スタンフォードMBAでの生活も1年間が終わろうとしており、簡単に1年間を振り返ってみたいと思います。良かった点・反省点という形で記載しますので、これからMBA留学される方のご参考になれば幸いです。また、しばしば質問を受けるスタンフォードで利用しているテキストについても記載したいと思います。
1.入学前の夏
・良かった点
サマースクールは、生活のセットアップ・英語での議論になれる・新しい友人との出会いという意味で、行って良かったと思います。
・反省点
以下の本を読んでおけば良かったと思っています。
Saloner教授のテキスト:
Saloner教授は、スタンフォードMBAの次期Deanです。General Managementの概観ができる本です。この本を読んでおくと、いわゆるMBAのコア科目の内容を有機的に結合することができます。
入学するとまず読まされるのですが、忙しい最初の学期に読むのには相当ボリュームがあり、夏に読んでおけば良かったと思ったを覚えています。
オーライリー教授の本:
オーライリー教授は、スタンフォードMBAの名物教授です。企業戦略の遂行の方法、イノベーションを起こす方法、イノベーションを生かす企業とイノベーションに殺される企業といったことを述べています。読んでおくと、Human Resource Management、Organizational Behaviorといったコア科目を有機的に結合することができるので、入学後するとまず読まされます。
2.秋学期
・良かった点
秋学期は、クラスメート間で競争がありましたので、卒業出来るかが心配で必死で勉強しました。Saloner教授のテキスト、オーライリー教授の本も数回読み、配布されるケースも数回読んで、変な内容でも構わず授業中に発言するようにつとめました。
・反省点
意地になってテキストやケースを読む戦略をとったのですが、後から考えてみると、効率を重視するべきだったと思います。
・テキスト
Saloner教授のテキスト、オーライリー教授の本ほどは、入学前に読んでおく必要性を感じませんが、スタンフォードMBAでは秋学期には以下のテキストを利用しています。
デマルゾ教授のファイナンスの教科書:
デマルゾ教授は、スタンフォードMBAの名物教授。一通りのファイナンスの理論が書いてある本。Quantitativeな方程式を学べるほかに、Debt Equity Ratioを高く設定するのがOptimalなのはどのようなケースか、オプションの本質は何か、敵対的買収をすべき場合といった、より本質的な内容にも触れてあり、勉強になりました。
Critical Analytical Thinkingで利用した本
いわゆるベストセラータイプの本の結論を、論理的にどのように批判するのかといった観点で利用しました。
3.冬休み
以前にブログで御紹介しましたように、グアテマラへのトリップに参加しました。戦地で生まれ育った友人などの話を聞き、新しい人生観が開けました。
4.冬学期
・良かった点
サマースクールの間に以下の本を読んで勉強しておいたので、多少楽でした。
Economics (Addison-Wesley Series in Economics)
Essentials of Accounting (Essentials of Accounting)
・注目の授業:Environmental Modelingの授業
温暖化等環境問題について、モデリング(モンテカルロシュミレーションなど)をする授業を履修しましたが、ノーベル賞受賞科学者等様々な教授が講演をされ、大変刺激を受けました。この授業では、例えば、今すぐに二酸化炭素の排出量を0に出来たとしても、数十年後には気温が飛躍的に上昇し、多くの死亡者が出てしまう、といったことを、実際に科学者が利用しているモデルを利用してしミューレーションします。
・反省点
スタンフォードの外のベンチャーキャピタリスト・アントレプレナー等にもっと会っておけば良かったと思っています。
・教科書
アカウンティングの教科書:昔からスタンフォードで使われている教科書。
データ&デシジョンの教科書:特にコメントはありません。
Micro ECON textbook:名物教授であるKrepsが執筆しています。
5.春学期
・良かった点
毎日シリコンバレーのどこかのベンチャーキャピタリスト・アントレプレナー等に会いました。シリコンバレーに流れる噂やイノベーションに関する情報に触れ、大変刺激を受けました。例えば、EEStorという会社は、キャパシタのエネルギー密度が電圧と共に上昇することに着目し、キャパシタのエネルギー密度を飛躍的に上昇させることに挑戦しており、これに成功すれば世界が根本的に変わると噂が流れています(ただし、上手くいかないだろうという噂も多いようです。例えば、電圧を仮に飛躍的に上昇させられたとしても、世界を変えるのに至る電圧を実現した場合には、余りの高電圧のため、キャパシタを搭載した車のまわりに光り輝くオーラが発生してしまい、危険であると噂が流れています)。
http://en.wikipedia.org/wiki/EEStor
また、クラスメートとベンチャーキャピタルやスタートアップのためにいくつかプロジェクトをしました。例えば、従来のテクノロジーの数倍のパフォーマンスのテクノロジーについて、どのように新しいマーケットを開拓し、プライシングを設定するのか、といった戦略の立案を、マッキンゼーやベインのコンサルタント出身のクラスメートと行いました。テクノロジーそのものが興味深かったほかに、コンサルタント出身の友人の問題解決に対するアプローチを実戦で学べたのは有意義でした。
・反省点
ネットワーキングに重点を置きすぎたせいで、授業の準備がおろそかになってしまいました。振り返ってみると、授業については、以下の点を守ることが学習効果を高めるポイントだと感じるようになりました。
(1)授業中は集中し、必ず1回は毎授業で発言する。
(2)ケースは、ともすると「読む」「理論の当てはめをする」といった風に接しがちになってしまいましたが、どちらかというと「ポイントをとらえて考える(視点を身につける)」「きちんとレコメンデーションを考える」と扱う方が学習効果が高く、無理に理論を当てはめようとすると逆効果であることを学びました。
(3)授業後に出来るだけ教授やクラスメートと議論をする。
・ファイナンスの授業について
今学期に履修したAcceleratedファイナンスのIlya教授が、今年の「最高の授業をした教授」に選ばれました。テクニカルな理論(ブラックショールズ、APV、リアルオプション、VCファイナンス、PEファイナンス、敵対的買収など)も教えましたが、それよりもビジネスの本質をファイナンスの問題に当たってどのように考慮するのか、といった考え方を教えることに重点を置かれていました。最初の授業は、彼が、3年前にある企業の倒産を予言した逸話から始まります。ある企業が2009年3月31日までに倒産すると分析したことや、その分析の手法を教わりました(アメリカ政府の介入という教授の予期しなかった事由で倒産のタイミングは教授の予想よりも若干遅くなりました)。毎回学生をCold Callし、「君の計算のAssumptionは何か。この会社のビジネスとの関係は?」といった質問をあびせます。私にとって最も興味深かった授業は、有名なイリジウムのケースで、イリジウムが失敗した理由を分析し、Target Leverage Ratioが高いケースでも、収益が高まるまではTarget Leverage RatioまでDebtを高めてはいけないこと、Debtの構成を複雑にし過ぎてはいけないことなどを学んだ回で、この回には、授業の終わりに拍手が起こりました(シリコンバレー及びスタンフォードではクリーンテックがホットなのですが、クリーンテックは、Capital Intensiveなビジネスなので、こういった議論は学生にとって大変興味深い内容になります)。
・教科書
Human Resources Management Text Book:Saloner教授のテキスト、オーライリー教授の本と同じく、戦略と人事の有機的結合について学べます。
オペレーションの教科書:分かりやすい本です。
2009年5月30日土曜日
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