the Leap...And Others Don't
Banker To The Poor: Micro-Lending and the Battle Against World Poverty
The World Is Flat: A Brief History of the Twenty-first Century
Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution-and How It Can Renew America
An Inconvenient Truth: The Planetary Emergency of Global Warming and What We Can Do About It
Our Choice: A Plan to Solve the Climate Crisis
そして、彼のスタートアップ成功マニュアルは、以下のとおりだ。
スタートアップ成功マニュアル
ベトナム人のクラスメートに言われて驚いた。まさかシリコンバレーの中心で、クライナーパーキンスを知らないスタンフォードビジネススクールの学生がいるとは。。。
「意外と知られていないのかな」
そう思って日本の友人に聞いてみると、意外と
「クライナーって何?」
という反応。
そこで、一度クライナーパーキンスについて、簡単に書いてみることにした。
シリコンバレーでクライナーパーキンスは知らない人がいないくらい有名な存在。
世界でトップのベンチャーキャピタルの一つだ。
そのトラックレコードを下にまとめてみた(クライナーパーキンスのパートナーJohn Doerrが2009年に公表したものをそのまま翻訳している。ただし、1ドル100円で換算)。
・Annual Revenue:10兆円
・時価総額:50兆円
・33年間で475件に投資。
・今までに173件がIPO。163件がM&AでExit。
日本の国家予算が85兆円くらいだと思われる。
Annual Revenueは、その約9分の1、時価総額はその半分以上。
33年間で475件に投資して、336件がIPO又はM&AでExitしているということは、少なく見積もっても、約70%がきちんとExitしていることになる。実際には、成功率はもっと高いはずだ(不況の中で好景気になるまでIPOを待っているポートフォリオや、まだ投資して間もない初期の段階にあるポートフォリオがあるだろう)。
John Doerrは、「自分の仕事は、投資家から投資された金額を10倍にして返すことだ。そして、今までは、それに成功してきた」と話す。
「自分のお金を10倍にしてくれる」のであれば、誰でもクライナーパーキンスにカネを入れたくなる。
しかし、クライナーパーキンスに投資するのは難しい。とても閉鎖的なコミュニティなのだ。会ってもらうのさえ難しい。日本の投資家で、「クライナーにカネを入れることができた」という例は聞いたことがない。『やっと会ってもらえた』と興奮する例はある。
クライナーは、創業初期の段階から、グーグル、アマゾン、AOL、コンパック、ジェネンテック、Intuit、サン・マイクロシステムズ、ネットスケープ、ロータスといったそうそうたる企業に投資して、育て上げてきた。
クライナーが投資をして育てた会社は、どうなったか。
例えば、1994年にクライナーのJohn Doerrは、ネットスケープに4億円を投資した。昔、スタンフォードビジネススクールのアンディ・グローブの授業中に、John Doerrが、ネットスケープに熱狂していたことは今でも語り継がれている。そのときアンディ・グローブは、「ネットスケープは、ネットの歴史で脚注くらいの存在になるだろう」と反対したそうだ。結局、ネットスケープは、4000億円で買収された。
グーグルに対する投資の際には、20%の株式を25億円で取得。その後、グーグルの時価総額は一時期10兆円をつけた。
アマゾンでも、投資額が55000%となったといわれている。
クライナーのチームには、アルゴア元副大統領、パウエル元国務長官といった政治家もいれば、サン・マイクロシステムズを創業時から一流企業に育て上げたCTOのBill Joyなどの技術家、オラクル(世界No2のソフトウェアの会社)の社長兼COO出身のRay Laneなどのビジネスマンもいる。
「クライナーパーキンスのパートナーにいつかなりたい」というのは、多くのスタンフォードビジネススクールの学生の普通の心情だ。クライナーのパートナーは、スタンフォードビジネススクールの学生にとっても憧れの職業なのだ。しかし、ビジネススクールを卒業してすぐには、会うことは出来てもパートナーにはなれない。卒業後に「1年くらいしたら辞めます。単なる経験として働いてみたい」と話せば、プリンシパルのレベルであれば、雇ってもらえる例がある。しかし、彼らがパートナーにのぼっていくことはないだろう。パートナーになるのは、アルゴアのようにずば抜けた人か、クライナーのポートフォリオで、(投資ではなく)マネジメントをした経験のあるアントレプレナーなのだ。横からパートナーになるのが通常だ。
それもあって、スタンフォードビジネススクールでは、「若くて元気のあるうちには、起業して苦労して、年をとって疲れたら、クライナーなどのベンチャーキャピタルで、投資をして、ポートフォリオを助ける」というキャリアパスを理想と考える学生が多い。
そんなクライナーも最近クリーンテックに対する投資をはじめた。
今ではクリーンテクノロジーで50のポートフォリオを持つ。
しかし、一見すると、苦戦しているように見えた。
・例えばポートフォリオのBloomenergyは、燃料電池の会社。しかし、秘密主義で有名だ。スタンフォードビジネススクールを出た従業員に対してさえ、情報をあかさなかった。こうした態度から、「秘密にするということは何もないのだろう。何かあれば情報を出すはずだ」という噂がスタンフォードで囁かれるようになった。さらに、「燃料電池って、随分前から『実現まであと10年』と言い続けられて来たけど、結局何10年たっても実現しないし、今でも『実現まであと10年』っていわれているよね」という声も出るようになってきた。
・AusraはSolar Thermalの会社。Solar Thermalというと格好良いが、要は、太陽光をレンズで集光して水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回すという原理だ。1年位前に、マネジメントが、「今のままではコスト面で勝てない」と弱音を吐いたという噂がシリコンバレーで囁かれた。
・Fiskerはプラグインハイブリッドカーの会社だ。しかし、日本の自動車の大企業などと正面衝突するのだろうか。。。何か物凄いCompetitive Advantageがあるのであれば別だが、そういう情報は少なくともスタンフォードのレベルには入ってこない。「大丈夫なのかなぁ」という気持ちになってくる。
・また、バイオ燃料の会社に大量に投資をしている。しかし、スタンフォードのノーベル賞を受賞した教授は、バイオ燃料が、CO2排出量を減らすのは難しいという旨を熱弁していた。また、バイオ燃料の会社を一流にするのは200億円程度の投資が必要といわれており、Capital Intensiveだ。
・唯一、最近シリコンバレーでIPOの噂が囁かれるSilverSpringNetworksに対しては、創業初期に投資をすることができず、最近になってようやくカネを入れた。
また、クライナーのクリーンテクノロジーのポートフォリオでIPOした会社があるという話はあまり聞かない。
しかし、百聞は一見に如かず、実際に働いてみようということで、クライナーの会社で数ヶ月間くらい働いてみた。
もとサンマイクロシステムズのCTOであるBill Joyがリードインベスターの会社だ。
ステルスモードの会社なので、詳細は記載できないが、確かに凄い。
他の多くのベンチャーとはレベルが違った。
電池のコストが馬鹿げているほど安いのだ。
「もしかすると本当に世界を変えるかもしれない」と感じた。
さて、そんなクライナーパーキンスで、トップの投資家と言われているJohn Doerrの愛読書のリストと「スタートアップ成功マニュアル」を手に入れた。
まず、彼の愛読書は、以下のとおりだ。
Startup: A Silicon Valley Adventure Story
Monk and the Riddle: The Education of a Silicon Valley Entrepreneur (Harvard Business School press tip sheet)
Good to Great: Why Some Companies Make the Leap...And Others Don't
Banker To The Poor: Micro-Lending and the Battle Against World Poverty
The World Is Flat: A Brief History of the Twenty-first Century
Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution-and How It Can Renew America
An Inconvenient Truth: The Planetary Emergency of Global Warming and What We Can Do About It
Our Choice: A Plan to Solve the Climate Crisis
そして、彼のスタートアップ成功マニュアルは、以下のとおりだ。
スタートアップ成功マニュアル
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