『何かが違う』
と」(インテル元CEO、アンディグローブ)
上海空港に降り立った瞬間、むっとした臭気が、あがってきた。
「この臭いは酷いな。1ヶ月が限界だ。」
上海のプライベートエクイティでの1ヶ月のインターン。
電気自動車のビジネスのビジネスディベロップメントが、主な担当だ。
仕事をしてみて、
「何かが違う。」
と感じた。
中国が、クリーン革命に勝って、覇権を取るかもしれないと感じた。
ドイツの10週間のインターンのときには、全くこれを感じなかった。
なぜ、中国では、これを感じたのか。
以下の理由だ。
スタンフォードビジネススクールのミッションは、「10年後、20年後、あるいは数十年後に、世界を変えるリーダーを育てること」だ。
学校では、そのメソッドを徹底的に教え込まれる。といっても、驚く程、シンプルだ。
例えば、以下の点に着目しなさいというようなことを教わる。
- 10倍の技術
- 法制度の大きな変化
- ディストリビューションのイノベーション(デルやアマゾンが例)
さて、クリーンテックの実現には、以下が必要だといわれている。
- 法制度のサポート
- 従来技術より安いコスト
- 投資(アップフロントが高いから)
例えば、中国の電気自動車チェリーを例にとって考えてみる。チェリーの電気自動車は、走行距離や最高速度という点では、世界レベルの電気自動車に引けをとらないと思う。
・法制度という意味では、補助金が電気自動車一台について、最大で150万円程度出る。
・コストという意味では、ローコストの国の中国の電気自動車チェリーは、補助金前で、約160万円。補助金によって、10万円まで価格が下がりうる。繰り返しになるが、チェリーの電気自動車の性能は決して低くないようにみえる。300万円・400万円の電気自動車を買えない消費者も、今までの車よりも良い性能(元値が160万)で、10万円の電気自動車なら買うのではないだろうか。
・投資という意味では、政府が無料で工場を出したりする。
さて、ストラテジック・インフレクションと一口にいっても、何通りかある。例えば、自分が作り出す場合と、他人が作り出す場合と、自分と他人の相互作用が作り出す場合がある。 それぞれの場合に適用した仕組みがないと、覇者になるどころか、敗者となるという。
中国のクリーンテックの場合、自分と他人との相互作用により、ストラテジックインフレクションが起きている(第三のケース)。他のプレーヤー・状況が物凄い速度で動くので、先が読めない。
このようなケースでは、中央が全て決めるのではなく、下層機関に、状況に応じて、なるべく柔軟に対応してもらうのが良しとされる。下層機関のほうが、情報が早く届くからだ。
中国には、そのような仕組みがあるのだ。一見中央集権にみえるが、中央集権が方向を決めた後、カネの配分の権限の大部分は、地方政府に権限がある。
地方政府の市長を説得すると、それだけで、かなりの便益がもらえたりする、というのが私の印象だ。 補助金、無料の工場、税金優遇、などなど。
インターン先の企業は、中国政府から列車の運営の権益を獲得した実績があるなど、中国政府との仕事の仕方を良く知っていた。民間の立場から、中国政府にどのように働きかけ、どのように(賄賂なしで)サポートを実現するのかということを学べ、とても有意義だった。
さて、アンディグローブが、日本に来たとき、日本人がとても礼儀正しくて驚いたというようなことを言っている。
私は、中国で、アンディグローブの日本への印象と同じ印象を持った。
今の中国人(私が会った人達)は、とても礼儀正しいと思う。
例えば、私の個人のパソコンが壊れたときには、同僚が、黙って自分のパソコンを私に使うように薦めた。私が承諾するまで、あとにひかなかった。そして、彼女は、他の同僚と、パソコンを共有して使っていた。
それだけでなく、例えば、電車で、高齢者の方や赤ん坊を抱えている女性がいると、中国人の誰かが、ほぼ確実に、席を譲る。
これは、日本では、見られることが久しくなった風景と考えるのは、私だけではないと思う。